第286話〜バカップル〜
遅くなったあああ
それではどうぞ
「じゃあお願いします〜」
「はい、お願いします」
さてさて、1ヶ月ぶりぐらいだな収録は。まああの時よりセリフ数は断然少ないし全然楽なんだけど。
「まずはじゃあ登場シーンで」
「はい。行きます」
指定されたところから順番に。あーあー…うん、喉の調子は大丈夫。
「おお、なんだお前さんは。……………」
その世界に実在するかのようにイメージして声を出していく。
そんなに難しいセリフでもシチュエーションでもないためこのセリフは1発で通った。良かった。
「上手いですね!喋り方が素晴らしい。完璧です」
「ありがとうございます」
かなり褒めてくれるな、スタッフさん。こんなに褒めてくれるならやる気がでてくる。
「じゃあ次お願いします」
「はーい。行きます」
やる気が出たところで、じゃあサクッと終わらせるために頑張るかぁ!
同時刻 海莉視点
「…上手いねー優成くん。」
「優成くんですから」
「理由になってないような……」
本当にその世界に存在するような声を出していく優成くん。
上手く伝えられないけど上手なんだよね。言い方とか感情の込め方とか…
彼、ああいうの実は向いてると思う。ボイスを聞いた時も思ったけど演技が上手い。
ずっと辛いのに辛くないとか自分を偽ってたからだろうか??
「これもすぐ終わりそうだね〜」
「そうだな、あの分なら時間かからないだろ。…今日あんまり時間かからなかったな」
確かに。当初思ってたより早めに終わっちゃいそうだよね。
…早めに終わること自体は優成くんとの時間が増えるしいいんだけどね。
「せっかくだからなんかどっか行く?」
「カラオケとか?」
いいじゃん、カラオケ。優成くんも断らないと思うし……
「……だろ!?」
ん、優成くんのセリフももうすぐ終わりそう。流石早いなぁ。このまま優成くんがあの時みたいにこだわらなきゃいいんだけど。
「あの時?」
「ホワイトデーボイスのとき。」
あの時はもっといいものを!ってこだわった結果帰ってくるの遅かったもん。もう少しかな〜と思って待ってたら帰ってこなくて本気で心配した。
「んー…なんというか」
「ストレートに酷いって言っていいんだよ」
あの時ばかりは寂しかったし怖かったな。もし優成くんがこのまま帰ってこなかったらどうしよう、もし優成くんに何かあったら…って。
後で怒ったらちゃんと謝ってくれたし今度からは早めに連絡するからって言ってくれたからその日は許したけど。
「…ただいま。終わったよ」
あ、もう終わったんだ。後半聞いてなかった……アニメでしっかり聞かなきゃ。
「お疲れ様優成くん」
「ありがとう海莉……って、なんかあった?」
「いや…ホワイトデーボイスの日のこと聞いてたから」
空気を察してそう聞いた優成くんに大也くんが答える。
そう聞いた途端優成くんは何を聞いたのか分かったらしく「あ〜………」と言った。
「……今度からは気をつけてあげて」
「はい、気を付けます。その節はすみませんでした」
「いいよもう。…無事だったし。浮気してる訳でもないし」
そんなことするわけないけど分かるんだ?と聞く優成くん。
わかるに決まってるよ、女の子って鋭いんだよ?男の浅はかな考えなんてすぐにバレるよ。
「そっか。そんなに見てくれてると安心だな」
そう言いながら私の頭を撫でた優成くん。さ、流石にちょっと恥ずかしいよぉ
「ごめんごめん、つい。…ちょっと早いけどご飯に行くか?」
「先にご飯の方が良さそうかな。それでいい?」
「私はおっけい。海莉ちゃんは?」
「それでいいよぉ…」
撫でられる感覚を味わいながら答える。…もう優成くん、そろそろ…ね?
家でやって欲しいなぁ。優成くんのそんな女の子落とせる顔を見せたくない。
「わかった。」
「…なんというか、海莉ちゃんも可愛いし優成くんも優成くんだね」
「…何の話?」
「なんでも〜。ほら行くよバカップル」
バカップルって……否定できないね。人前で堂々といちゃついたわけだもん。
じゃあバカップルらしく腕とか組んじゃおうかなっ!
「やけに積極的だな?今日…」
「だめ?」
「いや?嬉しいよ。」
伺うように聞いてみると嬉しそうにそう答えてくれた。…私だってそういう気分の時もあるんだもん!
ほら、六花ちゃん達もカップルっぽくしてるし。それに外に出て優成くんがナンパされるなんて嫌だもん。
私のものです!ってアピールしないと。
「あ、そうだ。早めに終わったからカラオケとかどう?ってみんなで話してたんだけど」
「いいねカラオケ。ご飯終わったら行きますか」
スタッフさん達にお礼を言って挨拶してスタジオを後にする。
出来上がりが楽しみだね……優成くん?
「ああ。早く放送して欲しいな。海莉の部分だけ聞きまくらなきゃ」
「……ばか」
それではまた次のお話で会いましょ〜




