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全能で楽しく公爵家!  作者: 二十口山椒
王都でも渦中

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79/112

79:バタフライエフェクト。

 グリーテンと共に馬車が宿に戻り、念のために俺が泊まっている部屋にグリーテンが転移してくれた。


「おかえりなさいませ、アーサーさま」

「ただいま、ベラ」


 部屋の中にはベラがおり、それを見ただけでどこにいても俺は帰ってきたと感じることができた。


「今回の会見、いかがでしたか?」

「上手くいったよ。会見の様子を見る?」

「はい、ぜひ見てみたいです」


 シルヴィー姉さんとルーシー姉さんに送っていた動画をベラにメッセージアプリで送る。


 それを受け取ったベラは送られたのを確認しただけで見ようとはしなかった。


 今はメイドの仕事をしているから公私は混同しないのは素晴らしいことだ。でも俺としては俺の勇姿、勇姿かどうかは分からないがそれを見てほしいと思っている。


「ねぇ、今見てくれないの?」

「……分かりました」


 俺のお願いに頷いてくれたベラが、椅子に座って美しい姿勢で動画を再生しようとする。


 そんなベラに俺は横から覗き込んで見ようとしたが、ベラが俺を持ち上げて膝の上においたことでいつもの感じで一緒に見ることになった。


 俺がヨルになって会見をしている様子が、テロップをつけられカットもされている状態で流れている。これを一瞬でできるほぼ全能はやはりすごいと言える。


 ただ攻撃系の手段がすべてできるというわけではなく、パソコンを使わないとできないことも脳内で処理できるということは本当にヤバイと思う。


 元の世界であろうとも、暴力ではなく技術で頂点に立つことができるということは、この世界で娯楽が普及させることができるということだ。


「本当におつかれさまでした、アーサーさま」


 動画を見終えたベラが俺に労いの言葉を送ってくれた。


「これくらいなら平気だよ」

「……七天教会、どうにかしないといけませんね」

「うん、そうだね」


 七天教会、本当にどうにかしないといけないだろうが、七天教会はブリテン王国の建国時から根強く存在しているからすぐにどうにかできるわけではなさそうだ。


 まぁ、そこら辺はお父上様たちが何とかしてくれるだろうからどうにもならない時にほぼ全能を使おう。


 ☆


 会見を無事に終わらせたことで、いつにも増してご馳走が用意され、俺は早めに眠りについた。


 肉体的には疲れていなかったのだが、精神的には疲れていたのか、ぐっすりと眠りにつくことができた。前世では考えられないくらいの時間に眠った。


 だが、誰もが眠りについている真夜中にパッと目が覚めた。


 隣を見るとベラが俺と同じベッドで俺を抱き枕にしてぐっすりと眠っており、こんなベラを見るのは初めてだと思った。


 いつも俺よりも遅く寝て、俺よりも早く起きているし、俺は子供ということで夜に起きることはまずない。


 それよりもだ、どうして目が覚めたのかすぐに分かった。


 俺のほぼ全能が、これから起こるであろう大災害級のキッカケ、蝶の羽ばたきが起こったと知らせてくれた。


 七天教会の奴らが聖堂の地下で何かをやっているのが見える。


 蝶の羽ばたきが嵐を呼ばれても面倒だ。俺はこの世界で娯楽を普及させてダラダラするのが目的なのだから、こういうことをやられたらできなくなる。


「……あれ」


 そっとベラの腕から抜けようとしても、全く動くことがなかった。


 ベラから全く力を感じないのに、ベラから離れることが叶わないという矛盾が生じている。


 もしかしたら俺が抜け出した瞬間にベラが起きる可能性があるから、俺と全く同じ人形を作り出して俺と入れ替われば大丈夫か……?


 いや、ベラにはもうそういうことはナシだ。大切なベラとの約束を破るわけにはいかない。


「ベラ」

「はい」


 意を決して俺が声をかけると、起きていたかのようにすっと目を開けて返事をしたベラ。


「少し出かけたいんだけど……」

「こんな真夜中にですか?」

「ちょっと気になることがあって」

「……かしこまりました」


 俺のことを解放してくれたベラは、渋々納得してくれた感じだった。


 寝間着から一瞬でメイド服に着替えたベラに、どういうことだと目を疑った。こっそりとメイド服に着替えているベラを見ようとしたのに。


 ほぼ全能を使えば容易いことだろうが、それを使ったらロマンがなくなってしまうのだ。


 俺も外行き用の服に着替え、俺とベラ専用の体全体を隠せる黒い外套を用意した。


「はい、これはベラの」

「この外套はどういうものですか?」

「これは偽装と魔法完全無効、物理攻撃無効の効果がついた外套だよ。今から行くところに必要だから」

「……どこに向かわれるおつもりですか?」

「七天教会の聖堂」

「ご冗談ですか?」

「そんなことをこんな真夜中に起きて言うと思う?」

「……アルノさまにお伝えします」

「それは待って」


 ベラが部屋から出て行こうとしたから、ベラに抱き着いて引き留めた。


 さすがにお父上様に言われたら七天教会に乗り込むことができないし、何ならどうして知ったのかを聞かれてしまう。


 そこら辺を何となく察してくれるベラに知られても何ともないが、それ以外の人ならどうなるか分からない。


「危険はないから、二人で行こ?」

「ご冗談を。危険しかありません」

「だからこの外套があるんだよ」

「いいえ、ダメです。アーサーさまを危険な目に合わせることはできません」


 そうだよね、普通に考えて仕えている家の次期当主に危険な目に合わせるわけがないよね。


 しかも前とは違って、今回は危険な場所だと分かり切っている。この外套があったとしても、納得してくれない。


「ベラ、お願い」


 今の俺ができることは、真剣な眼差しでこの言葉をかけるしかない。


 ほぼ全能の力を使ってこの場から動かずに止めればいいが、少しだけ行きたいという気持ちがあるからな。


 でもできる限りほぼ全能を使いたくはないからと思っているけど……。


「……決して、危険がないと仰られるのなら、私だけが同行します」

「ないよ。僕がベラを危険な目に合わせるわけがないから」

「かしこまりました。では向かいましょう」


 あれ、何だか簡単に許してくれたな。まあいいか。


「『リアルタイムマップ』で向かおう。あれならすぐに行ける」

「どういうことですか? あれは今起こっている状況を視認できるものではないのですか?」


 あぁ、そうか。あの時にリアルタイムマップのもう一つの能力を言ってなかったのか。


「このリアルタイムマップは指定した場所にこの場から一瞬で移動することができるんだよ」

「……そんなことが可能なのですか? この魔道具は。危険ですね」


 ベラからしてみればそうだよね。俺が一瞬でどこかに行っちゃうんだから。


「や、屋敷を抜け出す時には使わないから。ほら、ベラと約束しているからこうして起こしているんだよ?」

「……分かりました、そこは信用します」

「ありがとう」


 ふぅ、思わぬ地雷を踏み抜きそうだった。


「だからこの魔道具で七天教会の聖堂に向かおう」

「待ってください、この魔道具はここにあるのですよね?」

「そうだよ」

「なら帰れなくないですか?」


 さすがベラ、気づくね。気付かなかったらベラと真夜中デートをするつもりだったけど。


「それはこの魔道具を使えばいいよ」


 瞬時に腕時計型の魔道具を二つ作り出して、一つをベラに渡した。


「アーサーさまはいくつ魔道具をお作りになられたら、気がお済になられるのですか?」

「そうかな?」


 確かに。王都に来てからかなり魔道具を作っているが、それだけ魔道具が必要な場面になっているということだな。


 王都ヤバいな。早くランスロット領に戻りたい。婚約者とかクレアさん以外忘れたい。姉さんたちに会いたい。


「この魔道具、『標至(ひょうし)』は横にある突起を回して移動する場所を決めることができるよ」

「どこでも移動できるのですか?」

「うん。でも座標を知らないと移動できないよ」

「座標とは何ですか?」


 あぁ、そうか。この世界には座標という概念ができていないのか。


「世界の場所を数値化したものだと思えばいいよ」

「なるほど。それでその座標はどう分かるのですか?」

「それはリアルタイムマップで分かるよ」


 リアルタイムマップに触れ、この場所に近づいて俺が立っている場所を出すと、三つの座標が示されていた。


「この数字を標至で設定しておけば、いつでも戻ってこれるよ。それに設定できる数字はいくつでもできるから設定したい場所を調べておくのもいいよ」

「これは決まった座標にしか飛ぶことはできないのですか?」

「座標を設定しないといけないからそうだね」

「どこにいてもアーサーさまの元へと参上することはできないのですね」

「……まあ、そうだね」


 このリアルタイムマップがあるじゃないかと思ったが、ベラが思っていることはどこにいても俺の元へ瞬時に移動できないのかと言っているのか。


「そういう魔道具は作ることはできるよ」

「なら今すぐにお願いします。何が起こるのか分かりませんので行く前に持っておきたいです」


 えっ、俺今日でどれくらい魔道具を作ってんだ? でもベラに納得してもらうためなら仕方がないか。


「魔道具の形はどうする?」

「指輪型でお願いします」


 変身する『狭間の指輪』を持っているはずだから、他の形じゃなくてもいいのだろうか。まあ指輪の方が持ち運びは便利か。


 どこにいても、俺の場所へとすぐに移動することができる指輪を作った。


「はい、ベラ」

「アーサーさま、一つわがままをお許しください」

「なに?」

「アーサーさまに、はめていただきたいです」


 ベラが出してきた指は、左手の薬指だった。


 えっ、このメイドここまでわがままを言ってきます? そもそもこれは逆プロポーズということ? いやいや、指輪は俺が出したぞ。


 まあでもこんなかわいいわがままならいくらでも聞いてあげようじゃないか。


「いいよ」

「ありがとうございます」


 差し出してきたベラの左手を片手で添え、指輪をベラの左手薬指に通した。


「……ありがとうございます、これで、一生生きていられます」

「……大袈裟だよ」


 なんだかベラの言い方だとこれで離れていいと言っている気がする。

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