第185話〜Happy New Year〜
優成くん達の世界も明けまして。
それではどうぞ
「わ、こんな時間なのに人多いよ!」
「そうだなぁ、この時間になっても人が多いのは今日ぐらいだろうしな。」
本日は大晦日……の、23時30分。家でゆっくり年越しを迎えても良かったのだが、海莉がお寺に行きたい!と言うので来ている。
…正直、寒いのに外に出なくても…と思わんでもないが、海莉が楽しそうにしてるならそれでいっか。それが一番だし。
「あ、屋台だ!何食べる?」
「海莉は何食べるの?」
「カステラ……は、買って帰るとして。りんご飴かな」
りんご飴を海莉のために購入しまして、俺は……っと、唐揚げか。それにしておこうかな。
「ご飯、控えめにしてたもんね。」
「満腹だと上手く動けないし、そうなるとエスコート出来ないし……って、どうかした?」
「そういうことをすんなり言うの、ダメだと思います!!」
「えぇ……」
そんなに恥ずかしがるような事かね?…まあいいや、ほら。ここだと邪魔になるから邪魔にならないとこに行くよ
「…男らしい優成くんだ。」
「らしいって……男なんですけど」
「だって襲ってこないし…男なんてみんな狼みたいなもんじゃないの?」
「偏見すぎるでしょ流石に。海莉にだけは嫌われたくないのにそんな事しないっての…」
世の中の男性が可哀想だろ。全員が全員そんな見境ない奴らじゃないっての。
「ん…」
「ん?……ああ、はい。」
唐揚げが欲しかったのだろう。1つ海莉に食べさせて上げる。
「よくわかったね?」
「分かりやすかったよ、今のは。」
「…美味しい。けど、ちょっと喉が渇くね。」
「飲みもの買おっか。…まだ時間あるし」
もう少しゆっくりしても問題は無いだろう。
「ほんとなら買ってきて、とか言ってみたいけど…優成くんがナンパされるの嫌だし一緒に行こ」
「普通逆だと思うんだけど…まあいいや。」
俺にそこまでの魅力はないんだけど……いや、これを言ったら海莉が怒るから言うまい。
「あとちょっとだよ。今年も色々あったな〜」
「……ほんとに色々あった、今年は。濃すぎて1年で起こったとは思えないぐらい」
めちゃくちゃ充実してたしな。今まで生きてきた中で1番時の流れが早かった年だわ。
あの思い出したくもない地獄みたいな日々から開放された…だけじゃなく、こんなに楽しいことがあるんだって初めて知ったし。
自分を大切にしてくれる人に初めて出会ったし。VTuberになれたのも海莉のおかげだしね。
「…私と出会えて良かった?」
「そりゃもちろん。あそこで出会えなかったら、死んでてもおかしくなったし。……ありがとう、海莉。」
「私も優成くんに出会えてよかったよ。…だから、居なくならないでね?」
大丈夫。心が耐えきれなくなる前に海莉に相談するし、心配はいらないよ。むしろ海莉の方がもっと俺に頼って欲しいぐらいだ。
「……もう十分頼ってるからなぁ。」
「そうか?…ならいいけど。」
「私も、優成くんと出会えたのが1番だったかな。来年もよろしくね?…来年はもっと巻き込んでいくから」
「うん。一緒に頑張ろうな。」
色々と不安が無いわけじゃない。むしろ不安の方が多かったりするが……っと、お?
一通り話し終えたところで、どこからともなく声が聞こえてきたので時間を確認する。
「お、あと10秒で日付が変わる。」
「ほんとだ!」
10、9、8…と神社の人々がコールしてる所に俺と海莉も混ざっていく。
「3」
「2」
『1……ハッピーニューイヤー!』
「…明けたな」
「明けたね。…今年も1年、よろしくお願いします 。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。……せっかくだしお参りしていく?」
「する!お守りも買っていこ?」
それでもきっと、海莉がいてくれれば大丈夫だろうと横顔を見ながら思ったのだった。
それではまた次のお話で会いましょう〜




