第73話〜父親?〜
それではどうぞ!
「えっと……ここ?」
「そう、ここ。」
…あのー、ここ凄く高そうなんですけど大丈夫ですかね。
「気のせいです、良心的な値段ですよ。さ、行きましょう。いつまでもここにいては迷惑なだけです。」
それはそうですけどね……まぁ、良心的な値段なら気にすることもないかと思い店に入る。
「なんでもどうぞ。この間のお礼という意味もありますから」
奢りますよ、と言ってくれている宮島さん。うーん、奢られてもいいのかと悩む。しかし好意を素直に受け取るべきかなと思い店のメニューを見る。
「…………やっぱりな。」
「?何かありましたか?」
「いえなんでもないです。」
ただちょっとやっぱりこの人達の金銭感覚はおかしいと思っただけです。普通に高いよここ。
「アイスコーヒーとハムサンドで…」
「あら、それだけでいいのですか?」
遠慮しなくてもいいのですよ?と伝えてくるがこれだけで充分だ。
「では私も同じものをいただきましょう。」
そう言って手早くオーダーを済ませた宮島さん。
待ち時間、何話そう…と考えた矢先に宮島さんが口を開いた。
「失礼なのは承知で訪ねますが……あなたは自分の父親が誰か、知っていますか?」
「いえ、知りません。顔も名前も何もかも。養育費が払われていたっぽいというのは聞いたことのある話ですけど…会いに来たり手紙を送ってくれたりしたことは1度もないですし」
自分は何も知らないと答える。事実知らないし。
「ではもしも…父親があなたに会いたいと言ってきたり、接触してきたらどうしますか?」
「断るでしょうね。俺にとって父親も母親も対して差はない。血の繋がった、親だったらしい何者かに過ぎませんし。そもそも何故今になって会いたいというのか。何か裏があり俺を利用したいだけかもしれませんからね。」
金がないからくれ、俺はお前の父親だ!的な。母親はクズだし父親もクズ。それが俺の認識だ。
「そうですか…。変な事を聞いてすみません。」
「別にこれぐらいならなんとも思わないですよ。」
なんでこんなことを聞くんだろう?ぐらいの疑問はもつけど別にその疑問も対して大事なことじゃないしね。
「ところで話は変わりますが、佐久間さんは何かやりたいことは無いのですか?」
V以外に…例えば進学とか、と聞いてくる宮島さん。
「V以外か……考えたことも無かったですね。進学していい会社に働くのも、卒業して働くのも。」
生きていくのに充分なお金は稼げるようになったから尚更だな。
「そうですか…もし何か興味があるなら、家に関連する所を紹介しようかと思っていたのですけど」
「いやいや、流石にそこまでしてもらうのは申し訳ないというか…」
そこまでして貰えるのは嬉しいことではあるんだけどな。
「今のうちにあなたがほかのところに行かないようにしているだけですので心配しなくてもいいのですよ?」
怖い。他のところに行くも何もそんな所ないし…。そもそも今の俺じゃそこまでする価値はないだろう。
と思った時、ギリギリ聞こえるぐらいの音量で未来のあなたはわかりませんけどね、と呟かれたことを聞いた。その言葉に何となく嫌な予感を覚える。
「もし何かやりたいことが見つかったら教えてくださいね?」
「分かりました、その時はよろしくお願いします。…それから、無理に敬語じゃなくていいんですよ?」
前から思ってたのだが、別に俺相手に敬語じゃなくていいと思う。俺は年上だし敬語を使うが。
「じゃあ、あなたが綾香ちゃんと呼んでくれたら敬語はやめます。」
「えぇ……せめて綾香さんにしてください……」
仕方ないからそれで許してあげると言って貰えたので、以後そう呼ぶようにする。
その後も色んな話をして、気付けば14時になっていた。
それではまた次のお話であいましょう〜
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