不測の事態への対処で仕事の出来は変わるってもんですよね? 97
お待たせしてしまい申し訳ありません<m(__)m>
とりあえずの更新ですσ(^_^;
第一章 九三話
「分かりました。...“最後のA”を切ります...」
その場にいる者達だけで無く、居ない者たちも...ドローンオウルを通して静かに宣言する。
特に悲壮感を込めたつもりはなかったのだが...決死の覚悟で言葉を絞り出したように聞こえたのだろう...グラブフット達は目を丸くしている。
「お前...どうする気だ? ただでさえグランヴィアの周囲に城壁を構築し、すぐにコカトリスの群れを殲滅、更にはサルダンとの連戦...魔力だってろくに残っちゃいまい? 」
「...確かに残りの魔力は心許ないかもしれませんが...メギラガロンが顕現する迄に最大効率で集積を続ければ、ヤツを仕留める程度の策はあります」
自分で言っておいてなんだが...随分と大きく吹いたものだ。
本来、この『魔力と呼ばれる万能エネルギー』の特徴は、魔法への“変換効率”以上に汎用性の高さだが...内心では冷や汗モノの綱渡りだ。そんな様子はおくびにも出せないが...
「...分かった。どの道お前だけにまかせるつもりは無いが...俺らに出来る事は?」
「グラブフットさん達は神聖国の皆さんを大聖堂へ誘導して下さい。メギラガロンの状態によっては直接の迎撃戦力として動いて貰うかもしれませんが...なにか起こった時はドローンオウルを通して連絡を!」
「分かった...お前はどうするんだ?」
グラブフットからの問い掛けに一瞬思案を巡らせる...
「とりあえず、はた迷惑な人の所に行きます。文句の一つも言ってやらないと気が済みませんので...」
{ミネルヴァ! この事態を引き起こした張本人の所に行く、座標は?}
{はい主殿!問題ありません!}
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領都グランヴィアの中小地、大聖堂の入り口前に広がる広場は、先の戦闘の影響で酷い有り様だ。そしてその外れ...素性不明のエルフが囚われている結界へ、座標を設定し終わったミネルヴァと共にムーヴする。
魔力を無限に吸収する結界に囚われたランスロットは、無駄なあがきはせずその場に胡坐をかいて瞑想しているように見えた。
「...」
ランスロットを捕らえる結界の前にはヴィクトール師とガスパールが目を光らせていた。二人にも事情は伝わっているので転移してきた僕を見て無言で結界に目配せする。
特に気配を隠して近づいたわけではないので、こちらには気づいているだろうに...ランスロットは結界を挟んで目前に立つまでなんら反応を見せない。
「取り込み中だとは思いますが、少々お聞きしたい事があります」
反応が見たくて嫌みをぶつけてみるが、ランスロットは姿勢をすら変えなかった。ただ、だんまりを決め込むつもりもないようで、半眼に伏せていた両目だけをこちらに向けておもむろに口を開いた。
「...フン、貴様か...貴様が此処に居るという事は...サルダンはしくじったか...」
「あなたとは初対面の筈ですが...まあ今はその事はいいでしょう。大聖堂で暴れた彼の事なら...穏便にアルバ地方から退去していただきましたよ」
多少ハッタリをまぶしつつ...簡潔に答える。本当ならば聞きたい事は山の様にあるが、今は六翼の神鳥の事を優先して確認する
「あなたに聞きたい事があって参りました。素直に答えて頂けると幸いですが...」
「ほう? もう何時ヤツが来てもおかしく無いというのに...呑気なものだな。まあいい、答えるかは別として...何が聞きたい?」
「厄介事を持ち込んだ張本人のくせに他人事の様に言わないでいただきましょう...今、聞きたい事は一つです。あなたを解放すればメギラガロン顕現は止められるのですか?」
僕の質問がよほど意外だったのか...見た目だけは美しいエルフは怪訝な顔でこちらを見つめた。
「答えてやっても構わんが...ワシの言う事が真実かどうかはどうやって見極めるつもりだ?」
「...あなたの今の状況で虚偽を述べても意味は無いでしょう? 別に無理に答えていただく必要はありませんが...」
「ほう? つまり、わしを開放して“メギラガロンの顕現そのものを阻止する”という選択肢は必要ないと?」
「...むしろ、あなた自身がメギラガロンに現れてもらっては困るのでは? こんな結界に囚われたままで神獣と対峙するのは、たとえ一度仕留めた事があるとは言え...流石に危険でしょう? ですから、この質問はただの確認です」
ランスロットの顔に瞬間的に怒気が走る。
「クククッ、下手な挑発だな? そんな安い挑発に簡単に乗せられたと思われては業腹だが...まあ良かろう。既に予想はついている様だしな...お前の予測通り、もはやヤツを止める術などありはせん。たとえわしを開放し、ヤツからの魔力供給を再開させたとしてもな...」
「それはメギラガロンのシステムに触れた経験からの言葉でしょうか?」
「...貴様、やはりギドルガモンを狩ったと言うのは本当のようだな。トランスファーを獲得しているのであればそれも不思議ではないがな...」
ヤツの口から不意にこぼれた『トランスファー』という言葉...やはりこのエルフは神様の事を知ってる可能性が高い。いよいよこのまま“エサ”にしてしまう訳にはいかなくなった。ならば
{ミネルヴァ、ヤツを結界ごと移動させたいんだがエクスチェンジ可能か?}
{ヤツの魔力が結界に吸われている間ならば可能です!魔法構造式の構築を始めますか?}
{頼む! 転移先は例の所へ!!}
{了解です!}
ランスロットを無言で一瞥して環視していた二人に向き直る。
「彼の所を目指してメギラガロンが現れるとしたら、のんびりとこの場に彼を置いておく訳にはいきません。申し訳ありませんがご同行をお願いします」
「おぬしの言い分は分かるが...ヤツを結界から出すわけにはいかん。どうする?」
「それは問題ありません。結界ごとヤツを転移させます。ヴィクトールさんには結界の保持の為にも同行をお願いします。ガスパール君も護衛の為に同行を」
顔を見合わせた二人の表情に逡巡が現れる...おそらく転移魔法に対して半信半疑なのだろう。改めてランスロットの方を一瞥し、
「わかった。我々としてもグランヴィアでメギラガロンを迎え打つのは得策ではない。それで? どこに行くのだ? それに同行するのは儂等だけか? 如何な我々でもメギラガロンを討つとなればたった二人では何ほどの事も出来んぞ?」
ヴィクトール師が懸念を投げかける。彼等の言い分は当然だが、
「勿論、皆さんに協力をお願いしますよ...」
少しだけ言葉を濁し答える。刹那に留めたつもりだったが、僕の表情を見たガスパールは呆れた様に言い放った。
「てめぇ...それが本性か!? 俺も色んなヤツと戦ってきたけどな、そんな顔してるヤツには、ロクなヤツが居なかったぞ!?」
....失敬な言われようだ。
いつも読んで頂いている皆様ありがとうございます。
(随分お待たせしてしまいましたm(__)m)
新たに見つけて読んで下さった方は、是非今後とも宜しくお願いします。
実は新作を同じ“なろう”にて発表させて頂きました。タイトルは
『マシニングオラクル “AIが神を『学習』した世界”』
です。宜しければ覗いてみて下さいm(__)m
それでは...今後とも応援よろしくお願い致します。
批判や誤字・脱字のご指摘も絶賛受付中ですので何卒よろしくお願い致します。




