suujitestuto
息を整えゆっくりと立ち、アレクは物陰から出た。堂々と『覚悟』を持って少女と対峙する。
十歩ほど先、走ればすぐの距離にあいつが居る。
出していた腕はマントに隠され、顔もフードでほとんど分からなかった。口元が少し見える程度か。
『黒魔術師』と『札使いの少年』。
二人だけの沈黙の路地――硬直した空気を彼女が破った。
「さっきの子供……か。姿を見せてくれて感謝する。少年」
衛兵でない事が判ってか、不敵な言い回し。
「何が『子供』だ!」アレクは噛み付いた。
「子供のお前に言われる筋合いはない!」
一般市民の常識ならば奴等を見つけるか活動を把握すれば、急いでその場から逃げなければならない。
途端、こちらに突っ走る!
――と見せかけてフェイントを掛けた。が、アレクはただ睨むだけ。
「怖くないの?」
「ああ、……怖くないさ」
はっきりと口にした。改めて自らに言い聞かせる為にも。
彼女の奇妙に思う心情は更に増しているようだった。
だが、それはすぐに変わる。
「肝が据わっているのか。……いや、それとも」
ね、ロジーナおばさん」
近頃、忙しさも相まって会えていなかったおばさんに朗らかに挨拶をした。






