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初心者がVRMMOをやります(仮)  作者: 神無 乃愛
ジャッジの闇

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225/434

現実世界にて<とある企業に勤める男>

いつもお読みいただきありがとうございます。

遅くなりました。


 ワイドショーやニュース番組をにぎわせるのは、これで二度目だと織田は思った。


 一度目は会社(こちら)に非がない、それどころか被害者的な言い方をしてくれていたはずのテレビ局までもが、鬼の首を取ったかのように悪質であると責め立てていた。

「何でっ……」

 織田が入社したのは二年前。既に「TabTapS!」を世に送り出したあとである。それよりも少し前に入社した神崎はのほほんとしていた。

「どうしたら……」

 皆が不安を口に出す。

「どうしようもない。今回責められている理由がきちんと分かる人物は何人いるかな?」

 神崎の言葉に、誰一人答えられない。

「起こりうるべくして、起きたことだ。まず間違いなく、下っ端に責任押し付けられるだろうね」

「ちょっ……」

「ま、一部だけどね。ギルドカウンターに関与している半数以上の首が飛ぶかな? 三分の一は転職するだろうね」

 全てを知り尽くしたかのように神崎が言う。

「この中にもいるんだろう? プレイヤー名『トール』に情報を与え、他プレイヤーの妨害行為をしていた輩が」

 織田は意味が分からなかった。

「……トールって……」

 織田も聞き覚えがあった。友人にこのゲームを勧めた際、「トールという名前のプレイヤーがいる限りやらない」と言っていた。

 勿論、その時は「知らない」と答えたが。

「それから、この中に何人いるのかな? 終わっていないはずの『限定クエスト』。何故終了になっているのかきちんと知っている者は」

 その問いに誰一人答えない。否、答える術がないのだ。


 織田も調べようとした。だが、上層部の圧力ですぐに断念したのだ。

()が知ったら怒るよ。約束を違えたわけだし。……大人しくクラッキングさせとけばよかったかな」

 最後はぼそりと呟いていたが、織田を震え上がらせるには十分すぎた。

「神崎さん!!」

「彼のプログラミング能力は、ここいらにいる人物が束になっても敵わないよ。……それすら知らないの?」

 神崎が証明として出すのは、あの少女を起こすために作ったプログラムだろう。T.S.カンパニー内では、「誰かに作らせただけでは?」という意見が主流である。

「そんなに疑うなら、本当に緊急メンテナンスということにして、彼にクラッキングさせる? 最悪影も形もなくなるけど」

 さらりと怖いことをのたまっていた。



 結局、保のプログラミング能力がどれ位のものなのか知るべきだと、危機感のないどこかの馬鹿が言っていた。



 それから暫くして、T.S.カンパニーは数多の不祥事と多額の負債を抱えて倒産することになる。


 この話題がTVで取り上げられるようになって、一ヶ月くらいの出来事である。

 倒産する一週間前に、どういう経緯か「TabTapS!」と「FieldsActionフィールズアクション」の二つのオンラインゲームのみが他社へと権利が移っていた。



 そして、神崎やその近くにいた数名がいつの間にか退職していた。


 織田たちは完全に取り残されたのだ。




 この指揮を執っていたとある女性は「思ったよりも時間がかかってしまったの」とだけ呟いたとか、そんな噂が別の場所で流れていた。

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