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ネット小説家になろうクロニクル  作者: 津田彷徨
第二章 青雲編

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第二十三話 完全なる誤算!? このまま順当に行けばギリギリ勝てると淡い幻想を抱いていた僕たちが、神楽先生がとったたったひとつの奇策により、一瞬で敗北濃厚な状況となってしまった件について

 一次選考が発表されてから早くも十一日が過ぎていた。

 九月も後半となり、ようやくこの中庭にもほんの僅かに涼しさが戻り始めていた。


「よう、昴。ここにいたのか」

 いつものように中庭のベンチで紙パックのコーヒーをすすっていた僕は、急に背後から聞き慣れた声を掛けられる。


「あれ? 優弥は今日、学食じゃなかったっけ?」

「並ぶのが面倒だからな。焼きそばパンだけ買ってきたんだよ。で、どうだ調子は?」

「うん、そうだね。ぼちぼちってところかな。最近は雨の日でも、この膝はそんなに痛まなくなってきててさ」

 そう口にすると、僕は左膝を軽くポンと叩く。

 一方、そんな僕の返答に対し、優弥は微妙な表情を浮かべた。


「いや、お前の膝の話じゃねえって。『フクつく』の方だよ」

「ああ、そっちの話ね」

 僕は優弥の本題を理解すると、苦笑を浮かべる。


「だいたいさ、お前の膝は担当の医者におまかせだって」

「確かにね。ともかく、良い流れだよ。日間ランキングでもジャンル別なら上位三位以内をキープ出来てるし」

 ベコノベ内の全作品を対象とした総合ランキングではなく、あくまでそれぞれのジャンル別における上位。

 しかし、今回の漫画原作コンテストに参加している作品は、ほとんどが恋愛かファンタジージャンルに偏っており、他のSFやホラーなどのジャンルは少なめであった。


 それ故に、恋愛ランキングにおける順位は、ほぼコンテストの順位と比例しており、現状においてほとんどの一次突破作品は既にジャンル別の日間ランキングからも脱落し始めていた。


「やるなぁ。まあ俺が考えた更新戦略あってのものだろうが、服飾ものを選んだってのが、他のと差異を産んで良かったのかもしれねえな」

「そうだね。いずれにせよ、昨日も神楽先生と三百ポイント程差を縮めることができていたからさ、このペースを維持できたら最終選考前日には追いつける計算かな」

「そして最終日に一気に抜き去る……か。へへ、完璧だな。むしろちょっと出来過ぎなくらいだ」

 ポイント計算の締め切りとなる最終選考日から逆算した僕たちの予想。

 そのあまりにうまく出来た計画に、優弥は思わず苦笑を浮かべた。


「まあね。とはいえ、他の一次選考突破作品は、ほぼ全部完結か文字数制限に引っかかってるからさ。今現在、更新を続けてるのはほぼ僕一人って状況だからね」

「しかし欲を言えば、もう少しペースを上げたいところだな。一次選考終わった時点で、三日間は連日投稿してストックを消費しちまったから、仕方ねえけど」

 ポイントはポイントを呼び、ランキングはランキングを呼ぶ。


 つまり、一度ランキングを登り始めて人目につかないと、更に順位は上げにくい。だからそのための助走として一次選考終了直後に、他の更新停止中の作品を尻目にしながら三日間連日で僕は作品を更新している。

 結果としてストックは減らしたものの、それは今のランキングポジションを手に入れる大きな原動力となっていた。


「でも、もう読者さんも二日に一回の今のペースになれたと思うし、ポイントの加算も安定してきているから、下手に弄らないほうがいいかもね」

「まあそうだな。欲を言えばもう少し盛り上げたいとこだけど。あ、でも今週末の更新でライバルのイケメンを出すんだろ? エミナを奪い合うシーンもあるし、いけるんじゃねえかな」

 優弥の言うとおり、今週末からいよいよ作品は佳境に入る。


 デザイナーを任せたローラン・パッソ少年と、応募要項で指定されている美青年が、主人公であるエミナを奪い合うためにデザイン勝負を開始するのだ。

 逆に言えば、ここでどこまでポイントを伸ばせるかが、今回のコンテストの結果を左右するのではないかと僕は考えていた。


「まあね。ともかく、優弥のおかげだよ。一次選考直後にダッシュを仕掛ける『後の先作戦Ⅱ』が、ここまでピタリとハマったからさ」

「へへ、持ち上げても何も出ねえぜ。ともあれ、本当に勝ちきるまでは油断禁物だ。そろそろ日間ランキングが更新された時間だし、一応確認しておけよ」

 優弥は僅かに照れながら、僕に向かってそう告げる。

 早朝、昼、夕方と一日三回更新されるベコノベの日間ランキングであるが、優弥の指摘通り、もう昼の分が更新されていても不思議ではない頃合いであった。


「そうだね。えっと……え……うそ」

 手にしたスマホを出して、ランキング画面を目にした僕は、思わず言葉を失う。

 一方、そんな僕の反応を目にして、優弥は怪訝そうな表情を浮かべると、焼きそばパンをかじるのをやめて、声をかけてきた。


「どうした? 一気に千ポイントぐらい入って予定が早くなりそうか?」

「それはない……かな。というか、僕のは朝と同じ恋愛ジャンル二位で六百ポイントのままだよ」

 そう、そして漫画原作部門の応募作の中では、今回の更新でも日間では首位である。

 ただ発生した問題は、僕の作品にはなかった。


「なんだ、全然順調じゃねえか。だったら何に驚くことがあるんだ?」

 優弥は苦笑を浮かべながら、軽い口調でそう問いかけてくる。


 僕はそんな彼に向かい、顔の前に手にしたスマホを突きつける。

 そして震える声で、日間恋愛ランキングにおける僕の下に続く作品のことをその口にした。


「日間ランキングの僕の真下に、応募作品が二つ上がってきてるんだ。既にピークを過ぎて日間からは姿を消していたはずの『女医令嬢の残念な恋』と『転生王女はパティシエ志望』がさ……」


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