第374話〜花火大会〜
それではどうぞ
遅くなってごめんねー!
足の状態に気を付けながらおすすめの場所まで来た俺と海莉。
もっと人が多いかと思えば案外そうでもなく俺達の他には数人しかいない。知る人ぞ知るスポットって感じなのかな?
「よく知ってるね〜こんなとこ」
「よく来てたから一通り知ってるとか何とか」
他にも綺麗に見えるスポットはいくつかあるらしいが、1番人が集まらないのがここらしい。
あんまり人が居ない方が気兼ねなく見れるだろうとの事だ。配慮に感謝。
「あ、始まった!」
到着して直ぐに花火が上がり始めた。タイミングがいいね。時間ちょうど良かったんだな。
色とりどりの花火が空に打ち上がって消えていく。VRで見てた時とは音が違うのもあって迫力や綺麗さはこっちが上だ。
あれもあれで綺麗だったんだけどね。ここからだと建物とかに一切邪魔されないし今日は風があるからか煙が流れていくしでめっちゃ綺麗に見えるんだよな。
「綺麗……凄い」
そう言いながら動画を撮り始める海莉。確かにこれは後で見返したくなるよな。
と、5分ぐらいすると花火が止んできた。…次の花火を準備中かな?
「あと20分ぐらいはあるから多分そうかな。」
あと20分か…準備の時間があるとはいえ結構な数の花火が上がるんだな。
で、綺麗に撮れた?
「ばっちり。帰って見ようね」
それは楽しみだ。帰ったら鑑賞会にしようか。寝るまでは時間ある訳だし
と、少しするとまた花火が上がり始めた。今度はさっきとは形や消え方が変わってるな、凄い。
色もだんだん変わってるし量も多いし、見応えのある花火だな。
「VRも良かったけどこっちの方が綺麗だね!」
「………自分の目で直接見るとやっぱり違うな」
本当は「君の方が綺麗だよ」とかベタなことを言ってやろうか少し迷ったのだがやめた。花火に集中しよう。
「どうしたの?」
流石に恥ずかしいなと思っていると耳元で海莉が囁いてくる。ちょ、ちょっと……近い、近いよ!
「ちゃんと言ってくれなきゃわかんないよ?」
寂しそうな声をしながら囁いてくる海莉。耳っ…くすぐったいから!
「言うから、言うからちょっと離れて……」
海莉のこういうところがずるいんだよな……可愛いんだけどさ。
「え〜…このままがいいなぁ」
くっ……わかったよ。どうせ近付いてないと声聞こえにくいから近付かないとだもんな。
「花火より……海莉の方が綺麗だよ」
「ありがとっ。優成くんにそう言って貰えるのが何より嬉しいよ」
…俺もそう言って貰えて嬉しいよ。嬉しいけど……海莉さん。
そろそろ耳元で囁くのやめてくれませんか。何もそんなに近くなくてもいいと思うんだけど……
「最近優成くんドキドキしてくれ無くなったからこれぐらいは良いでしょ?」
「そういう理由なの…?」
「ビクビクして可愛いんだもん」
もう……。前までそんなに耳弱くなかったはずなんだけどな。ここ最近ずっとこんな感じだ。
鍛える方法とかないのかな?無いか。
「…ほら、そろそろ終盤だから見ないと」
「あ、ほんとだ」
海莉を引き剥がすことは無理だと判断したので気を逸らすことにした。
それに時間的にもそろそろ終盤だ。終わり際だからかなり派手になるだろうが……
そうすると今までの量より遥かに多い花火が連続で打ち上がっていく。
途中までバラバラだった種類が徐々に統一されていき、やがてひとつになっていく。
そして最後に一際大きい花火が打ち上がって残滓を残しつつ消えていった。
「最後凄かったね!」
「な。あれだけの物は中々見られないし…揃って行ったのが綺麗だったな」
もう少し長く続けばいいのにと思うぐらい綺麗だった。
また来年も見に来たいな。
「…帰ろうか」
「だね。」
花火は終わったが祭りはまだ終わっていない。そろそろ戻って残りの祭りを楽しんでいこうか。
それではまた次のお話で会いましょ〜




