第186話〜御籤とお守りと…恋愛?〜
それではどうぞ
「優成くん5円玉持ってる?」
並んでる最中に海莉が聞いてくる。…5円玉?確かあったはずだけど…
「あるよ〜2枚だけ。」
そう言うと海莉は安心しきった顔をした。…どうしたんだ?
「よ、良かった。…忘れちゃった。」
「渡しておくね、ちょうど俺らの番だし。」
偶然持っててよかった。
こういうので5円玉を賽銭箱に入れるのって、ご縁がありますようにとかだったっけ?
…正直意味あるのか疑問だが、気持ちの問題なのだろう。素直に入れてみよう。なんかよく分からんのを揺らして…っと。
手を合わせて、海莉が先に祈る。
「………」
祈ってるなぁ、真剣に。……っと、見てる場合じゃないね。俺も祈っておこう。
そうだな〜、無難に無病息災でも祝っておくか。
「…何祈ってたの?」
「無病息災かな。海莉は?」
「ぽいなぁ。私は……秘密。」
秘密?…めっちゃ気になるけど視線合わせようとしてくれないし…そんなに言いたくないことなら仕方ないな、無理に聞かないようにしておこう。
「た、助かった…」
「ん?なんか言った?」
「御籤引こ〜って!」
御籤か。新年1発目だしありだな。
御籤コーナーまで行って引いてみる。……って、えぇ…??
「私は大吉だったよ!…優成くん…は、なんでそんな顔してるの?」
「大吉か……おめでとう。俺はほら…これだったから。」
俺が引いたのはまさかの大凶。…凶ですらないんだよ?大だよ?
「ま、まあほら!……ある意味レアだし!一番下ってことはあとは上がるしかないから!」
「……やはり神など当てにはならないって事か。」
「それ、お巫女さんとかの前では言っちゃだめだよ?」
それは確かに……。ここ神社だし気を付けることにしよう。
それに、海莉の言う通り下まで来たんだから後は上に行くだけだもんな。
「特に何か書いてあるわけじゃないしな…」
「恋愛……叶うって。良かったね!」
「良かったねって言われてもなぁ……」
別に望んでないし……これから望むのかな?まあいいや。
「んじゃ、そろそろお守り買って帰ろうか」
「あ、待って。御籤そこに結んでおくといいよ!」
「そうなの?じゃあ結ぶか……」
海莉のおすすめ通り、そこに御籤を結んでいく。俺以外の人も結んでるようだな…みんなやるのか。
「さて、あとお守りだけど…」
「それなんだけどさ、お互いにお互いの分買わない?」
ふむ?…つまり俺が海莉の分を、海莉が俺の分を買うってこと?
「そういうこと!」
「なるほど…分かった。じゃあそうしよう。」
ん〜と、海莉に良さそうなお守りは…っと。健康祈願?これでいいか。
無難だが、健康なのが1番出しな。
海莉に倒れられたら俺はやっていけない自信がある。…何とも情けない自信だが。
「聞こえてるよ〜?そんなにわたしがいないとダメなんだ?」
「聞こえてたか。…まぁ、うん。」
「っ〜!もう!嬉しいな〜!!家帰ったら撫で回す……」
お手柔らかにお願いします……お、海莉も決まったのか。
「うん。はい。恋愛が叶うらしいし、それに関連したお守り。」
「ありがとう。…ほんとに叶うのか?というかそもそも相手誰なんだ…」
そんなことを言ってると、神社の人達から凄い目で見られた。……何??え、なんかおかしなこといった?
「そのうち自覚できるよ。…ほら、いつまでもそこいたら邪魔だよ?」
「ああ、それもそうだけど……」
「ほら、行こ?」
分かったよ。……納得できないけど。
半ば疑問に思いながら海莉の手を取って、仲良く家まで帰る俺達。それを眺めながら……
「まだ付き合って無かったのかよ。」
ひとりがこんなセリフを吐き出すと、それに同意するように頷く人々だった。
それではまた次のお話で会いましょう〜




