第十六話 ナクシェ村へ(第一日昼)
ナクシェ村は、一見して緑に恵まれた村には見えなかった。
村の建物は日干し煉瓦を重ねて作られており、村を囲むようにして煉瓦塀が用意されている。これは盗賊対策であり砂対策でもあると思う。自警団がいるわけでもなし、狙われたら終わりだろうけど、抑止効果はあるだろうから。
塀の内側まで来ると、村のあちこちに木が生えていて、小さな実がなっているのが見えた。収穫時期まではまだかかりそうだけど、これが皆、食べものになるかと思うと感慨深い。村の中央は広めの池だったが、水は少なく、涸れて見える。雨が降ったらここに溜まるという形だろう。集まってくる人の様子を見れば、池の横に水汲み用の井戸があり、飲料水はこちらから汲み上げている様子なのが分かった。
久々の旅商人一行は歓迎されたが、持参したものが食べものでないことは残念がられた。街から三日もかかるので、この旅程では生鮮品は運べなくても仕方がないのだけど。ヒールダードさんはさっそく持参した商品を並べ、村人の心を掴むと、「宿を確保したらまた後ほど」と早々と切り上げた。
外套を着ていても女性服であることが分かるせいか、村人に「奥様ですか」と尋ねられて目を丸くする。確かに旅商人と女性、それに護衛風の男二人となると、私の役はそうなるのかもしれない。娘さんならともかく奥さんか、と少々複雑ではあった。ヒールダードさんはたくましい風貌の男性だが、あまり好みでは……、いや、失礼。
「旅商人用の宿がありますから、そちらに滞在することになりますがよろしいでしょうか?」
ヒールダードさんがファルに尋ねる。
「ああ」
短く了承したファルの横から私は聞いた。
「そんなのがあるんですか?」
「港街にもありますよ。バザールの裏手などに。ご存じないですか?」
知らなかったー。バザールに来る旅商人って、街の外まで出ているのだとばかり思ってた。確かに毎回それでは疲れてしまうな。
案内された旅商人用の宿というのは、一人部屋ばかりがある小さなものである。たいていの旅商人は一人旅だから、これでいいんだろう。そばで護衛できないことにボルナーが渋ったが、隣の部屋をあてがうということで納得することにしたらしい。心配なら廊下で見張るという手もあるのだし、なんとでもなるだろう。
「宿を確保したら、まず例の絨毯職人の家へ向かう。ラーダ、外套はすぐに脱げるようにしておいてくれ」
ファルが言った。
「え?」
「その赤い服で村中を歩くことで、存在を黒装束へと伝えるんだ。村に入ってからはまだ見てないが、久々の旅商人の情報などすぐに流れるだろう」
「はい」
二日の旅の間に緩んでいた緊張がいっきに戻っていく。
私は、黒装束に対する囮なのである。
ヒールダードさんを先頭に、例の絨毯職人の家へと向かった。
「素晴らしい絨毯を織りあげる職人がお住まいだと伺いまして」
ニコニコと挨拶するヒールダードさんだが、出てきた母親と思われる女性は、困ったような目を向けた。
「娘は、男性の商人とは取引をしたくないと申しておりまして……。遠路はるばるいらしていただいたのにすみませんが」
「そこをなんとかなりませんか!」
「しかし……」
「では」
私は顔を表に示しながら彼女へと口を開く。
「せめて私だけでもお話させていただけませんか?」
「え?あ、あなたも商人なんですか?」
彼女は戸惑った風だった。確かにオマケだとばかり思っていた女性が実は商人だと名乗れば驚くかもしれない。
女性の商人がエラン王国にいないわけではない。ただ、それぞれの地方で商売をしていて、旅商人をするような女性は滅多にいないだけだ。
ヒールダードさんがいぶかしげに私を見やったが、ファルは静かにうなずいてそれを認めた。
□ ◆ □
「言っておくけど、あたし、乱暴とかされてないから」
絨毯職人は、目の大きな、ちょっと痩せ気味の女の子だった。年齢は私と同じくらい。聞いたとおり、全身を隠すような黒い布を身に着けていたけど、私が現れると一番外側の外套を脱いで部屋着姿を見せてくれた。
「絵の図案について聞かれて。そいつらが人に聞く態度じゃなかったからごねてただけよ。ちゃんと話をすればそこそこ紳士だったもん。でも、村の連中はあたしの腕がいいのを拗ねてるんでしょ、あたしが乱暴されたに違いないって陰口叩いて。そっちにうんざりしただけ」
確かに乱暴されたわりには顔も手も傷ひとつない。指先は、織物職人らしく繊細そうでかつ少しごわごわしているものだったけど、毎日毛糸に触っていたらこうなるんだろうか。
「どうせあんたも、誰かに調べるよう頼まれたんでしょ?同情はするけど、きっちり伝えておいてちょうだい。あたしは乱暴なんかされてないってね」
「はい、了解しました」
私は深々とうなずいてみせた。女性にとって、その手の誤解への怒りは冷めやらぬものがあると思う。
「でも、よくここまで再現したわねー。ねえ、ねえ、もっとよく見せて」
どうやら彼女は私の身に着けた赤い服に興味を惹かれ、話をしてくれる気になったらしい。
「あの、その前に、お名前を伺ってもよろしいですか。私はラーダと申します。このような恰好をしておりますが、国家治安維持部隊港湾課の調査官です」
「へえ?じゃあ、軍人?見えないね」
彼女はいくらか警戒を解いた顔でにんまりと笑った。
「あたしは、サマン。いい名前でしょ?」
「芳しい花の名前ですね。美しいです」
うなずくと、彼女は満足げにうなずいた。
「事の始まりは、あたしが五歳ごろのこと」
サマンはそう言って、絨毯の絵姿について話しはじめた。
「この村の池には、地下空洞があるっていう話があるの。
というのは、このあたりって海から少し離れてるけど、井戸の水が幾分しょっぱいのよね。だから、海とつながってるんじゃないかっていう噂があって。
でも、入り口の場所なんか誰も知らないし、あたしも実際、見たことはなかった」
サマンは私の前に大小二つの絵姿を広げた。一枚目は、私もシャハーブから見せられた、小さな壁掛けのような女性像。もう一枚も同じ図案だが、こちらの方はかなり小さい。皿置きくらいにしか使えないと思うし、薄汚れていて詳細はよく分からない。
「ところが五歳ごろのある月の夜。おかしな音楽を聞いたあたしは、池の方に向かった。
小さい子供が夜に出歩くと怒られるけど、村の中だから別に平気でしょって思ってね。音楽は、笛みたいな音だったけど、あたしが池にたどり着いたころにはもう聞こえなくなってた」
「笛……?」
「そうそう。それでね、池のそばには男の子が一人いたのよ。まだ少年ってくらいの雰囲気だったけど、村の子じゃないわ。あたしは、その当時村の全員を知ってたわけじゃなかったけど、それから先も見たことがないから」
「男の子ですね。どんな恰好をしてました?」
「ええと。あまり変わった恰好じゃなかったけど。その辺にいそうな服装だったと思う。でもってね、その子はなんと池の中へと入って行こうとするじゃない」
「池の中?水浴びでもしようとしてたんですか?」
「そんな感じよ。ところがねー、よく分からないんだけど、池の中には洞窟があって、彼はそこに入っていくわけ」
「い、池の中に?」
「そう。残念だけど、再現しろって言われても無理。子供の記憶だし、夜だったし、あたしもよく覚えてないの」
「そうですか」
「とにかく彼が入っちゃったんで、あたしも思わず後を追いかけた。まあ、この辺は子供だったから、無謀だったわけよね。
洞窟の奥には、岩戸があって、彼は何事か唱えて扉を開けたの。おとぎ話で言うところの『開けゴマ』よ。そんな感じで。あたしも後をつけたけど、がっかりした。『開けゴマ』で開く扉なら、中には金銀財宝に宝石の木がわんさかあってもおかしくないのに、そんなものはまったくなくて。ただ暗いだけ。その少年はランプを持ってたらしくて、洞窟の奥の方だけ灯りがついてたけど……。さすがにバレたら気まずいじゃない。怖いから奥まで進むこともできなくなったんで、たまたま手に触れた布みたいなのだけ引っ張って、あたしはそのまま家に帰ったの」
「布、ですか」
「そそ。それで、それがこの小さい方なのよ」
サマンはそう言って、皿置きくらいの小さな絵姿を見せた。
よくよく見なくても薄汚れた絵姿は、古ぼけたものだった。
「糸が、羊の毛じゃないの。もっと違う種類。あたしは未だにこの糸を見たことはないけど、この図案についてはなかなかの再現ができるようになったと思う。
ところが最近、黒装束が現れて、この絵をどこで見たんだって言ってきたのよ」
「答えたんですか?」
「もちろん。だって怖いでしょ、黒ずくめの男たちがいきなり取り囲んできたら。でも人に頼む態度じゃないわってごねてやったけどね。覚えてるとおり、池の中に洞窟があって、そこで見たって言ったのよ」
「え?では、この小さな方は?」
「これは渡さないわ。だって、原案なしで図案を描くと、だんだんズレていっちゃうのよ。それに、こんな薄汚れた布切れが、なんの意味があるの?五歳の子供の宝物を取り上げるなんて、そんな大人げない真似はさすがにしないでしょ」
サマンはそう言って、肩をすくめた。
「これを手に入れた後、何度かあたしは夜に池に行ってみた。でも、洞窟が空いてるところは、その後一度も見たことないわ。母にも友達にも言ったけど、誰も信じてくれなかったもの」
「その、少年が唱えていた言葉というのは、思い出せます?」
「覚えてない。だって、覚えてたら試したはずでしょ?少なくとも『開けゴマ』じゃなかったけど」
どうやら試したことがあるんだろう。そう言って彼女は息を吐いた。
「さてさて、これで知りたいことは全部よね?わざわざ赤い服まで再現してあたしの気を惹いた作戦は成功と思っていいけど。ただで情報をあげるほど、あたしも甘い商人じゃないわ」
「職人ですよね?」
「この場合は一緒。……ねえ、この服さ。綺麗よね。素材は何?毛織物じゃないよね。絹かなー……」
私の身に着けている服の端をつまみ上げながら、彼女は言った。
「ちょうだい、とは、言わない。あたしがもらっても着る場所がないし。でも上着だけでもいいからさ、くれない?」
「上着ですか」
これが真実私の上着であり、かつ黒装束への囮役が終わった後ならばそれもいいだろう。
だが、そうではない。
「申し訳ないのですが、上着は無理です。おそらくローブならば可能だと思いますので、それではいかがでしょう」
「えー……。まあ、いいわ。布地部分だとそっちの方が多いだろうし」
「では、許可をもらってきますので、お待ちください」
私はその場で上着を脱ぎ、ローブを脱いだ。
この赤い服の構造を簡単に上げるとこうなる。
たっぷりとしたデザインのズボンに、同色の細身長袖シャツ。その上にローブを身に着けて身体のラインをやんわりと覆い隠し、さらに短い上着を身に着ける。細かい刺繍などの装飾はほとんど上着にされているので、それ以外はシンプルな構造になっている。
私は一度ローブを脱ぐと、再度上着を身につけ直してから部屋を出た。
ファル、ボルナー、ヒールダードさんの三名は、お茶を飲みながら待っていたらしい。
その間ヒールダードさんは商品を並べてサマンの母親相手に営業活動を行っていたようだ。乗り気になって財布の中身を確認している様子を見ながら、ついついっとファルのそばへと近寄る。
「あの」
「ああ、ラーダ、話は終わ……」
横合いから声をかけたためか、そう言いながら振り返ろうとしたファルは、みるみるうちに顔を赤らめた。
「な、な、な……!?」
私は両手に持ったローブを見せながら尋ねる。
「情報料に、この服をねだられたのですが。ローブであればお渡ししても良いのではと思いまして。いかがでしょう?」
何しろこの服を仕立てたのは私ではない。そのため許可をとるならばファルにだろうと思ったのだが、彼はなぜか、目をうろうろとさ迷わせながら、ごくりと息を呑んだ。
「う、上着はマズイが、ローブなら可能だ。……い、いや、待て!それを渡したら、その恰好で外をうろつく気か!?」
「?外では先ほどと同様に外套を身につけさせていただきますが」
「そ、そうか……。そうだよな、な、なら……」
「では、渡してきます」
背を向け、再びサマンの部屋に向かう私の背に、ファルの慌てた声がかかる。
「部屋を出る際は、外套をつけてからにしてくれ!」
「?はい」
おかしな恰好だっただろうかと思いながら私はサマンの部屋に戻った。
別に肌を晒しているわけではない。確かに、野外で女性が素肌を見せることは、手足であってもあまり推奨はされていないが、それは実のところ日光が強すぎるので肌に悪いという理由が大きい。
今の私は、サマンの家の中におり、また上下赤色の衣服に上着を身に着けている状態であって、手足さえ出しているわけではなかった。何をあのように狼狽されたのか分からず首をひねっていた私は、サマンのにやついた顔に出迎えを受けた。
「ラーダって、あの三人の中に恋人さんでもいるの?」
「いません」
「なぁんだ。やけに慌てた声が聞こえたから、よほど他の男に見せたくなかったのかと思った」
「肌を晒しているわけでもありません。そんなことはないでしょう?」
「あれ、ラーダは街の人でしょ、それならシルエットダンスって知らない?」
「え?」
「直接は見せない、でも薄い布越しに影だけを見せるっていうダンスでね。ちょうど、こんな薄くてひらひらしている布越しにやるんだよ。女の身体のラインぴっちりとした服を着せて、躍らせると、まるで裸で踊っているのを見ているかのように幻想的にエロティックになる。もちろん、万が一興奮した男が布をはがそうとしても、実際は肌を晒してるわけじゃないから問題ない」
サマンの言葉に、私は眉根を寄せた。
港湾課の付き合いで女性たちが際どい踊りを見せてくれるお店に行くことはあるのだが、シルエットダンスというものには覚えがなかった。
「若い娘さんが行くようなお店ではないと思いますが」
「あっははは、そうだね。あたしも、実際のお店は行ったことないよ。でもそういうのがあるって村の長老がずっと昔に言ってたんだよね。そっかー、都会の人でも女の子は行かないか」
ひらひらひら、と渡した赤いローブを翻しながら、サマンは笑った。
「やっぱり、絹だー。東の国の、かなりいい質。こういうのを使って織物を作ってみたいなあ……」
うちじゃ、当分無理だけど。彼女は肩をすくめて呟くと、私に別れを告げた。
「それにしても黒装束たちといい、あんたといい、その絵姿になんの意味があるの?ただの絵でしょう?」
サマンが首をかしげるのも無理はなくて、この服を着ていることが私である意味があまり感じられない。
サマンが幼いころに手に入れたという絵姿は、人物の顔が小さくて、私と似ているかどうかが分からないのだ。サマンが再現した方の絵姿であれば、確かに若干似ている。髪の色や、肌の色、顔かたちといったものが。だがそれも、サマンが気づかない程度の話である。
「私も、あまり強い関心があったわけではなかったのですが。サマンさんのお話を聞いて、そういうわけにはいかなくなりました」
□ ◆ □
深夜である。
旅商人の宿を確保しているのだから、本来ならば睡眠をとっていい時間帯だ。
だが、その選択を行っているのはヒールダードさん一人で、私とファル、それにボルナーは池の周囲にやってきていた。ボルナーに至っては帯剣している。
池の表面に美しい月が映りこんでいた。
「ここが王宮内なら、音楽を奏でている者の一人くらいいそうな光景だな」
ファルがそう言ったけど、王宮内の様子は見たことがないので比較しようがない。
「サマンさんの話が真実であるとすれば。……十年以上前に、この村を訪れていた少年は、キルスでしょうか」
私は呟くようにして口にして、周囲の様子を伺う。
今のところ漂ってくる臭いは、水と砂、それに私たち三人の臭いだけだ。
「少年というだけでは断定はできないな。
だが。……例の地図を覚えているだろう。あの地図に示されていたのがこのナクシェ村だ。地図に添えられていた文章もキルスを追ってのもの、『魔神のランプ』が見つかった場所……という仮説は立てられる」
ファルはうなずいた。
『キルスが所有していた魔神のランプは、エラン王国行の船に載せられたもよう。ルーズベフ』という、例の文章のことだ。
あの地図に載っていた赤い印は、まさしくこのナクシェ村。
港から離れているためアラム先輩の権限では調査に来られなかった場所だけど、時を経てこうやって機会が巡ってきたわけだ。
ルーズベフとペテルセア帝国との連絡拠点ではないかという推測もあった。けれど、現地にやってきた感想としては、ペテルセア帝国の人間なんて余所者が近寄ったら、村人たちが不審に思うに違いない。
「村人たちは地下空洞の噂は知っていても、入り口については知らない様子だし、サマンさんの発言を信じるなら、彼女もまた、十年間一度も開いたところは見たことがないということでした。その晩のキルス少年だけが知っている合図があったはずです。笛か、合言葉か。両方のようですが……」
「どちらにせよ、オレたちには分からない情報というわけか」
「おそらく黒装束にも」
あるいは、月の満ち欠けにも秘密があるかもしれないが、そこはもうどうしようもない。少なくともサマンはその晩の月の形までは覚えていなかった。
月は、池の上をゆらめく船のように見える。
古来三日月の夜の月を指差して船と呼んだのは一人や二人じゃないだろうけど、三日月でなくても船のようだ。
進むごとに形を変える様子などは見ていて幻想的でさえ……。
……?
ふと、池の表面を覗きこんでいた私は首をかしげた。空に浮かぶ月は、満月ではないにしろそれに近い丸さだ。ところが、池に映る月が欠けているのである。その欠けは、先ほどよりも大きくなっているような気がした。
「……?」
消える。水に映った月が消えていく。
「うそ……!?」
思わず声を上げてしまった。
月の代わりに水面に映ったものは、夢かと思うような影絵だった。
それは、女性のシルエットだ。ひらひらと翻る布を揺らし、まるでリズムに合わせるかのように踊る。
なびく髪の毛、翻るスカート、長いローブ。それに上着。色のない影だから、赤なのか、青なのか、それは分からない衣装だけど、薄い色合いが透けて見えて、美しい。
動きを見ているだけで、背後に音楽が聞こえてくるかのようだった。
肉色をしていたら、見惚れるよりもいやらしく思ったかもしれない。だけど、シルエットだけの姿はどこまでも幻想的で、もっと長く見ていたかった。
そうか。これがシルエットダンスって言うんだと私は思った。
いつのまにか、音楽が奏でられている。
笛の音だ。それも何人もが周囲を囲むようにしてそこにいた。
黒装束で目元しか見えないのに、どうやって笛を吹いているのだろうと思ったが、どうやら口を開け閉めする場所はあるらしい。私たち三人を囲んでいたのは、合計で五人ほどの騎馬隊だった。
「ようやく現れた。あなたを待っていた」
騎馬の一人が待ち焦がれるような声で私に向かって言う。
「『魔神』。我らの願いを叶えてくれ」
空には大きな月が出ている。それは少しも欠けてはいなかった。




