ジャッジとカナリア
アクティブスキルがキャンセルになったと分かるなり、ジャッジはギルド拠点から飛び出した。
名前の時に気がついていたが、やはりクィーンはクリスのことを知っていたのだと。知っていたからこそ、ジャッジをそばに置いているのだと。
「ジャッジさんっ」
慌てたようにカナリアが追いかけてきた。
「おばばさんは言葉が少なすぎです! おそらくですけどジャッジさんとあの人の関係に気付いたのって、ジャッジさんのプログラムとかを見たあとだと思います!」
「……だろうな」
いや、その前でもおかしくない。そう言ってしまえば、カナリアはまた何か言い募るだろう。そう思ってジャッジはあえて軽く肯定だけした。
「……ジャッジさん。私にまで偽らなくていいです」
「!?」
「ジャッジさんがギルドから抜けても、このゲームを辞めても、私は止めません」
「カナリア?」
「ただ、一緒にいてください」
泣きそうな顔でカナリアが言う。
ジャッジとて、カナリアのそばにいたいと思うが、クリスに近づけたくないというのが本音である。
もし、これが原因でカナリアとクリスが近づくならば、ジャッジはそれを阻止するためにカナリアのそばを離れるだろう。
「私はっ! ジャッジさんも、おばばさんも大事な人です!! 二人揃って言葉が少なすぎです! それで相手から離れて自分が傷ついてどうするんですかっ!」
ぽかぽかとカナリアがジャッジの胸を叩く。
「ジャッジさんだって、いつもみたいにおばばさんに言えばいいんですっ! どうしてこんな時ばっかり遠慮するんですかっ! いつからあの人とジャッジさんの関係を知ってたんだって。あの人との繋がりはどんなものなのかって。
おばばさんも、遠慮なく言えばいいんですっ」
「……カナリア……」
「二人とも、私に『言わなきゃ分からない』って言う割りに、自分が言わないんですよ」
だからこうなるのだと、カナリアは言い募ってくる。
いつの間にか、カナリアは強くなっていた。
「あのな、あの砂○け婆様をそんな風に思っているのはお前だけ、……てか他の人だと、あの人が隠してるのは当たり前だと思ってるぞ」
大半の連中は。カナリアにとって言わないということでは同じらしい。
まだ自己評価の低いカナリアだが、クィーンとジャッジにはだいぶ遠慮というものをしなくなった。
「……ジャッジさん」
「どうした?」
「私じゃ頼りないのは分かります。だけど心配と『おかえりなさい』は言わせてください」
カナリアから出た言葉は、ある意味殺し文句だった。
砂吐きそうになりました。
げふ




