89:全能的罰。
真面目な話から一転して、通常の男では確実に押し倒していたであろうグリーテンのお色気攻撃に耐え、グリーテンに送られてベラが待つ宿に戻ってきた。
「ただいま……ベラ」
「おかえりなさいませ、アーサーさま」
「まだ五歳には早かったみたいね」
もうゴールしてもいいんじゃないのか? と何度も思ったがこれをベラが見ているのだと思ったら踏みとどまることができた。
そもそも本来なら五歳は精通も勃起もできていない時期で、ゴールとかそういうのは考えなくていいのだが、俺のほぼ全能があるから精神に引っ張られてそういうことができるようになっているのが厄介だ。
俺のほぼ全能は俺の能力をおさえること限定でできないのだから。
というか未だに俺の貞操は死守できているが、誰に心を許そうか贅沢な悩みを持っているわけで、前世の俺が見ていたら殴り殺していたところだ。いや、そもそもそんなに人間に興味がなかったから何も感じないのが正解か。
「グリーテンさま、いい加減にしていただけませんか?」
「なんのこと?」
「とぼけないでください。五歳のアーサーさまを誘惑するなど、もってのほかです」
「あら、もしかして嫉妬しているのかしら?」
「アルノさまにご報告させていただきます」
「……それはちょっとまずいわね。でもアーサーも本気で嫌がっているわけではなかったからいいじゃない。早すぎる性教育よ」
「早すぎるに決まっています!」
本当にこの二人は相容れないな。でもそれは俺がいるからそうなっているだけで、俺がいなければたぶんこうなっていないだろうな。
とにもかくにも、今日が終わったらランスロット領に帰ることができるわけだ。
終わればね。もう夕方だから終わりそうだけど、あと一つだけやることが残っている。
ついぞ社交界では会うことがなかったアンリ・ペンドラゴンへの制裁だ。
シルヴィー姉さんとルーシー姉さん、というかルーシー姉さんが次にアンリ・ペンドラゴンに会った時に殺しかねないほどの殺意を持っていたから、これは最重要ミッションだ。
グリーテンからさっき聞いた話によれば、アンリ・ペンドラゴンは七天教会と手を組んでランスロット家含めて邪魔なものたちを潰そうとしているらしい。
それはもうやってくださいと言っているようなものだ。
どうやって制裁するのかは前もって考えているから、あとはやつの居場所を知ってお仕置きをすれば完了だ。
あぁ、あとは撮影をすることを忘れないようにしないといけないのか。
ほぼ全能だから、ここからでも撮影もお仕置きもできるわけだが、どうしようか。俺が直接向かうとなれば、ベラやグリーテンが何か感づくかもしれないから、ここからやろうか。
今回はルーシー姉さんの願いとあって、ほぼ全能を遺憾なく発揮して千里眼を使う。
王都全体が俺のテリトリーと化したため、アンリ・ペンドラゴンが城の自室にいることはわかった。
初めてアンリ・ペンドラゴンを見たが、ギネヴィアと同じゴールデンブロンド色の髪を持ち、中性的な顔立ちだが、雰囲気から偉そうなのが分かるムカムカとする奴だった。
城を見るついでにギネヴィアの部屋を見ると、カミサマシミュレーションを夢中でやっているのが見えて少しだけ微笑ましくなる。
部屋の中にいるアンリ・ペンドラゴンは、部屋の中にいる全裸の女性三人を地面に四つん這いにさせ、怒った顔をしながらその女性たちのお尻を靴のまま蹴っていた。
もうその時点でルーシー姉さんとか関係なしに、憎悪が膨らんだ。
さらに言えば、こいつを放置していれば俺の大切な人たちに危険が及ぶと考えたら、やはり一回殺していた方がいいと思った。
最初はパイプカットにしてやろうかと思ったが、それだけでは生ぬるいことに気がついた。
俺が見ている光景を録画と録音をしながら、ここからアンリ・ペンドラゴンに向けて魔法をかけた。
『あっ……な、なんだ……!?』
女性の横腹を蹴っていたアンリ・ペンドラゴンは体に違和感を覚えたのか、女性を蹴るのをやめたところで、体に力が入らずに膝をついて本人が四つん這いになった。
『あ、あああああああああああああぁっ!?』
痛みで地面に倒れ込んで叫んでいるアンリ・ペンドラゴン。
そうなったことで四つん這いになっていた女性たちはアンリ・ペンドラゴンの方を向くが、誰も駆け付けようとはしないから、これはプレイではないと本当に分かった。
ついでだから、全身あざだらけの女性たちの傷をすべて完治させて服を着させ、呪いをすべて解呪した。
女性たちのそばに、『呪いも解呪しました。自由だから逃げてください』と紙を置いたところ、女性たちはその紙を持って部屋から走り去った。
呪いの内容は『アンリ・ペンドラゴンに逆らえない』と『アンリ・ペンドラゴンから逃げられない』というものだった。もはや奴隷だ。
国王が奴隷制度を撤廃しているのに、それをバカ王子は自分のために奴隷を作っているなど時期国王になる資格はなさそうだ。
逃げた女性たちはボロボロだったけど綺麗な感じな女性だったから、もしかしたら貴族だったのかもしれないが、そこら辺は俺は気にしない。
俺は別に正義の味方でも、すべての人を助けるとか、そういう崇高な考えを持っているわけではない。だが、見てしまった胸糞悪いものを消しているだけに過ぎない。
『はぁ、はぁ……あいつら……逃げやがって……!』
痛みに倒れていたが走り去った女性たちのことは見えていたようで怒りの声音をしているが、その声音がさっきまで叫んでいた声色と違っていた。
『は……?』
ようやく自身の体の変化に気が付いたようで、アンリ・ペンドラゴンは自身の体を姿見で見たことで唖然としていた。
それもそのはず、さっきまで中性的な顔つきとは言え男だった体が、体に丸みが帯びて筋肉も落ち、ひ弱な女性の体になっていたからだ。
『どういうことだぁ!?』
何だか女性の声でそう言っているから笑ってしまいそうになるが、今は目の前にベラとグリーテンがいるから押しとどめる。
『一体どこの誰がしたんだよ! ふざけやがって! 俺を誰だと思っているんだよ!』
怒り散らして、壁を殴りつけたアンリ・ペンドラゴン。
『いっ、たぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
壁を殴りつけただけで、アンリ・ペンドラゴンの拳は折れていた。
ただ女性の体にしただけではまだ足りないと思ったから、『脆弱になり魔素が一切吸い取れない』という呪いもついでにかけておいた。
壁を殴っただけでも骨折するくらいにな。
バッチリとこの光景を撮影できていたから、これでルーシー姉さんが留飲を下げてくれればいいのだが。
ここから一歩踏み出そうとすれば、王家から追放されたり、男たちから慰め物にされたりとか、まだ九歳のルーシー姉さんには早いことばかりしか思い浮かばないからここで撮影を終わらせておく。
叫んでいても誰も来ないのは、アンリ・ペンドラゴンが自室に防音の結界を張っているためだったからで、それを解除してやることで部屋の外に叫び声が聞こえることになった。
ただ気を失っているようだから、俺がチョンっと折れている場所を魔法で触れてやると再び叫んだことで部屋に兵士たちが入ってきた。
『だ、誰だっ!?』
『ここで何をしている!?』
女性になったアンリ・ペンドラゴンが分かっていない様子の兵士たち。
まあこの後どうなるのかはどうでもいいからここで俺も千里眼をやめた。
並行思考していたからベラとグリーテンとの会話にも参加していた。だからこうして二人のお乳に両サイドから挟まれている状況も分かっている。
ベラとグリーテンはお乳を押し付け合い、その間に俺がいるのだが、ここは天国なのだろうか。
まあ、もう色々と精神的に疲れたからこのまま天国にいることにしよう。上でベラとグリーテンが言い合っているが、気にしない気にしない。




