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神殿が実家なオッサンです  作者: アッサムてー
白煙の怪異
140/144

死人人形の恩返し

***


「……お久しぶりです」


神殿の敷地内にある墓地。

数ある中から、目印の墓を見つけ出したその男は懐かしそうに目を細めると、そう零した。


五十代ほどの男だ。

黒髪には白いものが混じり、顔にもそれなりの皺が刻まれている。

けれど、どこか若々しく見えた。


「アキラさん」


墓で眠る存在。

その名前を口にした。

その時だった。


「このバカの知り合いか?」


墓石の後ろから声がした。


「えぇ、エドさんも、お久しぶりです」


なんて言って、男は微笑んだ。


「……お前とは会った事はなかったはずだけどな。

この阿呆から俺の事を聞いていたか」


「あぁ、そう、そうですね。

この世界の貴方とは、たしかに初対面だ」


ただただ穏やかに、男は短く返した。

その返しにエドが興味を持った。


「この世界?

渡航者、にしては妙な言い方をするんだな?」


「並行世界にも行ける渡航者ですから、俺」


「……嘘つきか」


「失礼ですね」


「異世界ならともかく、並行世界?

違う時間軸、違った道筋を辿った同じだけれど違う世界からきた??」


「えぇ、そうですよ」


ニコニコと男が答える。


「はっ、そんな存在、神にもいないぞ」


「あ、じゃあ俺、神さますら超えたってことですね!

頑張ってきたんだなぁ、なんちって」


とても五十代には見えない、それどころか幼稚にすら見える態度で男はおどけてみせた。


「そう、アキラさんよりも上に来た」


その言葉に、エドの顔色が変わる。


「この言葉の意味がわかりますか?」


「…………」


「わからないわけ、ないですよね?

この世界のアキラさんは、実の娘を――」


男の言葉は、しかし途中で止まる。

エドが襲いかかってきたからだ。

それを、男がヒラリとかわす。


「アハハ、貴方も変わらない。

なにもかも、変わらない」


楽しそうに男が笑う。


「俺も、曲がりなりにも親になったからわかりますよ。

子供の頃にはわからなかった、わかろうともしなかった、親の感情ってもんがね」


男は言って、続けた。


「でも、それはこの【お話】には関係のないことだ。

今、大事なのは大昔の借りを返すことですから。

墓参りに来たのは、ちょうど良かったからです。

もう、三十五年になります。

三十五年前、元々いた世界で俺はライさんとリムさんに助けてもらいました。

その時の借りを、恩を返しに来たんです。

なんだか、大変なことになってるみたいだったので。

でも、出来ることは限られてる。

俺が手を出しすぎると世界を壊してしまうから」


最後は苦笑だった。

そこに、声がかかる。


「マスターに御用の方、というのは貴方でしょうか」


「われらが主の片割れが会うってさ」


その声に男が振り返る。

そこには、双子らしき瓜二つの容姿をした少女と少年がたっていた。

少し前に、大愚が作った杖。

その杖が擬人化した姿である。

その二人を見て、男の顔が驚きに染まった。

今しがた、男とエドのやり取りの中で出てきた、そして墓の中で眠っているはずの【アキラ】そのものだったからだ。

そんな男に構わず、少女が問いかけた。


「あの、それで貴方のお名前は?」


男が、答える。


「ウスル、いや」


男は言いかけて、言い直した。


「アキレア。

テツ・アキレアですよ、お嬢さん方」


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