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14、後片付けとお手伝い

 太陽が昇り始めた。すなわち新しい一日が始まったと言ってもいいだろう。簡単に食事を済ませたメイドたちが大掃除しようと動き出した。


 金庫はもちろん倉庫にしまったさまざまなものが盗賊たちに運び出されたせいで、メイドたちはその後片付けしないといけなくなった。


 しかしメイドたちにとって幸いなことがあった。お嬢さんの嫁荷を船に積む作業に回された警備などの男手がちょうど作業を終え、屋敷に戻った。

 まぁ、男たちにとって精神的にも肉体的にも負担が大きいだろう。徹夜して作業を終えやっと休めると思ったのに、戻ったら待っているのは次の仕事では。


 メイドたちもそのまま元に戻すのを手伝わせるのも悪いと思ったらしく、男たちの休息を兼ねて大掃除を始めた。


 とはいえ、重いものを運ぶのにはやはり男手が必要。

 しかし、そこで男たちにお願いしたところ、誰一人も手伝おうとしなかった。

 男たちは薄情だが、メイドたちが運んでほしい物が物だから、誰も手伝いたくなかった。


 メイドたちは仕方なく棒と布切れで担架を作って死体の運搬に取り掛かった。

 ざっと見て死体の数は約20強というところ。やけにぼろぼろな1体を除いて、次々と運び出されていく死体を見てどことなく違和感を覚えた。

 ちょうど最後の1体が目の前を通過する時、違和感の正体に気づいた。


 確認しようと裏庭に運ばれた他の死体を見に行った。

 そして予想通り、死体のどれもズボンの股間の部分に不自然な染みがついている。


 しかし私はすぐにこの行動を後悔した。なぜなら、まるで「他のはまだマシの方だ」と物語っているような1体を見つけたからだ。

 その状態は多分今後挽肉を見ただけで吐き気するぐらいひどいものだった。

 やはり死体なんかよく見るべきではなかった。


 しかしなぜ股間?


 …………

 あっ! そういえば盗賊たちに汚されたメイドも居たな。

 これは多分その鬱憤晴らしだろう。よかったな。感じられない状態でそうされた。


 あっ。

 一瞬、ボロボロな1体、ヒゲのことを頭によぎった。


 この様子だとせっかく殺し合いから生き残ったヒゲもそうされたのだろう。生きたままで。

 まぁ、それも仕方ないか。盗賊団の頭としてちゃんと責任を取らないとな。


 とりあえず使用人たちはそんな感じで1日を始めた。


 そして、お嬢さんとチェルカというと、お嬢さんがチェルカと抱き合ったまま寝てしまったせいで、もともと盗賊に邪魔されてできなかった話し合いもまたできなくなった。


 チェルカもお嬢さんを部屋まで運んでベッドに寝かせたら、そのままベッドにもたれて眠りに落ちた。

 暇になった私は2人が起きるまで早送りしようと思ったが、他のメイドが今回の騒動にどんな反応があるかと気になって屋敷を見回ることにした。


 しかし、あちらこちらを見回って今に至ったがメイドたちはただ誰がなんの担当とか、そういう仕事の話しかしなかった。

 逆に何も知らずに帰ってきた男たちは徹夜の身であるにもかかわらず、使用人の部屋で寝ずにヒソヒソといろんな憶測を立てて論議している。


 それも仕方ないか。何故そうなったというと、男たちに説明を求められたメイドの誰も「強盗に入られたが、突然仲間割れで全滅した」としか話さなかった。これ以上のことを聞こうとしても「わからない」しか返って来なかった。


 そしてそこのところばかりしつこく聞いてくるのに、自分たちの安否を全然心配してくれなかった男たちにうんざりしてきたメイドたちはそろって無視しはじめた。


 しかし、この行動がかえって男たちを疑わせてしまった。

 実際メイドたちはもう知っていること全部話したが、男たちは「女たちはきっと何かを隠している」という考えを中心にした憶測が止まない。




 「はい、チェルカの負け」


 そろそろ起きる時間だと思ってお嬢さんの部屋に来た私は、満面の笑顔が目に浮かびそうな声がお嬢さんの部屋から聞こえた。

 中に入って見るとお嬢さんはチェルカと2人っきりで見たことのないボードゲームで遊んでいる。


 「では、わたしはそろそろ仕事に戻ります」


 「えーーわたしをお世話するのは仕事じゃないの? それともわたしのことが嫌い?」


 チェルカはそう言いながら立ち上がったら、お嬢さんはうるうると見つめて泣きそうな声で問いかけた。


 「ち、違います! 嫌いなんてそんなことありません」


 「じゃぁ、なんで?」


 「そのう……他の皆が忙しいのにわたしだけ遊んでいると思うと、なんか悪いことしているみたいで落ち着きません」


 さっきまで慌てて否定したチェルカは原因を聞かれると今度はきまりが悪く答えた。 


 しかしこの理由はなんか社畜的だな。


 「だから、わたしをお世話するのも仕事って言っているの」


 「しかし、旦那様が……」


 「いいの! 別にわたしと遊んでいるわけじゃない、ただ1人じゃ遊べないから手伝っているだけだから」


 「でも、他の誰かに見られたら、どうしましょう」


 「大丈夫、他の皆が忙しいってチェルカが言ったじゃない」


 「そうでしたなら……」


 チェルカがお嬢さんに言いくるめられ、座ろうとしたその時。


 パン

 扉が無作法に開けられ、1人男が入ってきた。


 「ヒャリエー、大丈夫か!」

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