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38. 決戦当日




 様々な準備にあっちこっち行き来している間に、なんとパーティー当日になっていた。


 ルディに「明日はパーティーですね」と言われた時は、思わず変な声を出しちゃったけれど、時間が経つの早すぎじゃないかしら?


 周りのことはルディがほとんどやってくれているからと、気を抜きすぎていたのかもしれない。予定管理もままならないようでは、ほかの令嬢達に舐められてしまう。


 頬を叩き、気持ちを切り替える。



「と言っても、私の出番は夜からなのよねぇ」


 昼のパーティーは辞退した。

 人が多く集まるところは苦手だ。


 業務や信頼に支障が出る場合は仕方なく出席していたけれど、絶対ではないならば参加する必要はない。



 トントンッ。



 扉が控えめにノックされた。

 朝早くから私の部屋に来る物好きは、一人しかいない。


「どうぞ」


 少しして外側からゆっくりと扉が開かれる。

 現れたのは、やはり一人の男だった。


「おはようございます、お嬢様」


 私の執事。

 たった一人の、この家での味方。


「おはよう、ルディ。いつものことだけれど、朝早いわね」


「そろそろ起きられることだと思ったので……。紅茶をご用意いたしました」


「ええ、おかげさまで寝起きよ。いただくわ」


 茶葉の良い香りと砂糖の甘みが寝起きの体に染み渡る。

 …………って、少し年寄り臭かったかしら?


「ルディ。今日の予定は?」


「はい。午前は何もありません。夕刻からは、まずマダムが仕立てあげたドレスを届けに、屋敷へ来ていただけるようです。微調整もその場で行うと仰られていました」


「……そう。ドレスの出来は?」


 そう問いかけると、ルディは満面の笑みを浮かべた。


 返事を聞かなくてもわかる。

 過去最高の出来らしい。本当に、頼りになる協力者だ。



「マダムには後でお礼をしなきゃね」


「あの人ならば、良いドレスを作れたからそれでおあいこだと、笑顔で言いそうなものですが……」


「ダメよ。恩には報いる。それが礼儀だもの」


 言い切ると、苦笑を返された。

 『お嬢様らしいですね』と思っているのでしょう。


「では、俺の方から菓子折りを贈っておきます。それでよろしいですね?」


「ええ、頼んだわ。いつも悪いわね」


「いえいえ、お任せを。ちょうど街に面白そうなお店を見つけたので、遊ぶついでです」


 何それ私も行きたい。


「前言撤回。私も一緒にお菓子選びをするわ」


「ダメですよ。公爵令嬢が勝手に出歩いては危険です」


「危険? 誰に物を言っているの?」


「…………そうだった。この人、異常に強いんだったわ」


 おい聞こえているぞ。

 ったく、本当に失礼な執事よね。


「ですが、あの人達は絶対に反対しますよ?」


 あえて『旦那様』や『奥様』と言わないあたり、心底嫌っているんだなぁ……と、しみじみ思う。


「別に構いやしないわよ。どうせあの人達は私に興味ないでしょうし、ちょっと屋敷を出たくらい気付きやしないわよ」


 侍女がバラさなきゃの話だけれど……まぁ、そこも大丈夫だろうと私は踏んでいる。


「学校帰りの寄り道なら誰も見ていないわ。事前に少し帰りが遅くなると言っておけば、むしろ彼らは喜ぶのではなくて? 私がいないから何でもし放題だと、奮発して高級レストランに行きそうよね」


「あはは、確かに……あの人達ならやりそうです」


 それでもまだルディは首を縦に降らない。

 大方、貴族が街を出歩くと危ないと危惧しているのでしょう。


 主人を守る執事としては正しい判断だけれど、残念ながらそれは杞憂というものだ。


 それでも心配だと言うのであれば…………


「大丈夫だってば。変な奴らに絡まれたら、私が守ってあげるわ」


「逆なんだよなぁ」


「……? 何が?」


「いいえ、何でもありませんよ」


 嘘つけ。

 文句ありますって言いたげな顔をしているくせに。

 この私の目を誤魔化そうだなんて、100年早いわ。



「まだ渋るなんて、本当に強情なのね」


「どこかのご主人様に似ちゃったのかもしれませんね。ほら、ペットは飼い主に似るって言いますし」


「あら、自分のことをペットだと自覚しているのかしら?」


「言葉の綾ですよ。ほら、馬鹿言っていないで、早く朝食を食べてください」


「わかっているわよ。……もうっ、せっかく私からデートのお誘いをしてあげているのに、それを無下にするなんて……世の中の男たちに嫉妬で呪われてしまうわよ?」


「勘弁してください。お嬢様のデートをお断りするのだって、心苦しいのですからね」


 なら、その首を縦に振ればいいのにね。

 たったそれだけの簡単な動作なのに、何を迷う必要があるのかしら。


 ──まぁ、いいわ。

 嘆息し、ベッドから起き上がる。


 私が強引に行くと言えば、ルディは逆らえない。

 ずるいと言われるでしょうけれど、私が街に出歩くためだ。仕方ない、仕方ない。




 でも、その前に────




「はぁ……考えるだけで鬱になりそう……」


 夜は第二王子の誕生パーティー。

 まずはそれを乗り切らないといけない。


 デートだ何だという話は、その後だ。






お久しぶりです。

更新が遅くなってしまい、本当に申し訳ありません。


これからは少しずつ更新して行くので、よろしくお願いいたします!


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