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初心者がVRMMOをやります(仮)  作者: 神無 乃愛
イベントとクエストの楽しみ

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思い出の店

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

 カナリアは「TabTapS!」に繋ぐなり、己のタブレットで残高を確認していた。

「……むぅ」

「ミ・レディ。いかがなさいました?」

「えっとですね」

 声をかけてきたセバスチャンに、事情を説明する。

「TabTapS!」で喫茶店を作りたいと。名前は「安楽椅子」にすると。

「だいぶ構想が出来ているようですが、初心者の町でよろしいのですか?」

「あそこが、いいんです。私にとって一番思い入れのある町ですし」

 あの店も思い入れという観点ではかなり大きいのだ。

「左様ですか。たくさんのお気に入りを詰め込んだ喫茶店、ということですか」

 事情を説明すれば、セバスチャンはあっさりと納得していた。

「それに、ニーニャたちとも触れ合えるお店にしたいんです」

 そのためにはテラス席が必要となるだろう。


 セバスチャンに任せているため、料理スキルはそこまで上がっていない。喫茶店で出す料理はセバスチャンにお願いすると決めている。

「かしこまりました。他にもNPCを数人雇い入れたほうがよろしいかと」

「私もそのつもりです」

「ジャッジ様にこのお話は?」

「まだ、です」

「左様ですか。お話をされて、リース嬢を店に出すのも一つの手段かと」

「それはしません。リースさんはあくまでジャッジさんのパートナーです。私がお願いしてウェイターをしてもらうのは違うと思うので」

 その言葉にセバスチャンが頷く。


 その話を見事にスカーレットに聞かれており、制服やら小物やら、調理用具があっさりと用意された。

「神社仏閣を愛する会」に頼み、畳を作ってもらう。冬になったらコタツにするというのもあるが、抹茶に似たものを現在作っているのだ。ここで飲めたら最高だと思ったのだ。


 お茶を点てる面子に、あっさりとママンとユーリが入ってきたのはご愛嬌だろう。二人の時間が空くときに、目の前で点てるという手法が取られることになり、一階の一部は茶室へと様変わりした。

「……進むの、早いです」

 なんだか、発案しただけのようにも感じてしまう。

「違いますよ。さすがカナリアちゃんと思っただけです」

 そう言ったのはママンだ。


 カナリアはただ、祖父との約束を叶えたかっただけだ。

 まだ小さい頃、祖父は「じいちゃんとばあちゃんが作った喫茶店がある」と教えてくれた。その時カナリアは「じゃあ、その店で働きたい」と言ったのだ。その言葉に祖父母が笑い、「約束だ」と言ってくれたのだ。

 その店がどこにあるのか分からず、いつの間にかその記憶を忘れ去っていた。


 ゲームの中で構えるあの店こそが、祖父の言っていた喫茶店なのだと分かった今、カナリアは「TabTapS!」の中に同じように店を構えようと思ったのだ。


 ただ、そんな個人的な理由だ。



 その事情はジャッジを通じて「カエルム」メンバーに実は知らされている。だからこそ「尚更」カナリアらしいとなっていることに、気付いていない。



 店の話はあっという間に、ギルドカウンターを通じて「TabTapS!」内に広まることになる。


 そして、その店に協力しようとする職人プレイヤーたちでカウンターがごった返しになる羽目になっていた。


カナリアが「World On Line」に繋いだのは、これが理由です。

祖父母っ子のカナリアは、思い出したとたんこの店を「TabTapS!」内に作ることを決意。名前のこともあり、許可を取りに行きました。勿論親族は大賛成。いつか、「World On Line」と「TabTapS!」双方で、一緒に店に立つことをイッセンとリリアーヌは決意しましたとさ。

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