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レイアウトテスト

テスト◆

1-001


の空気ぐらいじゃないのか?行った事無いが。ガハハ…………。」

 札の効果に八百屋のおじさんは喜んだ。


「アレク。あんたの魔術札にいつも助かってるよ。売り捌く方も一緒に頼むよ。」


 街の人々が見たことの無い冷気の霧をまとった大量のスイカは、少年の元気な客寄せも相まって日が落ち切る前にはきれいに捌けた。


「いやぁ、助かった。今日だけで目玉の品が消えるとは思わなかった。逆に困っちまった。」


 冗談めかして八百屋がそう言うと、いつもありがとよ。とずっしりと小袋に入った駄賃を彼の手に渡した。


「スイカの分は入れたが、こっちも余り儲かって無くてな、小銭ぐらいなんだ。悪いな……。」


 と昼の威勢の良い様と違い、済まなさそうに言った。


「いや、これで良いですよ。掛け持ちしてますし。」


 明るくそう言いながら、駄賃を持ったアレクはバッグから出した魔術札を火種にランプを光らせて黄昏た街の中へ消えていった。


◆1-002-001

 アレクが自宅に着いた時には日は完全に落ちていた。家に灯火は付いていない。


 鍵を開け部屋の灯りを火種から点ける。

 灯火の側の棚の上に四袋の駄賃を置き、四箇所の手伝いでの疲れを、ため息とともに腰掛けたベッドに沈ませた。


 テスト!?

 テスト!?

 アレクが次に気が付いた時は、もう朝になっていた。疲れのせいでいつの間にか寝てしまっていた様だ。

 部屋にまだ残る昨晩の冷えた空気の中で、ガラス窓の朝日が、暖かく床の木目を照らし、小鳥達がチュンチュンと忙しなく早朝の街にさえずる。


 思いがけず寝てしまった焦燥感はあったが疲れが取れた事にほっとしたせいか、目をこすり大きなあくびが一つ。


 顔を洗い、体を拭き、「今日はどこの店に手伝いに行こうか」と考える内に壁に掛けた暦に目が留まった。


「もう二年か………。」


 駄賃を置いた棚に顔を向ける。


 昨日稼いだ四袋の生活費と冷たくなっているランプのある古びた木棚。

 他に紋様が彫られた木の小さな棒とその隣に銀の装飾品が付いたペンダントが置かれている。

 木棚の前に立ったアレクはペンダントのそれにそっと手を触れた。


「母さん。あれから僕は強くなったかな?」


 瞼を下ろし、金属の冷たさの何処かにある凛としたものを偲んだ。


 ペンダントの隣、信仰の対象である模様付きのその棒に、今日も朝のお祈りをする。


「エオスさま。黄泉の母と僕をどうかお守りください。」


 魔術札にまだ白紙の札、ペンやその他諸々が入ったバッグを腰に巻き今日もアレクの一日が始まる。


◆003-002-001


 街路として敷かれた石畳は、長い月日雨風や靴音に磨かれた事により、朝の浅く入る日の光を、やわらかく人々やレンガと白い漆喰で出来た家屋へ照り返している。

 多様な恵みを長きにわたり授かった人々の活気が、朝露のなごりを残す世界から今日も主導権を取り返しつつあった。


 その中を、ため息で一呼吸付けたアレクは、『八百屋のおじさんの所に昨日は行ったから、おととい約束した肉屋は必ず手伝うとして。』と考えながら歩いていると、向こうからやって来た中年の女性が声を掛けてきた。


「あら、アレクおはよう。いい天気ねぇ。」


 ロジーナおばさんだった。

 近所の小さな宿屋を経営している。少しばかりぽってりした体格の人だ。友達の母親がロジーナおばさんで、自分が幼い頃よくおばさんの家で遊ばせてもらっていた。

 宿の予約の入った部屋で遊んじゃって怒られたっけ。


「あ、おはようございます。いい天気ですね、ロジーナおばさん。」


 近頃、忙しさも相まって会えていなかったおばさんに朗らかに挨拶をする。


「今日はどこに行く予定なの?」


「今日は約束してた、肉屋のジョージさんと花屋のターニャさん、あと向こうのバーで空瓶とかを運ぼうと思って。」


「三ヶ所も手伝うの?頑張るわねぇ。」


 驚いた様子で褒めるおばさんに照れながら、


「いやいや、最近はそんな感じですよ。」


 と恥ずかしそうに返したアレクは、彼女からの提案もあって一緒に自分の目的地まで歩きながら雑談をする事にした。


 その時は向こう側から来た彼女が自分と一緒に歩き出した事に違和感を感じることを失念していた。



 人が賑わった商店、調子の良い言い回しで客引きをする露店の店主らの側を横目に通っていく。


 昨日の八百屋での出来事や、それより前の日の手伝いでの活躍とかを話したり、おばさんからは世間話を聞いた。

 大体は互いに明るい話題や、他愛無い話だった。



 『あいつは自分と同じ、子供だ』と。それは、しっかりと声を聞き確信に変わった。

 

「わたしがどういう存在か、もう分かっているとは思っていたが…。」

 途端、こちらに向かって突っ走る――と見せかけてフェイントを掛けた。

 が、アレクは微動だにせず睨むだけ。


「怖くないのか?」


「ああ、…怖くないさ。」



「なんだこれ」()

「なんだこれ」()

 彼女が口を開く。

 「」


なんだこれ()

 

[本文はここまで]


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