第195話〜仕返し〜
それではどうぞ
「まさかいきなり雨降り出すとは…」
とんだ災難だったな。しかも結構降り出してきたし……は〜、帰ったら着替えなきゃな。
「ただいま〜」
「おかえり〜!…ちょっと待ってね!」
少し待っていると、タオルを持って海莉が現れた。ありがたい……濡れてたからな。
「このままお風呂入って、入れといたから」
「それはめっちゃ助かる……ありがとう」
帰ってきたら海莉がお風呂を入れてて待ってくれてるのか……仕事帰りに準備して待ってくれてる妻みたいだな、仕事じゃないけど。
「つ、妻…っ」
「あ、声に出てた……」
まずい、一気に恥ずかしくなってきた。……ど、どうしよう!?
「と、とりあえず入ってくる…」
「そ、そうして。ちゃんと暖まってね!」
逃げるようにお風呂に向かう…が、あれ?着替えどうしよう……
「持っていくから!」
何から何まで準備してくれてるの、ほんと流石だな。じゃあ風邪ひかないうちに入ろうか。
「湯加減どうだった?」
「完璧。」
バッチリ俺好みだった。…海莉、最近はお風呂に限らず食事とかも俺の好みに合わせて作ってるのかってぐらいなんだよな。
「胃袋を掴んじゃえば逃げられないって聞いたし…」
「怖っ……別に逃げるつもりもないのに。」
「冗談だよ。…喜んで貰いたいからね。」
………っ、そんな天使の微笑みを…!
「顔赤いよ?風邪引いた?……大丈夫?」
「だ、大丈夫だから!…それより終わったの?」
「終わったよ!…かえってきた優成くんとお話するために!頑張ったのです!」
お、おう。…頑張る理由がリスナーのためじゃなく俺と話すためなのが少し引っかかるような気もするが、嬉しいので気にしない事にする。
「はいケーキ」
「お、ありがと。」
買ってきたのはショートケーキだ。別にしようかと思ったのだが、なんだかんだ1番美味しそうに見えた。
「じゃあいただきます…って、何?それ」
「分かってるくせに…はい、あーん」
海莉さん、それ好きね!?…いや待てよ?いつもやられっぱなしなんだからたまには反撃してもいいよな?
「ん…うん、やっぱあそこのケーキは美味しいな。」
そう言ってしれっと海莉の手のフォークを奪う。きょとんとしている海莉に対してケーキを口の前まで運んでいく。
「え…っと」
「ほら、はやく。……それともされたくない?」
「そ、そんなことはっ」
よし。ねじ込めた。……存分に味わいたまえ。
「どう?お味は」
「お、美味しい…けど」
「……間接キスだな」
「!?!?!?」
あえて言ってやることで意識させてやる。……普段のお返しだ。
最も俺もめちゃくちゃ恥ずかしい。表に出さないようにするのに全神経を注いでるぐらいだ。多分これが終わったあと1人で悶えることになるんだろうが……それは後の話。
「か、間接…っ」
「……可愛いなぁ」
「かわっ、か、かかかかかかかかかわ……」
壊れたラジオみたいになっとる。…負荷オーバーかな?まぁそれは俺もなんだけど……もう少し頑張れ、俺!持ってくれ、俺!!
「ご馳走様でした。……いつもありがとう、海莉。……感謝してる。」
耳元でそう囁いて、自分の分を片付けてから部屋に戻る。
その後何やら海莉が大声を出していたような気がするが……俺は布団の上でゴロゴロ転がっていた(悶えてた)ので何を言ってたかまではわからない。
……今思い返してもよくあんな恥ずかしいことしたなぁ!!でも海莉が可愛かったからやった甲斐があったな!
それではまた次のお話で会いましょう〜




