71:比類なき挑戦者。
スティードさんと決闘することになって、俺とスティードさんは外に出て社交界に来ていた人たちも興味本位でついてくる。
ディンドランさんと全く同じ流れになっているわけだが、今回は相手が挑戦者であると言い放ちすべてをぶつけてくる。
服装はそのままのスティードさんだが、そこそこいい代物である剣と盾を持っている。
そのスタイルは攻と防に優れたガラハッド家が得意とするものなのだろう。このスタイルが一番騎士みたいだ。
ていうかあの剣と盾はガラハッド家が代々受け継いでいるものだろう。何で今ここで、決闘で使うのかがイマイチ理解できない。
スティードさんの今の雰囲気は実戦さながらな感じになっている。
「それでは、準備はよろしいですか?」
今回の決闘はエディさんが審判を務め、俺は何も用意しないまま決闘が始まることになった。
「俺は問題ない」
「はい、大丈夫です」
スティードさんと俺は準備完了の意志を示したことで、エディさんは口を開いた。
「これより、アーサー・ランスロットとスティード・ガラハッドの決闘を始めます」
その言葉でスティードさんは武器を握り直したが、俺はディンドランさんの時と同じように特に構えずに棒立ちしていた。
「始めッ!」
「行くぞ」
合図でスティードさんは実戦さながらの雰囲気を纏いつつ、少しの余裕を見せながら俺に斬りかかってきた。
この代々受け継いできたと言わんばかりの剣を折りたいところだが、そんなことをしたら面倒なことになるのは必至だからやめておく。
ディンドランさんの時と同じように指一つで止めたことで、スティードさんは驚きの表情を見せてくれた。
ここでもまたディンドランさんと同じように勝てばいいのだろう。でもそれだとこの人俺にまた挑んでくるんじゃないのか……?
未だに悩んでいる俺を他所に、スティードさんは俺に何度も剣を振るってくるがすべて指で受け止める。
「先日のパーシヴァル公爵家主催のパーティーで、パーシヴァル家のご令嬢と戦っておられたが、やはりアーサーさまはお強い」
「そんなことがあったのか!? こんな光景が見れたのなら俺も招待されていればよかった。で、どちらが勝ったんだ?」
「もちろんアーサーさまだ。アーサーさまは噂にたがわず、すさまじい才をお持ちだ」
「そこまでなのか……」
ディンドランさんの決闘が広まっているせいで、周りの人たちはかなりざわついている。
まあ、こうして剣を受けてみて、ディンドランさんよりは弱いな。いや、スティードの戦い方が攻防を前提としているから攻撃だけだと強く感じられない。
その情報が加わったとしても、強いのはディンドランさんだな。この国では女性の方が強い人が多いな。
いやそれは俺が女性とばかり出会っているからだな。
「五歳であの強さですか、これはランスロット家も安泰ですな」
「下手したらアンリさまよりもお強いのではないか?」
五歳の俺とすでに成人しているスティードさんとの差は、貴族たちの目からハッキリと分かっているところを見るに、貴族だとしても騎士というわけか。
剣舞として見る分には完成されている美しさというものはあるが、所詮はそれまで。俺くらいの強さがあればスティードさんの剣はお遊びにしか見えない。
「ふぅ……ははっ」
一度距離を取るスティードさんだが、その表情は挑戦者として嬉々として、生き生きとしている感じだった。
この場は貴族がいっぱいいるから、インパクトのある勝敗の付け方がいいだろう。ディンドランさんの時と同じだと単調で、こちらもつまらない。
「ハハッ! すごいぞ! 防御はかなり上手い! 攻撃はダメなのか!?」
「そうかもしれませんね。スティードさんは攻撃されないと本領が発揮できませんか?」
「そんなわけがない! ここからが俺の本気だ!」
その宣言通り、スティードから聖なる魔力が出現して辺りに魔力が広がっていく。俺のところまで来ているその聖なる魔力によって、この場の空気が変わった。
これがガラハッド家の固有魔法『聖域』か。まさか固有魔法まで出しに来るとは思わなかった。
「俺のすべてをぶつける。アーサー・ランスロット!」
ずっとスティードさんの方に視線を向けていたが、先ほどよりもとてつもなく速く、ということではなく、俺の背後に瞬間移動して俺に剣を振るってきた。
聖域と化したこの場は、スティードさんに有利になるようにすべての事象が変化する。と言ったかなりチートみたいな能力だ。
知っているから驚くこともないし、知っていなくてもマジックで驚かされる程度だ。マジシャンという職業を作れればテレビ番組とか面白そうだなぁ。
くだらないことを考えつつ、俺は背後に腕を回してそちらを見ずに剣を防ぐ。
「ッ!? すごい!」
「それはどうも」
驚愕の声を上げつつも俺の背後からすぐにいなくなり、今度は真正面から向かってくるスティードさん。
だが今回はかなりスティードさんの身体能力が上昇されており、俺の身体能力が低くなるような効果が出ている。
もはやこの聖なる魔力が満ちた場所はスティードさんが神になるように世界を上書きしたもう一つの世界。俺じゃない五歳だったらもう目も当てられないだろう。
だがその程度のデバフでは俺の魔法抵抗力には勝てやしないから無意味だ。
「五歳でその強さはとてつもない! 正直最初は少し侮っていたが、それを覆してくれて俺の強さを超える強さを見せてくれた!」
「それはどうも」
嬉しそうに俺のことを絶賛してくるスティードさん。
「こんな圧倒的な強さは、父さんやアルノさん以来だ!」
全力で向かってきているスティードさんの剣を動かずにすべて指で止めている俺に向けて、スティードさんは純粋な気持ちでそう言っている。
今ここでは、圧倒的な差を見せつけながら敗北を味合わせることだけを考える。それだけが俺に今できるスティードさんへの洗礼だ。
「終わらせます」
「ッ! やっとか。俺の魔力が切れるのを待っているかと思ったぞ」
「そんな終わり方では周りが納得しませんよ」
「そうだな」
相手に心の準備をさせて、俺は弱弱しくなっている聖域を吹き飛ばすほどの魔力を周囲に展開する。
純粋な魔力だから周りの人に影響はないが、聖域がなくなったことや俺の魔力が周りにあることは理解しているようだ。
そして『創造』を使って、俺の手に金色に輝いている剣ができ、素人から見ても神々しい輝きを放っている。
少し張り切って作り出したこの剣は、シルヴィー姉さんにあげたアロンダイトほどではないけど、それよりもかなり弱い程度に作った。派手さを重視しているけど、聖剣と呼ばれるくらいには強くしている。
もうこの輝きに周りの人たちは言葉を失って、スティードさんですら目を見開いている。
そんなにこの派手さを気に入っていただいて何より。ということで挑戦してくれたてめぇはここで気を失っておくといい。
「光よ」
剣から放たれた光がスティードさんに降り注ぐと、糸が切れたようにスティードさんは倒れた。
「面白いですねぇ……おっと、失礼。勝者、アーサー・ランスロット」
エディさんが俺の剣を見てそう言っていたが、俺が視線を向けたことで俺の勝利宣言をされたが、周りから歓声は上がらなかった。




