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初心者がVRMMOをやります(仮)  作者: 神無 乃愛
ジャッジのいないクエスト

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204/434

洞窟へ

いつもお読みいただきありがとうございます。

ご指摘・ご意見と共に感想や評価など全て励みになります。


13話と203話に話を付け足しています。


もしよければそちらも見ていただければと思います。


「ほほう。私を眠らせたのは貴様らか」

 人竜族の男が怒りをあらわに近づいてきた。

「背の君よ。捕らえられた同属と殺められた同属は?」

「我らの子が連れて行かせた卵一つ。他の子竜はもとより、我らは怪我くらいで済んでいる」

「まことか?」

「かような嘘をついてどうする?」

 どうやらこのクエスト、いくつかの条件があり、一つは無闇矢鱈に竜を倒さないことがあるらしい。ディッチは思わずため息をついた。

「そなたも無事でよかった」

()を追いかけているときに怪我を負ったくらいじゃ」

「他の者も目晦ましをくらったのがほとんどだ。私があの崖についたときも、倒すことを考えていなかったな」

 いや、カナリアがいなかったら間違いなく倒してからやっていた。それを口に出すのは如何かと思い、黙っていることにした。

「ここに来た一人は娘香の巫女であったがゆえ、仕方あるまい」

 その言葉に全員が凍りつき、アルテミスに視線を投げかけた。

「それが娘香の巫女の眷属か。……脱皮もしておらぬ白兎か」

「キュッ」

「……まぁ、手順を踏んでいるがゆえ拒めぬな。こやつら以外は、迷いの森に行っただろうな」

「迷いの森はこの近くでしたっけ?」

 ディスカスが不思議そうに訊ねた。サイレン諸島を根城にしているディスカスですら知らない事実らしい。

「迷いの森はどこにでもある。というよりも、限定クエストを邪魔しようとする者が我らによって導く場合もあるからな。我らの作り手がそのように手配した」

 手配って……。そう思ってしまったディッチは悪くないはずだ。

「前回は迷いの森に行ってな……」

「ジャス、ちょっと待て」

 不穏なことを呟いたジャスティスをディッチが止めた。

「お前らは一体何をしたんだ!? カナリア君を連れ戻したのはいいが、それに至る順序はどうなっていたんだ!?」

「キュキューーッ!!」

 ジャスティスを問いただすディッチに、ドラゴンが抗議してきた。

「逆に今まで聞かれなかったことの方が俺としちゃ、驚きですが」

 ジャスティスの一言で、ディッチはおおよそ理解した。かなり危ない橋を渡っていたという事実に。

 脱力したディッチは地面に手をついた。

「……頼む、お前ら。そろそろ落ち着いてくんねぇ?」

「それはジャッジに言ってください。俺は止めようとしたんです」

「……そうかい」

「ディッチさん。仮に私たちがその場にいても止められませんわ。それこそギルドメンバー総出でかからないと」

 ユーリは慰めるために言ったのだろうが、ディッチから見れば慰めどころか変な疲ればかりが残る。こうなったらログアウトしたらユーリをたっぷりと愛でてやる! そう考え直して、人竜族の二人へ視線を移した。

『お名前、お聞きしてもよろしいですか?』

 唐突にカナリアが割って入る。

「ほほう。娘香の巫女は面白いな。我らに名を聞くとは」

「我らの名前は教えられぬ。言霊が宿るからの」

 人竜族の男女が気にすることなく、答えてくる。イベントがらみのNPCは己から名前を名乗ってくるという、ゲーム内ルールから見ればかなり外れた会話でもある。

『そうですか……。コドラちゃんに勝手に名前……』

「カナリア君、それを正式な名前にしない! んでもってこの子は親元に返すの! 了解?」

 ディッチの言葉にアルテミスの耳がしょんぼりと垂れる。ユーリはそんなアルテミスを心ゆくまで愛でていた。

「……そなたらは随分と変わったプレイヤーだな」

「俺まで一緒にしないでください」

 男の言葉にディスカスがあっさりと返す。それにはカナリア以外がすぐさま頷き、同意していた。

「まぁ、我らの子が飯までもらって、何も返さぬというのは人竜族の誇りが傷つく。竜神のところまで案内しよう。

 ただし、その間におかしなことをした場合はそなたらを一瞬で灰塵と化す」

「……それくらいでいいよ」

 もう、さっさと進めたい。そんなことをディッチは思った。


 人竜族の二人があっという間に竜身へと姿を変える。

 雄竜にはディッチとユーリ、そしてアルテミスとシンクロしたカナリア。雌竜にはジャスティスとディスカス、そして子供の竜。


 風を切る音と、落下するような感覚。


 あっという間にジャスティスたちが見つけた洞窟へとたどり着いた。


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