喫茶店の風景
いつもありがとうございます。
本日はセバスチャン視点で話が進みます。
本日、「安楽椅子」のスタッフはセバスチャンとリース、それからNPCのみである。
「あれ? 君の主のウサミミ嬢は?」
何度これを聞かれたのか。セバスチャンは数えるのも嫌になった。
「ミ・レディはレイド戦に赴いております」
その言葉に、何人固まっただろうか。
「レイドってぇと……」
「俗にいうミニレイドでございます」
「TabTapS!」内におけるレイド戦はかなり事細かに分かれている。
通常、一PTは最大六人までが限界だ。
その際、基本的にAIは数に入れない。
そして、PTが二つ以上含まれるものが、全てレイドと称される。
PT数が二つないし三つのものをミニレイドと呼び、ベテランプレイヤーなどは一PTでも倒せる内容のものもある。
一部「初心者救済制度」と揶揄されるものがあるくらい楽なものもある。
次が六PTまでをライトレイド、十二PTまでをハーフレイド、二十四PTがフルレイドとなる。
そのあとからは二十四を一単位として四十八PTをペアレイド、七十二PTをトリプルレイド、九十六PTをマキシムレイドと呼ぶ。
フルレイド以降は砦陥落イベントや大規模なクエストにかかわるものも増えてくるのが、実情だ。
本日受けるレイドはギルド内でLV差がありすぎるため、そこまで難しいものにするつもりはないと、ディッチから聞いてはいる。
レイド戦は兎レイド以降は受注していない。そろそろ受けておいたほうがカナリアにとってもいい、という考えだ。
唐突に始まる緊急クエストのほとんどがレイド戦ということもある。
その際、せめてギルド内の長短所を身につけておくべきだ、というのが根本にあるらしい。
セバスチャンの主は「ギルドメンバー全員でクエストに行けます」と嬉しそうにはしゃいでいた。それをみたセバスチャンとジャッジはなんとも言えないほどに不安になった。
それにしても時がたつのは早い。
間もなく現実世界で四月、つまりはカナリアと出会ってから一年になろうとしていた。




