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初心者がVRMMOをやります(仮)  作者: 神無 乃愛
イベントとクエストの楽しみ

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三人組の限定クエスト 3

いつもありがとうございます。本日分も何とか更新できました。


「りりっ!!」

「りりちゃん!!」

 声のした方にあわてて走って行く。

「いっくん! 美玖ちゃん!!」

 ……が、少しばかり脱力してしまった。何故にリリアーヌが小人に拝まれているというのか。

「りり……」

「全部言わないで。あたしだって頭にきてるんだから」

「違うくて。何で拝まれてる?」

「あたしがご飯と福を持ってくるからだって」

「は?」

「ようこそいらっしゃいました。地上の方々よ!! 我らはずっと待っておりました」

 小人の長らしき人物がイッセンとカナリアにも頭を下げた。


「意味、分かんない」

「いいえっ。お分かりになるはずです!! 我らの住まいは元々あの(、、)忌まわしきオークゴブリンに奪われ、地下へと逃げてきました。それゆえ、食事に困ることになってしまったのです」

 だからね、そこだけ何度も言われたって分かんないっての。イッセンは突っ込みを入れたくなったが、こいつらはNPC。一人ずつ聞いていくしかないと思ったのだ。

「あの……」

「なんでしょうか!!」

「どうして、あの住まいが奪われたんですか?」

 カナリアはNPCということを気にすることなく、訊ねていた。

「あの地が豊かな土地だからです」

「移住は不可だったんですか?」

「我らのように小さきものには堪えます。ここに来るまででも一年ほど時間がかかるのです。その間にも我らの一族は半数以下に数が減りました」

「……そうでしたか、失礼しました」

「いいえ。そして、ここでも残った半数以下が飢えや病気で死んでしまい、現在ではたったこれだけの人数となりました」

 ……これだけって、かなりいるよね? どう見ても数百人単位じゃない。そりゃ、元々数千人とか数万人いたら、飢えで苦しむだろう。

「……いっくん、どうしよう?」

「美玖、どうしようじゃないよ。俺らじゃ救えない」

 ご飯を一時的に与えたとしても、その場限りの救援でしかない。ゲームの特性上、オークゴブリンがいなくなるというのはあり得ない。

「別の静かな土地に移住させることって可能かなぁ」

「ゲーム的理論でいけば可能だと思うよ。それこそ騎乗モンスター使って、移せばいい。ただ、現実的なことも加味されてるVRだとかなり難しい」

「どういうこと?」

「美玖は、この大陸から動いたことってある?」

「うん。素材集めに色んなところに行くよ」

「気候、全然違うでしょ。VRMMOだと最悪、土地特有の病気があったりする。この小人さんたちも特有の病原菌を持っている可能性があって、それが別の土地に蔓延すると土地の食物が全部駄目になることもある。それに、もう一つ、彼らも別の土地特有の病気で死にやすくなり、逆に絶滅することもある」

「……そんな」

「これが、VRの厄介なところ。ここと同じような場所で、同じような気候、それだけでも探すのは難しい上に、そのあたりも加味すると移住可能な土地を探すということは天文学的数字になる」

 オークゴブリンは時間が経てば再度湧くモンスターだ。

「オークゴブリンも一体だけなら、我らの力を合わせれば何とか一体くらいは倒せます。それを運び、我らが生き延びるための道具を作ったりしております。皆様の持っている鞄がいい例です」

「……は?」

 イッセンとリリアーヌの声がはもった。

「はい。その鞄は我らが納品しているものです。オークゴブリン一体で十個ほど作れますが、それだけでは我らは賄いきれないのです」

「納品先は?」

「この先にあるギルドカウンターです」

「こんなところにギルドカウンターってあるの!?」

「ございます」

 イッセンが驚いて声をあげるものの、小人は当たり前のように言う。

「じゃあ、私が小人さんたちにオークゴブリンの皮なめしを依頼するとどうなりますか?」

「我らが倒せればそれをなめしますが、基本的にはギルドカウンターからの依頼ですら滞っておりますので、難しいのです」

「じゃあさ、俺らがオークゴブリンを倒して持ってきたら?」

「誠心誠意なめさせていただきます!!」

 カナリアの言葉をつないでイッセンが問えば、胸を張って小人が答える。

 ……が。言っていることがかなり怪しいと思ったのは悪くないはずだ。


 ちなみに肉は食べているらしい。この地下に生える植物がオークゴブリンの肉にある臭みを消してくれるらしい。

「決まりじゃん」

 あっさりとリリアーヌが言う。

「美玖ちゃん、ジャッジさんやジャスティスさんに言ってオークゴブリンを適度に討伐してもらおうよ。で、皮をなめしてもらう。その報酬で野菜とかあげればいいじゃん」

 その言葉に小人たちの目がキラキラしていた。

「伝承どおりです!! この穴に落ちた方は福をもたらしてくれます! 我らが何十人か束となって一体しか倒せないあれを、我らにくださるとは!!」

「ついでに、加工したお肉もいただけますか? 余ったので大丈夫ですから。それから臓物関係はどうしているのですか?」

「臓物だけはどうやっても食べれないので廃棄しております。これもギルドカウンターに依頼して廃棄しておりますので……」

「そうですか。分かりました。まずはギルドカウンターに案内してもらっていいですか?」

 何事もなかったかのようにカナリアが言う。余った肉をもらって何をするのだと問い詰めたい気がした。


 地下にあるというギルドカウンターは、小さかった。

 本当に、色んな意味で。


 何故、スタッフも小人なのか。同じ一族の者ではないというあたりに、作為的なものを感じてしまう。

「……ふむふむ。オークゴブリンの臓物は外では薬として扱われているのですか。なるほど。……ただ、このギルドカウンターは他のカウンターと別経営でして討伐依頼なども出せないのですよ」

「どういうことですか?」

「言ってしまえば、このカウンターはあなた方の使う『鞄』のためだけに存在しているのです。鞄が間に合わない場合は、粗悪品もしくは辞められた方の置き土産を先に使っていてもらい、あとで我らが交換するシステムです。現在はそれでも追いつかないくらいなのですよ」

 なんだか腹の立つ仕様である。

「それって変えれないんですか?」

 カナリアが不思議そうに訊ねていた。


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