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全能で楽しく公爵家!  作者: 二十口山椒
王都でも渦中

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87/112

87:ペット。

 夜になって後は寝るだけの状態でベッドの上でベラの横に座っている時に、グリーテンにメッセージを送る。


『明日、グリーテンの家に向かえるよ』


 そう送ると、すぐさまメッセージが返ってきた。


『分かったわ。明日になったら迎えに行くわね』

『了解。何か準備しておくものはある?』

『ないわ。強いて言うなら、マリアに魔道具を作るところを見せてもらうだけかしら』

『それなら大丈夫だね』

『えぇ、楽しみにしているわ』


 このやり取りを隣からベラが見ていることは分かっていた。


「明日もお出かけですか?」

「うん。グリーテンと約束していたから」

「そうですか」


 不意にベラもスマホを取り出して誰かにメッセージを送っている様子だった。


 このタイミング的にはグリーテンに送っているのか? アーサーさまをよろしくお願いします的な? それならグリーテンが迎えに来た時に言えばいいか。


 ……かなり気になるな。でも他の人のメッセージを見るなんてストーカーみたいだからやめておくか。


 ただ仮想空間は俺の脳内と繋がっているから、見ようと思えば見れるわけで、別に監視とかではない。ただ気になるだけだ。決してキモイ行為ではない。きもいけど。


『グリーテンさま、くれぐれもアーサーさまに粗相のないようにお願いします』

『粗相って何かしら? 私はただアーサーにお家に来てもらうだけで、何も考えていないわよ』

『それなら結構です。百歳以上にもなって色ボケになられては困りますから』

『歳は関係ないわ。もしかしたら、アーサーが私のことを押し倒して来たら、その時はごめんなさいね?』

『そんなことあるわけがありません。それが起こる可能性があるのなら、すでに私は押し倒されています』

『あら、女としての魅力が足りないのではなくて?』

『あなたがご自身に魅力があるとうぬぼれているのは結構ですが、アーサーさまからそんなことを口にされたことは全くありませんから、ご心配なさらず』


 何だか仲が悪い会話をしているなぁ。


 でもメッセージのやり取りをするくらいなのだから、仲は悪くはないのだろう。そう思っておこう。


 ☆


 グリーテンの家に向かう日の朝、俺はバッチリと準備をして部屋で待機していた。


「アーサーさま、やはりアーサーさまの御身に危険が及ぶかもしれませんのでやめておきましょう」

「そんなこと起きないって。起きてたら屋敷で起きてるよ」

「お屋敷でなら、監視の目がありましたが、グリーテンさまのお家はそうではありません」

「でもリアルタイムマップがあるよ?」

「あのお方は腐っても七聖法。惑わす魔法をかけてくるかもしれません」


 いや、どれだけグリーテンのことを信用していないんだよ。


 それに俺が作った魔道具が誰かに邪魔されるわけがないが、まあそんなことを言っても信じてくれるわけがないか。


「おはよう! アーサー!」


 急に俺の前に何かが現れたと思ったら、顔面に柔らかさを伴って俺の視界が奪われた。


 もちろん、それをする人はグリーテンしかいないし、転移してくる前に転移してくると分かっていた。


「一日しか経っていないのに久しぶりに感じるわ!」

「アーサーさまをお放しください」

「いいじゃない、これくらい」

「いいわけがありません」


 グリーテンのお胸に収まっているから見えないが、ベラがグリーテンから俺をひき放そうとしている。


 本当にグリーテンのこのお胸さまにずっと収まっていたい気持ちではあるが、ベラのお胸さまと甲乙つけがたい。


 まあこの状況で俺がどうにかできるわけでもないから大人しくしているか。


「とにかく、アーサーは連れていくわね。大丈夫、ちゃんと傷はつけないから」

「当たり前です」

「それじゃあ行くわ」


 不服そうなベラの表情がチラリと見えた瞬間に、見覚えのない部屋の中になっていた。


「いらっしゃい、アーサー」

「お邪魔します」

「少し散らかっているけど気にしないでね」

「散らかっている……」


 少し散らかっていると言われたが、どう考えても少し散らかっているという域を超えている。


 本は散らばっているし、服は散らかしているし、紙も散らかっている。


 グリーテンの部屋なら、何となく納得してしまう。普段の印象なら片付けている気がするが、前世ではこういう人が片付けができないとギャップをつけてくるから納得してしまった。


「片付けようか?」

「いいわよ、これくらいの方が落ち着くから」


 落ち着くって、これのどこが落ち着くのか俺には理解できないが、グリーテンがそう言うなら仕方がない。


 というか下着とか見えているから目のやり場に困るんですけど。


「さ、こっちよ」

「うん」


 部屋から出て廊下を見ると、この場所がランスロットの屋敷並みに大きいことが分かった。


 まあそりゃ特別大公なら公爵家よりもいい家を持っていても不思議ではない。


 だがそれにしてはこの屋敷に人の気配が全くしないのはどうしてだろうか。


「この屋敷って、どれくらいの人が住んでいるの?」

「私とマリア以外は住んでいないわよ」

「えっ」

「特別大公になった時に、王都にあるこの家と王都から離れた場所にある領地をもらったのだけれど、私は誰も雇うつもりもなかったからこの家は私とマリアしか住んでいないのよ」

「そうなんだ」

「掃除も魔法でやれば簡単にできるから、使用人を必要としていないわ。だからこの家を持て余しているわけ。まあ外に出ないマリアには、ちょうどいい運動にはなるけれど」


 まあそういう感じがするから納得だ。


「でも、案外魔法や魔道具の研究をするにはいい広さをしているからこの広さで落ち着いているわ」

「グリーテンは、ランスロットの屋敷にたくさんいる気がするけど、この家にはあまり帰らないの?」

「あまり帰らないわ。あっちの方がアーサーもいるから落ち着くもの」

「それはありがとう。……ということはここにはそのマリアさんがいつも一人でいるってこと?」

「そうなるわね。でも……マリアは少し自分の世界に入りやすい子だし、一人の方が落ち着くみたいだから」


 えっ、俺はそんな人と会おうとしているのか? 本当に大丈夫か?


 つまりは人間が苦手とか、嫌いとか、そういう系統の人じゃないのか? そういう人が初対面で大丈夫なのか不安だ。


「その人、僕が会っても大丈夫?」

「大丈夫よ。だってマリアが会いたいって言っているんだから」


 それもそうか。会いたいと言いながら会えないとか言われたら俺はどうしたらいいのか分からないぞ。


「ここがマリアの部屋よ」


 ある部屋の前で止まり、部屋の中からは物音が聞こえてきている。


「マリア、アーサーを連れて来たわよ」


 そう言いながら部屋の中に入るグリーテン。


 返事を聞かなくていいのかと思いながらグリーテンに続いて部屋の中に入るが、何だか驚くことがない惨状だった。


 自分の世界に入りやすいと聞いた時点で、こういう風に色々なもので溢れかえっている部屋だと少しだけ想像していたからな。


 グリーテンよりも酷いぞ。二十一聖人はみんなこういう感じなのか心配になってきた。


「マリア、聞いているの?」


 こちらを背にして机に向かってブツブツと言っているマリアという長い黒髪をボサボサにしている女性にグリーテンが話しかけても一切反応していない。


「マリア」

「ひひゃぁぁぁぁぁぁ!?」


 グリーテンさんがマリアさんの肩を叩いて呼びかけると、鼓膜が破れるのかと思うくらいの声で叫んだマリアさん。


「マリア、アーサーを連れて来たわ」

「……まだその日じゃないはず」


 マリアさんがこちらを振り返ると眼鏡をかけ、目の下にひどいクマを作っているのが見えた。


「もう一日経っているわよ。ほら、会いたいって言っていたんだから早くしなさい」

「……分かった」


 グリーテンに促され、椅子から立ち上がったマリアさんはこちらを見てくる。


「初めまして。私はマリア。七聖具として数えられている」

「初めまして、アーサー・ランスロットです」

「……あなたが、そうなの」

「はい?」

「あなたが、この魔道具を作ったの?」


 マリアさんが示してきたのは俺が前にグリーテンにあげた腕輪型の魔道具だった。


 確か効果は魔力に応じて重くなるという効果だったはず。ただ単に筋トレみたいにできないかと思って作った意味のない魔道具だ。


「はい、そうです」

「なるほど……」


 俺が作ったことが分かって、何が分かったのだろうか。


「私は、あまり人と関わることが好きではないから会話で前置きや前振りをすることは得意ではない。だからこの感情を素直にあなたにぶつけることにする」

「はい、どうぞ」


 何を言われるのか少しだけドキドキしながら聞くことにする。


「あなた、私を飼って」

「はい?」

「聞こえなかった? 私をあなたの所有物にして」


 ……まだ、私の物になりなさいなら分かる。でも所有物にして、飼っては意味が分からない。どういう思考回路をしたらそういうことになるのか一切分からない。


 でもまあ……七聖具というくらいだから魔道具も作れるっぽいし、魔道具を作れるということはかなりプラスになるはずだ。


 昨日考えていた魔道具を作れる人が、七聖具なら文句はない。


「いいですよ、今日から僕が飼い主です」

「えっ」

「ありがとう」

「えっ」


 驚いているグリーテンをよそに、俺に初めてのペットができました。

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