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【完結】オネエ様と一緒!~厳ついオネエと追放令嬢のぶらり途中気まま旅~  作者: 清水ゆりか
第四章 南の諧謔曲

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33 行方・前編

 ディバイン領を騒がせていた事件の数々が解決の糸口を見せ始めていた。


 大半は犯罪集団を真似てひと儲けしようとしたゴロツキや愉快犯などであった。それらももちろん捕縛され取り調べを受けている。


 同時に行方が判明した被害者や、無事保護された人が日に日に数を増している。


 そして捕まえた犯罪集団の三名は、強制労働施設に収容された。彫師に三人の顔を確認してもらい、クラウドホースからの一件に関わっている人物であるということも判明している。


 三名は決して口を割らなかったが、捜査の甲斐あって別の者たちから少しずつ、その手口や、関わった者の情報などが解ってきている。


 別の場所に潜伏していた幾つもの事件に深く関わっていた残りの犯罪集団も次々と捕縛されており、国宝の額縁を削った金や、偽金を作るための金型の複製も発見・押収された。


 また、ディバイン領だけではなくエストラヴィーユ王国全体に調査を拡大し、各地での過去の事件も判明して来ていた。


 事実上犯罪集団は解体した。


 しかし紳士の遺体は打ちあがらず、いまだに行方不明であった。


*****


「律儀だな」


 アンソニーが西の小国からの信書を手渡す。

 アマデウスは手元にある書類に手早くサインをすると、差し出された封筒を受け取った。


「約束だからね」


 紳士と対決した時に、投降し罪を償うのならば彼の祖国に再調査を掛け合うと約束した。

 本来は投降されていないので守る筋合いはないのであるが、アマデウスは約束通り、王太子の名で事件再調査の依頼をしたのだ。


 直接過去の判決に関りはないものの、未来の統治者として、同じように判断をくだす者として看過できなかったからだ。全てを正しく判断できるなどとは思ってもいないが、そうあろうと努めることと自身を正すことは怠ってはいけないと考えている。


 紳士がした事々は正当化できないが……それでもそこまで追い込んでしまった原因を、過去とは言え素知らぬふりで見逃すことは出来なかった。


 言い方を間違うと内政干渉になりかねないので、表向きは西の小国出身者が犯した事件を詳しく調べるため、その背景を『きっちり・正しく』調べてほしいと依頼してある。


 自国の元貴族が引き起こしたかもしれない事件の話を聞き、西の小国関係者は表情をこわばらせた。……その原因が過去の断罪にあり、更には冤罪だったかもしれないと突き付けられ、更に顔色を悪くすることになった。


 被害はエストラヴィーユ王国だけではない。


 場合によってはとんでもない賠償責任を課されるかもしれないとでも考えたのであろう。


 二度と同じような悲劇を繰り返さないようにと強く念押しされ、動かないわけにも行かなくなったのだ。罪を着せた大物貴族が亡くなっていたこともあり、冤罪だったとすぐ判明した。そしてその事実を内外に向け発表することも約束させた。


 扱いまでは口出しをしていない。かなり古い過去の出来事であり、扱いはそう大きくはないであろう。


「今更、なんの助けにもならないだろうけど」

「ましてや他国のおかしなヤツに汚名を雪がれるなんてな」


 一見皮肉っぽいが、声色には労いの色が浮かぶ。


 自らが関わったこともあり、一連の事件の調査指揮を国王から任されていた。普段の執務と並行して行っており、同時に西の小国に働きかけるのにはなかなか大変だったことを知っているからだ。

 素直でない幼馴染兼側近に向かって、アマデウスは肩を竦める。


「他国の人間に促されてなんて、余計に腹立たしいかもしれないし、恥ずかしいと思うかもしれないけどね」


 ただ、見捨てる人間ばかりではないのだと、せめて紳士に伝えたかったのだ。

 

いつもお読みいただきましてありがとうございます。

夕方ごろにもう1話投稿いたしますので、そちらもお読みいただけましたら幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします!

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