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全能で楽しく公爵家!  作者: 二十口山椒
王都でも渦中

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59/112

59:やべぇ王女。

 俺が勝利したことで会場は湧き、無事に無傷な俺とディンドランさんは惜しみない拍手が送られた。


 貴族がこういうことをしたら下品とか言われるかと思っている時期はあったが、ブリテン王国だからそんなことはなかった。


 自身で足の部分のドレスを破ったディンドラさんは、俺と一緒にパーティーに戻ろうとしたが残念ながらドレスがおしゃんになっているためパーシヴァル家のメイドに引き取られて行った。


「待て! 私はアーサーと一緒にいるんだ! アーサー!」


 悲痛なディンドランさんの叫び声がこちらに向けられるが、普通にドレスを破いた状態でパーティーに参加できるわけがない。


「さすがアルノの息子だな。お前に似て強いな」

「いや、僕には似てないよ。アーサーは僕以上の才能の持ち主だ」


 そう会話しながらお父上様とジュストさんがこちらに来た。


「アーサーは……綺麗なままだな」

「全く、ディンにもこういうところを見習ってほしいものだ。貴族とは常に美しく、強さを示さなければならない」


 貴族というものは大変厄介なものらしい。そんなことができるのは限られてくるだろうに。


 だからこそ、ディンドランさんはそうなるために鍛えているのだろう。そういう生き方は嫌いじゃないし、一生懸命している人に自分の体を大切にしろというのは失礼だ。


「さて、これでディンは納得したからアーサーと婚約することになるな。いいな? アルノ」

「あぁ、アーサーもディンドランもその気みたいだからね。むしろ歓迎だよ」

「よし! あのバカのせいで一時はどうなるかと思ったが、アーサーが強くて助かった!」


 この人、ディンドランさんよりもこの婚約が嬉しそうなんだが……もしかして俺とディンドランさんが婚約するから、お父上様と家族になれて嬉しいとか思っているのか? 想像通りだな。


 ということはゾーイさんもお母上様と家族になれて嬉しいとか思っているのか……? そういう気持ちにならないからよく分からないな。


「アーサー、娘のことをよろしく頼む。ディンはあんな感じで戦うことが好きで、強くなることも好きな女らしくない娘だが、いい子だ」

「はい、ディンドランさんを満足させれるよう、幸せにできるように頑張ります」

「……アルノ、アーサーは本当に五歳か?」

「たぶん、五歳だろうね」


 こうやってお父上様の前で言うのは少し恥ずかしい気がするが、こうして婚約者になった以上幸せにする。


「これで終われば俺としてもアーサーとしてもよかったんだろうが……まだ一番厄介なのが残っているな」

「ギネヴィアさまのことですか?」

「あぁ、聞いていたか? あの王女に目を付けられるとは災難だな」

「聞いたのはこの社交界で、ですけどね」

「……アルノ。言ってなかったのか?」

「アーサーなら大丈夫だと思ってね」

「いや、お前のそういうところはやめた方がいいって言ったよな? この相手なら大丈夫だろうと思ったら何も言わないの、昔からだぞ」

「そうだったかな?」


 えっ? これ癖だったの!? しかも分かっているのに話さないとかとんでもない大罪だろ! とぼけているような表情をしていても腹しか立たねぇよぉ……!


 今までどれだけ俺に言わないでいたのか思い出してみろよこいつ……!


「はぁ、いいかアーサー? こいつは強いし頼りになるがそれを信用してはいけない。こいつとエリオットのバカのせいで俺が痛い目にあったのは悪い思い出だ。だから怪しいと思ったらすぐに聞け。じゃないと今みたいになるぞ」

「お父さん、隠していることまだある!?」


 ジュストさんの骨身にしみた言葉を聞いてすぐにお父上様に聞いた。


「いや……特にはないよ」

「……これ、信用できますか?」

「一応信用していいと思うぞ。だがこうして注意しても次もやってくるからな。スザンヌ辺りに聞いておけば問題ないとは思うが」


 そういう時はお母上様に聞けばいいのか。いいこと聞いた。


「分かりました。あと、ギネヴィアさまに目を付けられることがどうして災難なのですか?」

「それはだな――」

「わたくしがどうなされましたか?」


 ジュストさんが俺の問いに答えてくれようとした時に、横から声がかけられた。しかもその声は透き通る声で、とても嫌な予感しかしなかった。


 声の方を見ると、その一挙一動にロイヤリティを感じつつも、自然と頭を下げたくなる雰囲気を持っている生まれつきの王族と言える、長いゴールデンブロンドの髪をハーフアップにしている俺と同じくらいの女の子だった。


 お父上様もジュストさんも頭を下げたから、俺も一応頭を下げておいた。


「頭を上げてください。それから、先ほどの戦いは見事でしたよ、アーサー・ランスロット」

「ありがとうございます。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


 この人の名前を聞かなくても、お父上様たちの態度からこの人がギネヴィアさまだって分かっている。


「わたくしはブリテン王国の第二王子、ギネヴィア・ペンドラゴンですわ。あのディンドランに打ち勝つとはさすがですわ」

「ありがとうございます」


 そんなことで褒められていたら、シルヴィー姉さんとルーシー姉さんはどうなるんだよ。


 いやこれはディンドランさんに失礼か。でもあれくらいで強さとして認められているのはどうかと思った。ま、俺から言わせてみれば誰でも一緒くらいだけどな。


「少しアーサーと二人でお話がしたいですわ」

「では、あちらのデッキにどうぞ」


 ギネヴィアさまがジュストさんにそう言って、俺とギネヴィアさまはデッキに向かった。


 その際にお父上様に無言の助けてオーラを目で放ったけど、頑張れというオーラしか感じ取れなかった。


 もう、見るからにメンドウクサイ相手だということは理解している。ジュストさんが災難だと言っている理由が一目見て理解できた。


「アーサー、単刀直入に言いますわ。わたくしと婚約してください」


 デッキに移動すると早々にそう言ってきたギネヴィアさま。


「えっと……まず、僕とギネヴィアさまは初めましてですよね?」

「はい、その通りですわ。それがなにか?」

「どうして僕と婚約したいと仰られておられるのですか? 最初に僕の婚約が白紙になった時も、僕と婚約したいと仰られていたようですが……」


 それは本当にどうしてなんだと思っているところだ。


「わたくし、勘を外したことないのですわ」

「はぁ……」

「アーサーがわたくしに相応しいと感じましたから、アーサーと婚約したいと言い出したまでですわ」

「今、僕と会ってその気持ちは変わりませんか?」

「えぇ。アーサーを一目見た瞬間に確信しましたわ。最高のお人だと」


 あ~、こいつが喋っているのを聞いていると違う意味で聞こえてくる。


 こいつも、ノエルさんと同じような部類の人間だ。この世の条理から外れた位置に立っている生物。


 まあでもノエルさんとこいつを比べるのは失礼だ。


 ノエルさんは面白いものを見つけて楽しむのに対して、こいつは面白い面白くない関係なく楽しませないと殺すぞ、みたいな感じがしてならない。


「それで、どうなされますか?」


 選択肢があるようでないような雰囲気をしてくるんだが、こいつ。


「僕ではギネヴィアさまを満足させることができないと思うので、申し訳ございません」


 でも、この王女が俺と婚約したいと言っても周りが説得しているみたいだから俺が断っても問題ないだろう。


 てかノエルさんなら全く問題ないけどこいつでは話にならない。まだ地獄に行った方がマシだろ。


「どうしてですか? わたくしは絶世の美女ですし、何より王女という地位にいます。こんなわたくしが提案しているのですから、アーサーは何も気にしなくていいですわ」


 いやそういうことじゃねぇよ。俺が良くねぇんだよ。


 これじゃあいつまで経っても平行線をたどりそうだな……それでも俺は何としてでもこいつから逃げたいと思っている。


「いやいや、そういうわけには」

「いえいえ、遠慮などしなくていいですわ」


 だがこいつは逃がす気はないらしい。


 こいつは何としてでも俺というおもちゃを手に入れようとしているんだな。


「では、ここは勝負事で決めませんか? ギネヴィアさまが勝てば、僕は喜んで婚約しましょう。僕が勝てば僕のことは諦めてください」


 決まりそうにないし、こいつは粘ってくるだろうから、全能を使って退けることにした。


「わたくし、戦いは全くできませんわ」

「戦いではありません。そうですね……コイントスはどうでしょうか?」

「コイントス。いいのですか? わたくし、そういうゲームは得意ですわよ」

「僕は構いませんよ」


 俺の全能は人それぞれの運の良さを見ることができるけど、こいつは運がかなりいい。


 だから運ゲーが得意なのは本当なのだろう。


 だが俺は能力を隠す以外のことならすべて勝つのだから関係はない。ノエルさんの時と一緒だな。


「ここに金貨があります。僕がコイントスをしますね。それとも誰か呼んできましょうか?」

「構いませんわ。ですがわたくしが先に表か裏を言いますわ」

「わかりました。では行きます」


 懐から取ったかのように見せた創造した金貨を手に持ち、コイントスを行った。


「どちらですか?」

「裏で」


 おぉ、すごい。透視で見えているけど本当に裏だ。


 でも全能で裏と表を変えちゃうよーん。


「では僕が表で。……表ですね」

「なっ……!?」


 俺が表が上を向いている金貨を公開すると、ギネヴィアさまはひどく驚いた表情をした。


「そ、そんな、わたくしが……ゲームで負けるなんて……」


 えっ、そんな人生で一番ショックを受けたみたいなことだったか?


「な、納得いきませんわ! 十本勝負にしましょう!」

「あー、はい。僕が一度でも外れれば僕の敗けで構いませんよ」

「……そんなことをすれば、わたくしは勝ちますわよ。ふふっ、それならばわたくしの婚約者になりたいと素直に言えばいいじゃありませんか」

「十本すべて、僕が勝ちますから」


 普通なら十本やれば一本くらいは絶対に勝てるだろう。そう思っているのはギネヴィアさまもで、俺がそれを提示してきたものだから婚約したいと勘違いしているみたいだ。


 だがそうして圧倒的な敗北を与えた方が諦めてくれるだろうと思った。後でごねられるのもメンドウだからな。


「そんな……」

「すべて、僕の勝ちですね」


 九回行い、俺が透視で見たらすべてギネヴィアが当たっていたが俺の全能のおかげですべてその反対に変えて俺の完全勝利となった。


「では僕との婚約は諦めて、他の素晴らしいお方と婚約なさってください。それではギネヴィアさま。これで失礼いたします」


 頭を下げてショックを受けているギネヴィアさまをよそにその場から去った。


 ふぅ、これでギネヴィアさまから逃げれたらいいなぁとは思っている。でも勝負事で片が付くのなら容易いけどね。

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