第272話〜賢い賢い優成くん〜
それではどうぞ
まずは俺に近い方の敵から狙うことにする。あまりこいつらに時間をかけすぎるとほかの敵までやってくるから早めに処理しなければ。
「やばいやばいやばい死んじゃう!死んじゃうぅうううう助けえぇぇ」
ああ、海莉の命が尽きた。1人は倒せたんだが流石に2人は処理が間に合わなかったか。
とはいえ確殺が入れられる前には助けられるかな?
「助けてぇぇえええ」
「今助ける今助ける」
そう言いながら頑張って確殺を取ろうとしてる敵を素早く始末する。
…流石にこっちを見てない敵は倒すのが簡単だから特に言うことは無いとして。
「早く起きて。アーマー抜いて回復して」
「ありがとっ。」
「来るよあと2チームぐらい」
戦闘の音が起きたから漁夫しに来る奴らはいっぱい居るだろう。
幸いなのは序盤だから敵の物資がまだ潤ってない事とこの位置は逃げやすい事だな。
こっちの物資(主に弾)も心許ないが敵を倒せば弾は貰えるしなんとかなるだろう。
「あー来るなこれ。」
ジップに乗って上に上がってくるぞ。…まぁ上がってくる最中に反撃されることそんなにないから撃ち放題なんだよな。
サクッと先頭にいる1人を倒しきる。リロードのタイミングなので少し下がって、上がってくるところを2人で待ち構える。
もしこれで上がってこなかったらグレネードを下に投げ込んでから下に降りるが果たして……
懸念も無駄になり普通に突っ込んで来てくれる敵。2対1だし待ち構えていたので当然圧倒的にこちらが有利なためあっさりとこの敵は倒せるが…
「もう1人来てるうううう痛いよおおお」
「ん〜下がろうか」
「ダメぇぇえええああああああああぁぁぁ」
海莉の悲痛な叫び声も虚しくダウンさせられてしまう。
…何もそんなに必死に叫ばなくても。
海莉が一瞬で溶かされた原因は現環境で最強と言われる武器を相手が持ってたからだな。
流石にあれ相手に不意をつかれたんじゃあ仕方が無いだろう。
とはいえあれは弾薬の消費量が凄まじいから使えてもあと1回ぐらいじゃないかな。
序盤だし、あれの弾薬は敵を倒しても手に入りにくいことでおなじみだ。
「うーん1対2はちょっときつい」
一旦安全圏まで下がって回復できるだけする。無論敵は追ってくるのですぐに下がって待ち構える。
敵が来たのでできるだけヘッドショットを狙って当てていく。
壁に隠れ、上手く敵の攻撃を躱しながら撃ってるとそこまでダメージを貰わずに1人倒すことが出来た。
あとはこいつの味方だけど……って、あれ?こいつ1人なのか。
自己蘇生ができるアイテムを持ってただけか…なんだビックリした。
「ボタン〜今行くよー」
「流石ウルフくんっ」
蘇生のタイムリミットまで時間が無い。急いで海莉の方に向かって蘇生を……
「うえっ?」
「あっ」
「えっ」
しようとしたら、よく分からぬままえげつない速度でHPを削られて倒されてしまった。
……えっと、なんで?
「……チーター?」
「え?ああ……なるほど」
ダメージ確認すると全弾ヘッドショットだし映像を確認すると加速チーターだった。
未だに絶滅してなかったんだな、これ。なんか数減った話は聞いたことあるんだけどな。
「流石にチーターには敵わなかった」
「いや無理でしょこれは…」
単独でチーターに勝てるやつがこの世でどれだけいるのか。
ただ銃撃ってるだけで勝てるでしょこんなん。
「まぁこんな感じですよ」
結果としては直ぐに終わってしまったが…まぁすぐに雑談に戻れるしちょうど良かったかもしれない。
「いやー凄い。動きとAIMに無駄がないし判断も早い。」
「なんか見てるところが違うよね。画面全体をちゃんと見てる感じ?敵が見えなくても何処にいるかを把握して戦ってるのすごい」
「引く判断も素早いのは素晴らしいですわ。常に1対1を心がけてるのも素晴らしい」
褒めてくれるのは有難いがそんなに褒めても何も出ないぞ。
それにこれぐらいは慣れれば誰でもできることじゃないか?君たちもすぐできるようになるって。
「今度教えてもらおうかな」
「あっずるい。私も教えて欲しい!」
私も俺も、と言ってくるみんなに対しちゃんと全員に教えるからと言って落ち着けさせる。
…海莉、そんな目をしなくても君にも教えるから。
だからそんなに怖い目をしないで。お願い。
「今日のボタンちゃん怒らせると怖いよ」
「お説教増やすよ」
「勘弁してくれえ〜…」
何とか救われる道はないんですか?…あ、ない?そうですか……
「じゃあ帰りますね。…ありがとうございました」
「ありがとー、お疲れ様なんだよ」
「お疲れ様」
「お疲れ様です。」
配信も終わり時間もいい時間になったので、まずはかりんさんが帰ることになった。
大也くんと六花さんも家が近いとは言え2人の時間は邪魔しないよといい先に帰ってしまったのでこれでみんな帰ったことになる。
「……一気に寂しくなったな」
「そうだね。騒がしかったもんね。…楽しかったけど」
そうだな〜。色々あったんだがやっぱり楽しかったよな。
でもそうか、ようやく今日1日が終わっ……
「もう。……無理しすぎなの、優成くんは。」
ようやく終わったと思ったら気が抜けてしまった。…危うく転ぶ所だったな、ありがとう。
「じゃあ、俺は部屋に戻って休むから…」
ずっと不快な感情は押し殺してたしその反動なのかな。無理して頑張ったとまでは言わないが結構疲れが溜まったのかな。
そして部屋に戻ろうとしたのだが…海莉の元から抜け出せない。むしろ拘束が強くなるような……
「……賢い賢い優成くん、お説教があるのを忘れてるの?」
声に一切の感情が込められてないんだけど!?めちゃくちゃ怖いんだけど!?
「えっとそのなんというか…ごめんなさい。悪気はなくて」
「問答無用。我慢したのは2回目だからもう許しませんこっち来なさい。」
そう言って俺を引き摺っていく海莉。こういう時の海莉に逆らっていい試しがないので大人しく怒られるしかなさそうだな。
それではまた次のお話で会いましょう〜




