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全能で楽しく公爵家!  作者: 二十口山椒
全能の爆誕

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37/112

37:マンガの売上。

 メルシエさんがマンガを一万冊ほど王都に持って行ってから一ヶ月ほど経過した。


 それまでメルシエさんはスマホを持っていないから、ここに来ないとメルシエさんからメッセージが届くことはない。


 メルシエさんにスマホを持たせるべきかと考えたが、そこまでメルシエさんを信用するに値するかイマイチつかみきれてないから保留にしている。


 信頼できるとは俺は思うが、周りがどう思うかの問題だろうな。お父上様に相談するか。


 メルシエさんが来ない間にもマンガの方をかき続けて、ようやく半分ほどかくことができたくらいで、本当に先は長い。でもそれだけ金の匂いもしてくるものだ。


 俺は今四歳だからそういうお金の話をお父上様と全くしていないが、マンガってどれくらいで売り出されているのだろうか。


 その値段によっては貴族しか買えない、庶民でも買える感じになるが……実際のところ公爵家からマンガを作るために費用は一切出ていない。俺とグリーテンの頑張りで魔力だけの消費になっている。


 だから安く売ろうとすれば安く売ることはできるだろう。そこは娯楽がどれほどの価値があるかで決まってきそうだが、それを考えるのはお父上様とメルシエさんだ。


「ねー、まだ十巻は作れないの~?」

「まだ作っている途中だよ。それにかいたそばから読んだんじゃないの?」

「こうやって本で読みたいのよ!」


 今現在俺のベッドで寝転がって一巻から九巻をベッドに散乱させているルーシー姉さん。


 それ一応俺のベッドなんですけど。ルーシー姉さんの部屋のベッドは同じだけど、俺のベッドがお気に入りと言っていたのは、俺のにおいがあるからだろう。


 よく寝ているところを目撃している。


 それにしても、ルーシー姉さんが一冊を何十回と読み返すことになくらいにハマるとは思わなかった。


 まあベラもバレていないと思っている様子だが何回も読んでいるところを見るに、やっぱり『叛逆の英雄』が好きな人はハマってしまうのだろう。


 今俺は十巻を作っている途中で、表紙と背表紙はもうかき終えている。


「はい、できたよ。十巻」

「ありがとう! アーサー!」


 こうやってせがまれるたびにかくのを中断して次の巻を作っている。だから屋敷でも至る所に置かれているマンガもまだ五巻までだからルーシー姉さんだけかなり先を読んでいる。


 とは言ってもマンガの内容自体はもう俺がかいた原稿で読んでいるのだが。


 今は十巻まで作っているが、何巻まで行くのかと考えたら、四十巻ジャストまで行く予想だ。R18をのけてもだ。


 どれだけ主人公はジャンプ主人公並みに物語を紡いでいるんだと言いたくなるんだが、王都で人気が出ていればその分だけお金儲けになる。


 周りの人が俺を持ち上げるつもりで言ってなければ、大ヒット間違いなしになりそうだが。


「あっ、そう言えばアーサー」

「なに?」

「次のお父さんの誕生日、どうするの?」

「あー、どうしよっか……」


 もうすぐでお父上様の誕生日が迫っていることを思い出す。


 去年のお父上様の誕生日は、その直前に知ったから前世ではお馴染み、肩たたき権を贈呈した。そうしたらかなり嬉しそうにしていたお父上様。


 今年はあらかじめ知っているから何を用意するかを考える時間がある。


「ルーシーお姉ちゃんはどうするの?」

「私は料理でもしてあげようかなって思ってるわよ」

「お姉ちゃん料理できるの?」

「失礼ね。私だってそれくらいできるわよ」


 へぇ、何か意外だ。ルーシー姉さんみたいな人だったら料理なんてしないと思っていた。


 だけど四年間ルーシー姉さんのことを見てきて全く料理をしている素振りなんて見せていなかった。最初からできる人なんて、俺くらいだ。


「もしかして、最近始めたの?」

「ッ!? そ、そんなわけないじゃない! 私は最初から料理はできるわよ!」

「ふーん……」

「何よ、その目は?」

「別に何でもないよ」

「弟のくせに生意気ね!」


 凄い分かりやすいルーシー姉さんが椅子に座っている俺を持ち上げてそのままベッドに倒れ込んでギューッと抱きしめてくる。


「生意気な弟には私の抱き枕になってもらうわ!」

「そんなことをしたらマンガの続きがかけないよ?」

「その状態でかきなさいよ」

「そんな無茶なことを言わないで」


 これはルーシー姉さんが満足するまで放してくれないよなぁ。


 そう思っていると俺の構築した魔法陣が近くに来たことが分かり、それが飛行船だと分かった。


「……あれ? 飛行船の音かな?」

「えっ? あの行き遅れババアが来たの?」


 そんな言い方はやめなさい。もしかしたらあなたの妹になるかもしれないんですよ? 俺は別に気にしないけど、周りはやばそうだ。


 俺の全能があれば、肉体的年齢はいくらでも変えることができる。そうなった場合、周りがどう思うか、というのも問題になってくるが。


 グリーテンは気にしないだろうし、そういう種族だと割りきられている分強い。


 それにしてもメルシエさんが一ヶ月で来るとは思わなかった。お父上様に聞いた時は、世界中を回っているから最短でも半年は来ないのが当たり前らしい。


「珍しいわね。一ヶ月前に来たばかりなのに」

「何かあったのかな?」


 俺に用事があるのならマンガの件くらいしかないが、一ヶ月で一万冊が売れるとは思えない。そもそも大きな王都だったとしても、一万冊も買う人たちがいるのか? と思ってしまう。


 横を向いた姉さんの胸の中に納まりながら一緒にマンガを読んでいると、扉がノックされた。


「どうぞ」


 そう言うと入ってきたのはベラだった。


「失礼します。アーサーさま、お客さまがお見えです」

「もしかしてメルシエさん?」

「はい。至急来てほしいとのことです」

「分かった」


 俺に用事ということは、マンガの件か? 人材の件はまだ早いだろう。


「そういうわけだからルーシーお姉ちゃん、放してくれないかな……?」

「えぇー? すぐに帰って来なさいよ」

「うん!」


 ルーシー姉さんに解放された俺はベラと共に応接間に向かった。


「アーサーさま」

「なに?」

「先ほどルーシーさまがお持ちになられていたマンガは一巻から八巻までではありませんでしたが」

「あー、うん。十巻だったね」

「できるだけ早く私にも見せてください」

「ベラも原稿で読んでるじゃん」

「それとこれとは話が別です」


 別なわけないじゃん。基本的に単行本が出来上がったらまずルーシー姉さんに行き、その次にベラに渡すようになっているくらいにベラも単行本を早く読みたい人だ。


 このままだと公爵家の当主じゃなくてマンガ家になってしまいそうだなと思いながら応接間にたどり着いて中に入る。


「アーサーさま、お久しぶりです」

「まだ一ヶ月しか経ってないですけどね」

「いやぁ、忙しすぎて時間が経つのが早かったんですけど、だいぶ久しぶりだと感じてしまいますね」


 応接間にはやつれているメルシエさんとお父上様が前回と同じ配置にいた。


「僕に、用事があるんですよね? ……というか、大丈夫ですか?」


 俺はお父上様の隣に座ってメルシエさんに問いかけた。


「大丈夫じゃないですよぉ……もう王都で色々な人に話しかけられ続けて一ヶ月間まともに寝れなかったんですよ。逃げるようにここに来たんですけど……大変で……」


 話している途中だというのにメルシエさんは目を閉じて眠り始めた。


「えっ? ……寝た?」

「そのようだね。一ヶ月寝れていないようだから眠らせてあげよう」


 ベラに客間の準備をするように指示したお父上様は、座っているというのにぐっすりと眠ってしまっているメルシエさんの肩を揺らして声をかけた。


「メルシエさん」

「はっ! もうマンガはありません! 誰が作者か答えられません!」


 起きたと思ったら立ち上がってそう叫んだメルシエさんだが、周りに俺とお父上様しかいないと気が付いたら安心してソファーに座った。


「はぁぁぁぁ、寝てました、すみません」

「いや、大丈夫だよ。それよりも少しだけでも仮眠を取ったらどうだろうか。部屋の準備もしてある」

「そうさせてもらいところは山々なんですが、マンガの件をお話しないと寝れませんので」


 今にもまぶたが落ちそうになっているメルシエさんが、ベラが出した紅茶を一気に飲んで話し始める。


「結論から言いますと、一万冊の『叛逆の英雄一巻』は完売しました。それはもう一日で話題になり、二日目には完結しました」

「そんなに早く売れたのですね」

「さすがに僕でも予想外でした」


 二日目で一万冊が売れるとは思わなかったな。


「王都だけでそんなに売れたんですか?」

「はい。……そこからがかなり大変だったんですよ」


 思い出しただけで疲れた顔をしているメルシエさんに何があったのか気になる。


「何があったんですか?」

「まずその噂を聞きつけた王都外の貴族たちが王都にある天空商会の拠点に来て、本はもうないのかと聞いて来たり、『叛逆の英雄』を研究している学者たちや貴族たちがこの本をかいたのは誰かとか聞いて来たりして、本当に大変だったんですよ」


 まさかそこまでの話になっているとは思わなかった。それ以上にメルシエさんに申し訳ないと思った。


「何か、すみません」

「いえいえ、そこはお気になさらないでください! それだけ人気があるということはそれだけお金が動くということですし、僕個人としてもマンガが広まってくれることはいいことですから」


 あー、それなら良かった。これで取引を中止するとか言われたらもうマンガを広めることは諦めていたかもしれない。


「それでですね、アーサーさまには追加でマンガをご用意していただきたいのですが、よろしいですか?」

「はい、大丈夫です。どれくらいですか?」

「そうですね……もうブリテン王国だけじゃなくて他国から買い求める声が上がっているので、とりあえず三十万冊ほどよろしいですか?」

「えっ? ……さ、三十万冊ですか」


 三十万冊か。ブリテン王国だけじゃなくて他国ともなれば、それだけ必要なのか?


「難しそうですか?」

「いえ、時間がかかるだけですから作ります」

「ありがとうございます。……ところで、二巻以降はどうなっていますか? 屋敷の中を歩いていたら見慣れない表紙の『叛逆の英雄』のマンガを持っている使用人さんたちを見たのですが……」

「この屋敷の中には五巻まで置いていますね。量産していなければ十巻まで作っています」

「読ませてください!」

「あっ、はい。後で持っていきますね」

「ここに住んでいればマンガが読み放題ってことですよね……? 食べるものも部屋も最高だから、もうここに住もうかな」


 何だかグリーテンと同じようなことを言っているよこの人。


「そ、そう言えば飛行船の方はどうでしたか? 機能に問題はありませんでしたか?」


 話題を変えるために飛行船の話を出した。


「それはもう完璧です! 今までの飛行船の機能がクソみたいに思えるくらいに今の飛行船の状態は最高です! 魔力消費も少なくて飛行船の速度も良く、嵐の中に突っ込んだとしてもモノともしない機能、もうどれだけお金を払っても払いきれませんよ!」

「それなら良かったです」


 まあこの俺が作り直したのだからそれくらい言われないとおかしい。


「もうこれは僕自身を差し出さないと割に合いませんね。是非とも今すぐに僕と結婚しましょう!」

「メルシエさん、何を言っているんだい?」

「これだけの優良株を見逃すことはアーサーさまに失礼です! アルノさま、今すぐにアーサーさまを頂きます」

「ほ、本当に大丈夫かな……?」


 眠気で頭がおかしくなってテンションもおかしくなっているメルシエさんをベッドに誘導できたのは『叛逆の英雄二巻』のおかげだった。

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