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第25回 この胸のときめき

 ここのところ、ハードボイルドやサスペンスものが続いたので、空気をやわらかくするために恋愛ものをご紹介させていただきます。


『この胸のときめき』(2000年公開)


 建築家のボブ(『Xファイル』シリーズのモルダー捜査官を演じたデイビット・ドゥカヴニー)は、愛妻エリザベスを交通事故で亡くします。しかし、彼女は即死したわけではなく事故後脳死状態になっていたので臓器提供が可能だったのです。エリザベスの心臓は移植を待つ患者のもとへ運ばれ、同時にボブは妻を失ってしまいます。ボブはその晩、ひとりで泣くしか夜を過ごす術がありませんでした。


 一方、イタリアンレストランを営む祖父に育てられたグレース(演:ミニー・ドライバー)は、持病の心臓病で明日をも知れない状態でした。ギリギリのところで移植の順番がまわってきたグレースは、祖父と友人たちに見守られながら手術室へと入っていくのでした。


 一年後、ボブは妻の死を乗り越えることができず味気ない日々を過ごしていました。

 友人が女性たちとの食事をセッティングしてくれたので、仕方なく待ち合わせのイタリアンレストランへ。そこでボブは祖父を手伝うグレースと出会うのです。ボブに出会って、これまで病気のために旅行へも、恋愛さえも経験できなかったグレースの胸がときめきます。

 待ち焦がれていた運命の人との出会いだと思ったのです。

 ボブもグレースに好意を抱き、デートに誘います。二人の距離は縮まっていくのですが……と、予想を裏切らない恋愛モノです。

 ハートウォーミングな作品をお望みの方にオススメです。


 キャストはわりと地味。これというほどメジャー俳優は出演していません。グレースの友人メーガン役で出演している女優ボニー・ハントが監督・脚本です。


 話は映画から逸れますが、臓器移植、ドナーというものは命を賭けた大手術を受けなくてはいけません。患者やその家族にとっては希望の第一歩。同時に臓器提供者の遺族は悲しみに打ちひしがれることになります。

 心臓は動いているのに脳死を宣告され、臓器移植のために摘出手術を受ける同意を迫られるのです。同意することは、家族の死に直結してしまいます。

 仮に移植手術を受けても助かるとは限らない――そんな恐怖とも向き合わなくてはいけないのです。


 生きるため。


 映画をきっかけに大切な命の終わりとはじまりについて考えていただけると嬉しいです。



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