第223話〜楽しかった〜
それではどうぞ
「ここが優成のおうち?」
「そう。」
「でっかいな〜」
割とでかいよね。今でこそ慣れたものの最初は広すぎてどこに何があるかわからんかったし…別の世界みたいな感覚に襲われることもあった。
まぁ急激に環境が変わったからだとは思うが。…っていつまでもここにいる訳にも行かんな。
「ただいま〜」
「お邪魔します」
「おかえり〜!」
「いらっしゃ〜い!」
中から2人の声が聞こえてくる。……お、ちょっと甘い匂いがする。
これが今日作ったやつかな?……ともあれ
「とりあえず上がって上がって。」
大也くんを上げてリビングに誘導する。…多分こっちにいると思うんだけど…
「あ、いた。」
「おかえり〜優成くん。いらっしゃい大也くん」
「あ、お邪魔しております。」
そこから自己紹介合戦が始まる。…一応初対面らしい。
「初めまして。冬樹六花です。」
「ああ、初めまして。佐久間優成で……ん?」
……あれ、今冬樹六花って……
「六花本名です!」
「…………えええええ!?」
六花さんまで本名なの!?……そんなことある!?
もしや名前聞いた時びっくりしてたってそういう事!?
「ま〜びっくりするよな…」
「ドッキリしてる気分だね」
ドッキリでも見ないわこんなもん。…なんで2人揃って本名を使ってまうん?
「怪しい関西人みたいになってるよ優成くん」
「…おっといけない。」
というか本名で街中で呼んで大丈夫なのかね?危なくない?
「堂々としてればバレないよ。珍しいって訳でもないしね」
「まさか本物のVがいるとは思わないし、ん…?って思われて声かけられても似てるだけですって言えばいいしね」
まそりゃそうか。まさか中の人がいるとは思いもしないわな。
俺もそうだったしよくわかる。
「じゃあご飯…どうする?うちで食べる?外行く?」
あ〜そういやそこら辺は決めてなかったな…どうする?作ろうか?
「六花はどうしたい?」
「食べてみたい!」
「じゃあお願いしてもいい?」
任せんしゃい。美味しいの作っちゃるから。
「時々優成くんがどこ出身なのかわかんなくなる時が来るんだよねぇ…」
今日はそういう気分なだけです。普通にこの近辺出身です〜
「私も手伝うよっ」
「ありがと。…2人はゆっくりしてて」
よし…んじゃあ作るとするか。あまり時間をかけすぎるとお腹を空かせてしまうからな。
「ご飯は炊いてあるよ」
「…もしかして予想してた?」
「まぁ、ね?」
流石だな海莉。……って、いつの間にそんな破壊力ある顔できるようになったの?
ウィンクとか反則では?
「ちょっと可愛くなってみようと思って」
「もう充分可愛いのに…」
これ以上可愛くなってくれるのか。…心がもつかな?
もっと俺をドキドキさせる気なのだろうか?
「好きでいてもらうための努力はするから」
「…そういうとこも好きだな」
俺も海莉に好きでいてもらうために努力しなきゃだな。
「熟年の夫婦みたいだね。私達もああなれるかな」
「そのうちになれるさ。焦らないで俺たちは俺たちで頑張ろう」
じ、熟年夫婦……
そうして他愛もないことも話しながら……時に六花さんや大也くんも混ざりながら作っていく。
海莉と一緒に作るのは初めてだったけど上手く作業を分担しながら出来ているので意外と楽しい。
……また今度一緒に作ってもいいな。いちゃつきながらできるのはいいね。
そうして作り始めてから20分程で今夜の晩御飯は完成した。
メニューとしては至ってシンプル。ハンバーグにお味噌汁、そしてサラダだ。
「はい、召し上がれ」
「美味しそ〜!」
「うお……凄い。」
ちなみにいくつかのハンバーグの中にはチーズを仕込んであったりする。チーズインだな。
じゃあ早速冷めないうちに食べてしまおうか。
「せ〜の…」
『いただきます!』
さて、出来の方は……うん、悪くない。流石に海莉と作っただけはあるな、久しぶりでも上手く出来ている。
「…美味しい。」
「よかった〜!流石優成くんだねっ」
「いやいや、海莉のおかげだよ。」
少なくとも上手くできたのは海莉が何とかしてくれたおかげだな。
久しぶりに料理したからかあまり分からなくなってたし……たまにはやらないとダメだね。
「チーズインだ。」
「いいな〜」
「六花、口開けて」
おお、なんとナチュラルな食べさせ方。凄く自然に食べさせるじゃん。
…って、物欲しそうな目で見ないの海莉。わかった、分かったからやってあげるからその目をやめなさい。
海莉の口に持って行ってあげると素直に食べてくれた。
大也くんと六花さんからの目線がきつい。そんな目をするな、あんたらもやってただろ。
「いや〜?お気になさらず?」
「そうそう。俺たちに気にせずいちゃついていいよ」
いや、気にするわ。いくらふたりでも見られながらは流石に緊張するし。後で2人っきりになってからイチャつくからいいんです。
「イチャつくんだ?」
「………………………」
海莉までからかわないで。…少し甘えたい気分なだけだ。口には出さないが海莉には伝わってるらしく、後でねと言ってくれた。
恥ずかしいがこうして気持ちを汲み取ってくれるのは正直嬉しい。
それに……今日みたいに大人数でわいわいご飯を食べるなんて、俺には無かった事だ。
それも踏まえてとても楽しい。…定期的に開催したぐらいだ。
「おかわり!」
ん?…六花さん食べるのはっや。ちょっと待ってて、入れてくるから。
そうして暫くはみんな食べるのに集中し、10分後には綺麗さっぱり食べ終わるのだった。
「ご馳走さまでした!」
「いや美味しかった。…ありがとう2人とも。今度お礼するから」
どういたしまして。……あんまり無理したくてもと言いたいが有難く貰おう。楽しみにしてる。
「今度は私が振る舞わなきゃ!」
「俺も手伝わなきゃな」
「大也は何もしない方が良さそうだけどね」
流石にちょっとした調理ぐらいはできるでしょ…って、ほら大也くん落ち込んじゃったじゃん!
「う、うそうそ!ごめんね?……元気だして」
「ふ〜んだ。どうせ料理は出来ないよ…」
「拗ねないで〜」
仲睦まじくて何よりだ。…あ、頭撫でてる。めっちゃ慰めてる。
大也くん、本当はそんなに落ち込んでないけど甘やかして貰ってるな。ああやって甘えるのか……なるほどね〜
「にしても、今日は楽しかったな」
機嫌を直した大也くんがそう言う。……そうだな。俺もこんなのは初めてだったし楽しかった。
「私も!」
「定期的にあってもいいかもね」
海莉が俺を見ながらそう言ってくれる。……バレてたのか。さすがだな、海莉。
その後食後少しみんなでお茶をしながらゆっくり話して…あまり遅くならないようにと大也くんと六花さんは帰って行った。
「楽しかったね」
「そうだな。…今日はほんとたのしかっ」
た、と言うのと同時に海莉が抱きついてくる。…どうした?
「今日1日優成くんを堪能してないから。」
そう言うが多分、俺が甘えたい気分なのを理解してたのだろう。ほんと、なんて言うか…
「そう。……好きだよ」
「今日は素直だね。おいで、甘やかしてあげるから」
耳元でそう囁かれる。少しだけ眠たいのもあって大人しく誘導に従い、海莉の膝の上に寝転がる。
「ん…寝そう」
「いいよ寝ても。今日は疲れたもんね、ゆっくり休んで。」
「うん……かいり」
「何?」
「ずっとそばにいてね」
そう言って俺は眠気に負け、眠ってしまう。
「もちろん。」
そう言って海莉は俺が起きるまで隣にいてくれた。
今日がバレンタインなのにチョコ渡す話間に合わんかったごめんなさい。
許して………
それではまた次のお話で会いましょう〜




