第90話〜踊れるように〜
それでは〜どうぞ!
「まずは右足を…そうです。次にこうして…」
なるほど。右足を出して……
「もう少し抑えて、手の方も行き過ぎです」
おっと、やり過ぎたか。もう少し控えめに……
「いい感じです。次は左足を動かして…」
左足を動かして……これもあまり動きすぎないように。簡単かと思ったがそうでも無いな。
言われた通りに動いたのを記憶して、曲に沿って踊らなきゃ行けない。動き自体はそこまで難しくないから慣れれば簡単なんだろうけど…
「後は、相手に配慮して踊るのも大事です。相手に合わせる、という方がいいでしょうか?」
確かに…。自分1人じゃなくて相手と踊るわけだもんな。
「まぁ、その辺は慣れれば優成くんならすぐに出来るでしょう。何回もやって慣れるのが大事かな」
「まずは慣れると…了解です」
では次ですね、という言葉で再開する。その後もゆっくり教えて貰って、1時間程経過した所で全部の踊りをある程度マスターする事が出来た。
「いい感じですね。では1回、曲を流してみましょうか。」
本番形式での踊りだ。…言われた事を思い出して、相手に合わせながら……
「そうそう、いい感じです。後はもっと楽しんで」
楽しんで、かぁ……今は残念ながらそこまでの余裕はない……おっと、集中集中。
「いい感じでしたね。途中の私の動きにもしっかり対応しましたし。」
後は楽しむだけですね〜と言う綾香さん。途中動きがちょっと強引な感じになったけど、やっぱりテストだったのね…。
ただ何回かやってみてある程度は慣れたから、もう少しやれば楽しめそうではある。
「うんうん。流石に覚えるのが早い。やっぱり筋はいい感じかな。」
褒めて貰えた。良かった。……でも2分前後の曲を覚えるのに1時間もかかるとは思わなかったな。
「何となく覚える程度ならすぐ出来るけど、ちゃんと覚えようと思ったら時間はかかるのよ。」
優成くんはもう誰と踊っても完璧だと思うわ、後は…余裕を持つこと!と言ってくれる綾香さん。
余裕かぁ……確かに余裕を持ってやった方が何かあっても対応できるし、落ち着いてやるべきだな。
「ひとまずお疲れ様でした。まずは着替えましょう。その後はご飯ですね。」
「あ、そうだった。服、ありがとうございます。」
言うのを忘れる所だった。危ない危ない。
「どういたしまして。」
その後、執事さんに案内されて服を着替える。ご飯らしいけど……何を食べるんだろうな。適度に体を動かしてお腹は減った。
「こちら、飲み物でございます。」
「すみません、ありがとうございます。」
確かに喉乾いてたんだよな。この執事さんの気遣いがすごい。
…ふぅ、生き返る。
「あれぐらいで死んでたらダメですよ」
いつの間に居たんですかね。入ってきたのわからなかった。海莉といい綾香さんといい、気配を消すのが上手い……
「普通に入ってきたので、優成くんが鈍感なだけではないかな」
「そんなに鈍感なのかな…」
そんなに鈍いのかな?と思ったのだが…
「鈍感でしょうね」
「鈍感ですな」
即答された。どうやら鈍感らしい。執事さんにも言われたんだけど!?
「もっとしっかり見てあげなきゃだめよ?」
海莉の話か?……もうちょっと気を付けるようにしよう。
「よろしい。ではご飯を食べに行きましょうか、お腹空いてるでしょうし」
「そうですね、そうして貰えるととても助かります…」
お腹減ったからね。決して鈍感って言われる事に耐えられないわけじゃないよ?うん。
「はいはい。ここからだと近いから、行きましょう。」
近い所で探してくれたのかな?…何から何まで有難い。
それではまた次のお話で会いましょ〜




