カナリアなりの報告
いつもありがとうございます。
同刻、カナリアはジャッジに報告していた。
「……そんなことがあったのか。というか神崎さんがね……あとでメールで苦情入れとくか」
「えぇぇぇ!? ダメです!!」
ジャッジの言葉にカナリアが焦り始めた。
「あのさ、どうして運営に苦情入れると思ってるわけ? 俺は直接神崎さん個人に物言いたいだけだから」
にっこり笑って言うが、カナリアとしてはかなり怖い。
「で……でもっ」
「だってさ、カナリアに何かあったらどうなるか分からないよ? 神崎さんだってそれを知ってるのに、どうして危険なことをさせるかな」
思わずリリアーヌに無言で助けを求めたが、首を振られた。私では無理、と。
「それに、カナリアが望むなら今からでもプログラム書き換えるけど、どうする?」
「解決したから大丈夫よ。ねぇ、美玖ちゃん」
慌てたようにリリアーヌが入ってくる。無理と知りながら入ってきたことにカナリアは驚いた。
「えっと。……一応オークゴブリンのクエストは今まで同様討伐ですが、内容が二つに切り替わるそうです」
一つは、今までと同じく討伐して終わり。もう一つは解体をして皮と肉を納品するもの。どちらにしても内臓系はプレイヤーのもとに残る仕組みだ。
「なるほど。神崎さんも考えたな。それだと皮は向こうに渡って鞄が増えるわけか」
「みたいです。なので、初心者の方でも高性能のバッグが手に入るみたいで」
現在はある一定のLVにならないと拡張機能が使えなかったが、最初から使えるというわけか。ただし、拡張するためには金を稼いで倉庫を持つ必要があるというのは変わらないが。
「……もしかすると、これからゲーム始めるプレイヤーには仮倉庫が与えられるかもな」
そうすることにより、ベテランプレイヤーと新規プレイヤーの差を少なくするつもりではないかと。
「LVとか、プレイ総時間とかで割り振りしそうな人だよね」
すぐさまリリアーヌが同意してきた。
そんなものかとカナリアは思う。
そんな話をしていたら、ジャッジのスマホが鳴り響いた。
「……リリアーヌ」
「ほい。なんざんしょ」
「お前とイッセンのLVはいくつだ?」
スマホをいじりながらそんなことを訊ねてきた。
「一応、LV四十八になりましたけど。いっくんは五十」
「ギリギリか。……カナリアには勧めなかった低LV向けのクエストがあるんだが、どうする?」
「どんなクエスト?」
「『桃源郷を捜せ』だな。一応、マリル諸島でやるクエストなんだが、低LVにしちゃ結構きついやつなんだ。LVは五十までな上に、季節も限定されている。それに加えておそらく限定クエスト付だ」
「あたしといっくんは、運搬係ですか?」
「この住処を拠点にするなら、そうなる可能性はあるだろうな。それ以上にどっちかが指揮を執る可能性もあるんだ」
リリアーヌとジャッジはクエストについて語り始めた。
こうなるとカナリアは話についていけないので、あっさりとお茶の用意を始める。
「まぁ、ぶっちゃけお前ら以外はLV二十くらいだと思っておけばいい」
「ラジャ。あたしもいっくんも指揮できるか分かんないけど、やってみる。限定クエストクリアできればおいしいのは分かったから」
「そう言ってもらえると助かるよ」
限定にいければラッキーとばかりに言うリリアーヌが、羨ましかった。
結局、イッセンとリリアーヌもこの一軒家に住み着くことになる。
ジャッジ「つか、お前らに住まれるとカナリアといちゃつけねぇ。さっさと住処探せ」
リリアーヌ「ヤダ。美玖ちゃんはあたしたちが守るのーー。ね? いっくん」
イッセン「だよなーーー。りりとは二人きりにいつでもなれるからさ、こういう時こそ美玖を可愛がらないとw」
ジャッジ「お前らな……」
二人「いいじゃーーん。同じ屋根の下にいるくせに」
ジャッジ「あっちじゃいちゃつけねぇんだよ!!」
二人「知ってる(きっぱり)」
という会話があったとかなかったとかww




