第331話〜味わう〜
それではどうぞ
「肝試し?」
「そ。楽しそうじゃない?」
ある日のこと。いつもの様に変わらず休憩していると海莉が何かを持ってきた。
話を聞くとどうやら肝試しらしい。肝試しかぁ…
「……もしかして、こういうの苦手?」
「いや、そうじゃなくて」
あんまりやったことないな、と思っただけで別に苦手ってわけじゃない。
というか、むしろ海莉が苦手なんじゃ?
「そんなことないもん。平気だもん」
さようで。まあ海莉が良いなら構わないが…
ん?よく見たらこれふたつないか?肝試しの案内。
「1個は肝試しっていうかお化け屋敷?そっちは配信関係無いやつ」
「……ほんとに大丈夫か、海莉?」
「大丈夫ですー!!」
まあ怖い思いをしたいって言うのもお化け屋敷とかの醍醐味だもんね。海莉がいいならいいんだ。
怯えてる海莉も可愛いからね。
「あとは……その」
「ん?」
「ちょっと、お仕事で。2日ぐらい留守にすると思います。」
仕事で?…ああ、この間言ってた事務所の企画か?九州まで行かなきゃいけない〜とかなんとか。
「わかった、気を付けてね」
たった2日……まぁ、寂しいことに変わりはないがそれでも2日ぐらいなら耐えられるし。
仕事は大変だろうけどゆっくりしてきて欲しい。
「それでほら、大也くんと行くんだけど」
「ああ、そういう話だったね」
どういう企画かはわからんが、大也くんと海莉で行くらしいんだよな。
六花さんはその間こっちでせっせと動いてるし俺は当日まで何も知らされないんだよね。
「だから大也くんと行ってくるけど、嫉妬しないでね?」
「しないよ、他の人ならともかく…」
大也くんでしょ?どっちも信じてるし変な事は起こらないだろうから何も思わないよ。
考えすぎだよ、海莉。そこまで大事にしてくれるのは嬉しいけど。
「ん、なら行ってくる。楽しみにしてて」
「そりゃ楽しみだけど……一体なんなんだ?その企画」
「すぐにわかるよ」
企画日は7月の8日……これだけ見ると1周年(VTuberとして)の企画なのかな?って思うんだけどな。
どうも雰囲気的にそうじゃ無さそうだしな。
というかこの企画があるせいで8日に1周年記念放送しにくいんだよな。
夜遅くならできるからやるけど……
まその時になればわかることを考えてても仕方ないんだけどさ。
「よしよし。じゃあ明日から行ってくるから」
「はいはい、明日ね…………急だな」
びっくりするぐらい急だな。…いや、企画日のことを考えたらむしろ時間が無い方なのか?
うちの事務所ってもしかして計画力そんなにない?それともそれぐらい忙しい?
「それに関しては両方かな〜…」
というか明日でしょ?もう準備は出来てるのか?
「その辺はばっちり。お土産何がいい?」
お土産…お土産ね。どの辺に行くのかもよるけど福岡に寄るんなら明太子とかがいいよね。
基本任せるけど。なんか良さそうなので!
「福岡には寄るから買ってくるよ。明太子好きだもんね」
美味しいからね、明太子。パスタとかにもできて幅広いし。
「帰ってきたら明太子で何か作ってあげるね」
「やった!」
何を作ってくれるんだろうか。期待だね!
「あ、私がいない間もちゃんといつも通りに起きてちゃんとご飯食べるんだよ?栄養のバランスも考えてね?」
おかんか。心配しなくてもコンビニ飯で済ませたりはしないから。
その後も心配しまくる海莉を安心させながら、言った手前何か作らないとなと思い始めてきた俺。
何作ろうか………?……いやいや、それは一旦置いといて。
「じゃあ…今のうちに俺を味わっとく?」
何となく海莉がしたそうな事を察して、声をかける。
…あ、嬉しそうな顔になった。やっぱりか。
昨日も一昨日もバタバタしてたしな。存分に海莉を甘やかすとしようかなっ!
それではまた次のお話で会いましょ〜




