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全能で楽しく公爵家!  作者: 二十口山椒
王都でも渦中

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77/112

77:本番のサイン会。

 会見が無事に終わり、会見が終わってもまだ俺にはすることが残っている。


「これより、『叛逆の英雄』七巻の先行配付並びにサイン会を行います」


 もう会見が終わりの空気を出していた人たちだが、イザベルさんの言葉で今日何度目か分からないざわつきが出てきた。


 サイン会というものを分かっていないようだが、『叛逆の英雄』七巻という言葉だけで目を輝かせている人もいた。


「こちらにお並びください」


 天空商会の人が持ってきてくれた会場にいる人たち用の七巻が俺の後ろに置かれ、イザベルさんは俺の前に会場の人たちを誘導する。


 会場の人たちは促されるまま一列に並び、俺はペンと七巻を準備させた。


「あ、あの、サイン会とは……?」


 困惑しながらも一番最初に並んだ女性に、恐る恐るそう尋ねられた。


「これは試しですが、こういうものですね」


 かなり七巻を用意してあるから、ジャックと幼馴染のマルグリットが向かい合って抱き合っている姿をかいた。


「こういう風にかいて、あなたのお名前や自分の名前をかくのがサインですね。どういう絵が――」

「それがいいです! それにしてください!」

「試しにかいたものですが、これでいいんですか?」

「はい! もうそれ以上の物はありませんから!」

「それではお名前を聞いてもよろしいですか?」


 女性の名前を聞いて、このサインつき叛逆の英雄七巻を女性に渡した。


「あの! お金は……?」

「お金は結構です。これからも応援お願いします」

「は、はい! もうずっと応援していますから! 頑張ってください!」

「そう言っていただけると嬉しいです、ありがとうございます。握手でもしておきますか?」

「あ、握手!? そ、そんな、ヨルさまの手を触れるなんて……!」


 いや、どういうリアクション? 握手会じゃないから別にやらなくてもいいんだが、思い浮かんだからふと口にしただけなのに、こんなリアクションをしてもらえるとは思ってもみなかった。


「イヤならいいんですが……」

「イヤではありません! ぜひお願いします!」


 俺が手を差し出すと恐る恐る両手を出してくる女性は、俺の手をさわさわと握ってきた。そして数秒後俺の手を放した。


「……もう、一生手を洗いません」

「いや、さすがに洗ってください」

「この手はもうお金よりも価値があります!」


 何だか前世で気持ち悪いことを言っているような人みたいになっているが、どの世界でも人間はこういう思考に至る人はいるんだな。


「時間がおしているので」

「あっ、すみません! 応援しています!」


 イザベルさんがそう言ったことで女性は深く俺に頭を下げてその場から立ち去った。


 後ろにいた人たちは耳を澄ませて聞いていたからか要領が分かったようで、どんな絵とか名前を言い、握手をするということがスムーズに行われた。


 初めてやるからこうなのかと思ったが、まあほぼ全能の俺が分からないことがないから丁寧にサイン会を進める。


 というかマンガをかいたらこんなことになるとは思わなかったな。ただ娯楽を広げるためにやろうと思っていたのに。でもこれを機に娯楽は広がるはずだ。


 そう考えながら次に俺の前に来た人は、隠しているつもりなのだろうが俺には丸わかりの殺気を秘めた男性だった。


「……お願いします」

「はい、どのような――」


 俺が話している途中で魔法で作り出した光の剣で俺に斬りかかってくる男性。


 一気に会場中の警戒態勢が上がったが、誰一人として俺の元へは来ることはなかった。


 襲い掛かってくることは想定していたし、こういうサイン会は絶好の襲撃ポイントだ。


 だからこそ、ここでヨルの実力を示すのは絶好の機会だと考えて、こういうことがあっても来ないようにお願いした。


 何かあればすぐに駆け付けれるようにしているが、それは俺に限って言えば不要なことだ。


「危ないですね」

「ッ!?」


 サインしていたペンで光の剣を受け止めたことで、男は驚いた顔をしている。


 魔力で強化すればこんなことは容易いし、こういう場ではパフォーマンスが重要だ。こういう風に魔力で強化したペンで光の剣を破壊するみたいに。


 光の剣を破壊された男は距離を取ってまた魔法で剣を作り出そうとしているが、その前に『叛逆の英雄』七巻を片手に、ペンをもう片手に持って立ち上がる。


 片手に持っているペンを一瞬で魔道具に変えた瞬間、どこからかグリーテンらしき歓喜の声が聞こえてきたが気のせいではないのだろう。


 魔道具と化したペンを使い、七巻のサインをしていた部分にジャックの全身を一秒足らずでかき終えると、ジャックの絵が光を放ち、光が会場中を包み込む。


「うそ……」

「まさか……」


 光が収まった光景を見た会場の人たちから戸惑いの声が口々に出てきている。


 それもそのはずだ、俺の目の前には今ではマンガだけの存在である『叛逆の英雄』の主人公であるジャックがいるのだから。


 ただ完全に再現しているわけではなく、人格はない。再現しようと思えば再現可能だがな。


 この場で神に叛逆したジャックが出てくれば、自ずと出てくる奴らは出てくる。


「神に背きし愚か者が!」

「殺してやる!」

「神に代わって神罰を下してやる!」


 七天教会の人間がジャックのことを許せれるわけがないよな。


 立ち上がって魔法で武器を作り出す七天教会の人間たち。この会場には武器の持ち込みは禁止になっているからこういう武器しか使えない彼ら。


 ていうか、こんな反応をするとか瓜二つの人がいたら殺しているだろ、こいつら。


「頼む」


 俺の言葉に頷いて剣を構えるジャック。


 襲い掛かってくる七天教会の人間に対して、ジャックが剣を一振りしただけで崩れ落ちた。


「まさか……『空衝(くうしょう)』なのか……!?」


 ピノンさんがジャックが放った技を見て感極まっているのか驚いているのか分からない声音をしていた。


 この人も何だかグリーテンさんみたいに、あるベクトルで狂っている感じがするんだよなぁ。


「ぐぅっ……! 神に背きし背教者め……!」


 一人の七天教会の男が、意識を刈り取れなかったが動けずに這いつくばりながら俺とジャックを睨みながら恨み言を言っている。


「貴様らのせいでこの世界は不浄に満ちたのだ! 神に従っていればこの世界には幸せで満ちていたはずだ!」


 何やら頭の可笑しいことを言っているな。


「七天教会は『叛逆の英雄』を認めているんですか? じゃないとそんな発言をしませんよね?」


 七天教会の人間としては頭の可笑しいことを言っている。無意識だったのか、自身の発言に驚いている様子だった。


「あなた方がどう思おうが勝手ですが、マンガを読んでくれる人たちの邪魔だけはしないでください」

「……ッ! 貴様らには必ず天罰がくだるぞ……!」


 この俺に神罰やら天罰やらきくのか気になるが、神がもうこちらに干渉してこないことは知っているから試しようがない。


 ジャックによって斬り伏せられたものたちは『探索者ギルド』の人たちによって連れていかれた。


 その活躍したジャックは、俺が解除したことでその場から消えたことに残念がる人たちの声が主にピノンさんから聞こえていた。


 さすがにこういうことは何度もするつもりはない。ジャックもこんなことで顕現するのも嫌だろう。


 会場が落ち着いたことで、サイン会は再開されたが、ジャックが空衝を放っているシーンをかいてくれと言われるのが非常に多かった。


 俺としては問題なかったから色々なバリエーションで、その人だけのサインにし続けた。


「ありがとうございます! 一生応援していますから、頑張ってください!」

「はい、こちらこそありがとうございます」


 前の世界なら一生応援は信用ならないが、この世界ならマジで一生応援していそうだな。


「終わったか……」

「おつかれ、ヨルくん」


 さっきの人が最後であったため、少し伸びをしたところでお父上様にねぎらいの言葉をかけられた。


「いえ、読者のためならこれくらいで疲れはしませんよ」

「それならいいんだ。俺としてもこんなことをしたのは初めてだからいい経験になった」


 これからこういうことが起こる可能性があるから、お父上様にはこの経験を経て頑張ってもらおう。


「あのペンはどういうものですか!?」

「あの魔道具を見せて!」


 興奮しているピノンさんとグリーテンが俺の元に詰め寄ってきた。


「あぁ、これですか」


 この二人が来ることは予想していたから魔道具のペンを手のひらに置きながら説明する。


「これは描いたものを顕現させることができる魔道具『絵界(かいかい)』です」

「それなら自分がかいてもジャックを出せるのですか!?」

「この絵界を使うための条件は二つ。絵が上手いことと、かく対象について深く理解しているかどうかです。絵が上手くても対象を理解していなければ中身が伴いませんし、深く理解していたとしても絵が下手ならそのまま顕現します」

「絵を上手くなればジャックを出せるということですね!?」

「そうなりますね」


 本気で頑張ろうとしているピノンさんに絵界を渡してもいいが、その前に見せる人がいる。


「あぁ……素敵だわ……」


 俺の手に鼻息がかかるくらいに顔を近づけて、うっとりとした顔で見ているグリーテン。


「ねぇ、ヨル。これを私にくれないかしら」

「それは無理ですね。これはピノンさんに渡しますから」

「こ、こんな素晴らしいものをいいのですか!?」


 グリーテンのお願いを断り、ピノンさんに差し出す。


「構いませんよ。これを使えば色々な場面で役に立つと思いますから、使ってください。それには絵を上手くならないといけませんが……」

「このジャック・ピノン! 精一杯頑張らせていただきます! 『叛逆の英雄』のために、そしてヨルさんのお役に立てれるように『探索者ギルド』をさらに拡大していきます!」


 気合十分のピノンさんに魔道具を渡す。


 この魔道具ならいくらでも作れるから俺としてはあまり重要ではないが、ピノンさんたちからすれば重要なものになる。


 一方、断ったグリーテンを見ると俺に期待の眼差しを送って来ていたから、耳元に近づく。


「あとで魔道具をプレゼントしますね」

「そうこなくちゃ」


 グリーテンも手伝ってくれたから、お礼もしないといけないし、他の探索者ギルドの人たちにも、叛逆の英雄関連のグッズをプレゼントしよう。


 こうして無事に終わったのも、彼らのおかげだからな。

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