第193話〜好き〜
それではどうぞ
「…じゃあね」
「そんな…なんで……」
「君が悪いんだよ?」
そんな…俺は、何も……
「あんたのせいであの人に逃げられて…!あんたなんか産まなきゃ良かったよ!」
「あなた…また何か企んでるのですか?」
「居るだけ無駄。存在が邪魔」
そうだよな……俺なんて、生きてるだけで……
「〜くん!」
「結局…誰にも…」
「優成くん!」
「……ん?海莉……どうした?そんなに大声出して。と言うか泣いて…」
「泣いてない!泣いてないけど……」
「…そう?ならいいけど……」
…久しぶりに夢見たな。しかも嫌な奴。…いや、嫌な夢以外を見ることの方が珍しいんだけどさ。
最近この手の夢を見ることは無かったんだけどな。
運が無かったのか…それとも……いや、考えるべきは今じゃないな。今は何故か泣きそうになってる海莉が居るから後でにしよう。
「…優成くん、覚えてないの?」
「?なにが?」
「ずっと呟いてたよ?ごめんなさい…って。生きててごめんなさいって。それに苦しそうな顔してたし…」
そんなこと言ってたのかよ……ああ、だからそんなになってるのか。
「…ちょっと嫌な夢を見ただけだから、大丈夫大丈夫。所詮は夢だし、ね?」
「でも……」
海莉を安心させるためにあえて全く気にしてないから!と言う感じを装う。
「…気にしてるよね?まだ苦しそうだもん。」
「……はぁ。まあ、ね。」
嘘をついても仕方ないか。…前までなら諦めがついたし、感情を押し殺すことなんて簡単に出来たんだけどな……
「…そっか。…大丈夫、大丈夫だよ。誰が何をしようと私だけは味方だから…」
「うん、…ありがとう。」
泣きながら全力で訴えかけてくる海莉。大丈夫、海莉は疑ってないよ。
「…吐き出して」
「え?」
「聞いてあげるから」
有無を言わさない雰囲気だったのもあり、言葉に甘えて吐き出して行く。
なんで産まれたんだろうとか、結局誰にも認められないのかなとか。過去あった夢で思い出したこととかを話していく。
海莉は黙って聞きつつ、時折励ましてくれたり、否定してくれたり……
かなりの時間が経過した頃、心がだいぶ楽になった。
「もう大丈夫。ありがと、海莉。」
「軽くなった?」
「うん。だいぶね」
「……………うん。ほんとに大丈夫そうだね」
心配かけちゃってごめんな。もう大丈夫だから、そろそろ離れてくれてもいいよ??ずっと抱きつかれっぱなしは…流石にな?
いや、聞いてくれてる間は凄い…嬉しかったし、安心感を感じられたよ?でもちょっと恥ずかしいというか…
……って、強くなってない?力。……って待って待って!ほんとに強い!抜け出せない…から!
「…所で、悪い子には罰が必要だよね?」
「え〜っと、海莉さん?」
「…言わずに我慢しようとした悪い子には、お仕置が、必要だよね?」
あ…これ、もしかしてめっちゃ怒ってる?
「ね?優成くん。」
あっこれだめだ。逆らったら逆効果な奴だわ。大人しく怒られるしか未来ないやつだ。というわけで……
「はい。俺は悪い子です。」
「よろしい。では正座しなさい、少しお説教します。」
その後みっちりと…足が痺れる位にお説教されたけど、嫌な気はしなかった。そもそもこうやって、俺のことを考えて怒ってくれる人すらいなかったのだ。
……ああ、やっぱりそうだな。もう認めよう、いつまでも否定しているのも情けない。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。」
俺は海莉が……好き、なのだろう。
それではまた次のお話で会いましょう〜




