クエストの行方
「島に伝わる伝承……ですか」
名月イベントが行われる島の長老に話を聞きに出かけている。
「はい。この島の西にあるのは海ですよね?」
その言葉に長老はにこりと笑った。
「そう言われています。その海を越えることが出来れば、鉄でできた島にたどり着くと言われております。また、その海のどこかに、小さな「月の島」と呼ばれる伝説の島があるとも言われております。
一角兎様は鉄でできた島か「月の島」と呼ばれる、どちらかから来ると言われております」
そればかりは島によっても違うらしい。
その間にも、スカーレットはトトたちと連絡を取って、セイレン諸島の伝承を調べてもらっている。
勿論、カナリアの携帯に電話を入れても「圏外」としか出てこない。
しかし、カナリアの現在の状況を表す文字は「ログイン」である。つまりログアウトしていないのだ。
そもそも、「圏外」という表示自体がおかしいのだ。
通常、ログアウトしていれば電話は出来ない状況となる。ログインしていればこの世界のどことでも繋がるはずなのだ。
繋がらないのは海にいるからか、それとも地図にすら載っていないどこかの島にいるからか、それすらも誰一人分からないのだ。
「『TabTapS!』、初期の頃からやってるやつはいるか?」
ディスカスが「神社仏閣を愛する会」や「深窓の宴」で協力してくれたメンバーに聞く。
だが、誰一人いない。
正直な話、ディッチもあとからの参戦組だ。誘ってくれたのはジャッジとジャスティスの二人。どっちが先かまではディッチも知らない。
「俺はジャッジに誘われたな。レットは?」
「あたし? あたしは兄貴。だって、あの二人と直接会うなんてほとんどないよ」
それを聞いたディッチは二人に電話をする。……が、二人ともとある人物に誘われてやったらしい。そして、その人物は今、ゲームから完全に引退している。
「がぁぁぁぁ!!」
思わずうなってしまったディッチを誰一人、咎める者はいなかった。
この電話を受けた、ジャッジとジャスティスは一つの事柄を思い出していた。
発売された当初、「TabTapS!」には、たった一人しかクリアできないクエストがあったことを。そして、表向きは全てクリアされていることになっていることも。




