オークゴブリン戦
オークゴブリンという種族は特殊である。
何せ、通常では一緒にならないはずの魔物、オークとゴブリンからの派生。強弱や能力値などはどちらから派生したかによって変わってくる。
「……へぇ」
一応、空中の旅がてらジャッジが説明するものの、カナリアはどこ吹く風でグリフォンを撫でている。
「これ覚えておかないと後が大変だぞ」
「それって素材になるんですか?」
「……中級クラスの武器防具の素材にはなるらしい」
気にするのはそこか!? そう言いたくなるのをジャッジは堪えるが、周囲は笑っている。
「カナリアらしいよな」
ジャスティスやディスカスが口をを揃えて言う。
「キュッキュキュ!」
いつの間にか参加しているメルまでもが、同意すると言わんばかりに会話に入ってくる。
「……見たあと後悔すんなよ」
今までファンタジーらしきものしか見ていないカナリアに、アレはかなりきつかろう。
「いやぁぁぁぁ!!」
やはりというべきか、まったくもって戦力にならなかった。
「見たあと後悔すんなって言っただろ」
変にオークとゴブリンが混ざっているため、ただでさえシュールな魔物が、酷くなっているのだ。
そんなカナリアを無視して、他のメンバーはあっさりと殲滅していく。
久方ぶりに火力重視のパーティにいる。
少し前にディスカスがトール用に悪ふざけで作った、「ランチャー」が役に立っているというのも、別の意味でシュールである。
しかも、それを抱えてぶっ放しているのは、ジャッジ、ユウ、タカの三人。
「無限に砲弾が充填されるように作ってくれればいいのに」
「阿呆。そこまで現実無視したのは作れねぇ」
ユウのすっとぼけに、ディスカスが呆れて突っ込みをいれていた。
「お。解体でオークゴブの胆肝と心臓ゲット」
「レットにやれ。喜ぶぞ」
「肉がオークゴブだった」
「セバスへの土産だな」
カナリア以外が和気藹々と物を分配して行く。その間、カナリアはその辺りを採取して回っていた。
「……カナリアも強かだな」
ジャスティスがぼそりと呟く。あれほどオークゴブリンを怖がっていたかと思えば、いつの間にか採取に回っているのだ。
「現実逃避だろ」
ユウが苦笑しながら見ていた。
――これよりレイド戦へ突入します――
唐突にタブレットから流れたアナウンスに全員が強張る。
「予想より早いな」
「いつもより早めに倒したから?」
「いんや。最短スコアは十秒だぞ。それでもレイドになるんだ」
「丸一日かけてやったパーティもいたけど、どうやってもレイド戦行きのクエストだもんな」
カナリア以外が各々話し出す。
ジャッジは少し離れたところにいたカナリアを抱え上げ、連れてきていた。




