test04
息を整えゆっくりと立ち、アレクは物陰から出た。堂々と『覚悟』を持って少女と対峙する。
十歩ほど先、走ればすぐの距離にあいつが居る。
先ほどまで持っていた物は腕ごとマントの中のようだ。
やはり顔はフードのせいで、ほとんど分からなかった。口元がなんとなく見える程度か。
『黒魔術師』と『札使いの少年』。
二人だけの沈黙の路地――硬直した空気を彼女が破った。
「さっきの子供……か。姿を見せてくれて感謝する。少年」
衛兵でない事が判ってか、不敵な言い回し。
「何が『子供』だ!」アレクは噛み付いた。
「子供のお前に言われる筋合いはない!」
一般市民の常識ならば奴等を見つけるか活動を把握すれば、急いでその場から逃げなければならない。
勝てる相手ではないのだ。城の兵だとしてもまともに渡り合えないと聞く。
だが今のアレクにはむしろ好都合なのだ。虚勢を張ってでも歯向い、怒らせたことによる『結末』を狙うのだ。
ただ、一つだけ心残りがあった。
最期に――いや最期ぐらい、奴等の正体が知りたい。目的は何なのか、あいつに聞いておきたい。
だからこうやって戦わずに話し続け、突破口を見出そうとしていた。
「こっちは姿を見せたんだ。顔ぐらい出したらどうだ、臆病者!」
彼女はといえば「ふぅん」と珍しいものでも見たように、フード奥の口元をすぼませている。
「わたしがどんな存在なのか、もう分かっていると思っていたが……」
途端、こちらに突っ走る!
――と見せかけてフェイントを掛けた。が、アレクはただ睨むだけ。
「怖くないの?」






