不測の事態への対処で仕事の出来は変わるってもんですよね? 95
少し慌てて更新したので誤字脱字あるかも...σ(^_^;
まあ...ゆるりと読んで下さ~い<m(__)m>
第一章 九一話
「無駄です.... あらゆる災厄を切り裂く“利剣の力”を宿す倶利伽羅龍王は、不動明王の化身! 彼の前では邪悪な魔法の力などその存在すら許されません!」
先程までの“風と雷の奔流”は一瞬で霧散し...静寂が支配した空間...
顕現した“龍”の頭部にそっと降り立った僕は、夕闇が満ちつつある空に揺蕩う男に、“倶利伽羅龍王”の能力を告げた。
「...バカな!! 神獣を召喚したとでも言う気か? それこそあり得ん!! そもそも神獣とはそういう物では無い!!」
「あなた方が、神獣をどんな“存在”として認識しているかなど興味はありません。ただ、僕が召喚した“倶利伽羅龍王”は“任意の範囲内に発生する魔法”のうちで、“悪意ある攻撃魔法”を完全に封殺します。その証拠に、魔力は集積出来ても、魔法構文は“立ち上げる事”すら出来ないでしょう?」
そう...男は自らの放った魔法が霧散すると見るや、即座に新たな魔法構文を構築しようとしていた。が、その試みは失敗に終わる。何故なら魔法構文その物を構成しているのも元を辿れば“魔力”だからだ。
そもそもこの世界に迷い込んだ時に神様は魔法について何と言っていた...?
【「つまりスキルとは[個人の体験や性質に影響されて発現する特殊な能力]と、考えればよいのでしょうか?」
「概ねそう考えて頂いて結構です。魔法にしろスキルにしろ、[精神感応エネルギー粒子=魔力]に“どれだけの影響”を与えるかは、多分に“使役者のイメージ”に依存しています。使役者が“より明確な意図”で“細緻に現象をイメージ”すれば、より“大きなエネルギー”を、意図通りの“魔法・固有魔法”に込めて行使できます。」】と言っていたではないか!
つまり、魔法とは[エネルギー粒子を“効率的に運用する方法”を法則化した機構]に過ぎないという事だ。
“魔法陣”の様な“外部記憶装置”に膨大な処理を肩代わりさせるのも効率を重視するからだ。
それこそ人間には処理仕切れない様な複雑なプログラムの“代替行使機能”と、“エネルギー粒子の集積・貯蔵機能”を組み合わせた、“大規模魔力具現化装置”等は、“究極の効率化”の最たる物だろう...
だが...遥か古代に“神獣”を生み出してしまった彼等はとっくに解明していたのだ。エネルギー粒子を更に効率的に使用する方法を...それは、
『汎用性のある“記憶装置”に魔法構文を書き込むのでは無く、プログラムと同等の効果を発揮する“物理的な機構”に“直接エネルギー粒子を流し込めば”良い』のだと...つまり、
(三首の神獣の頭蓋骨の一つが“無差別エネルギー粒子集積機構”になっていたからこそ、この“倶利伽羅龍王”を構築出来たって事なんだが...まあ、それを教えてやる理由も無い、精々驚いてもらおうか!)
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「くっ! 確かに“攻撃魔法”に類する物は使えないようだな。だが...いいのか? 他の魔法が使えるのなら、隙をついて“逃げる”くらいは出来るかも知れんぞ?」
「...何を言ってるんです? あなたが逃げてくれるなら僕の仕事はつつがなく終わりですよ。むしろさっさとお帰り願たいくらいです」
「何だと!!??」
男は“心底驚いた”という顔をしている。まあ、こちらの人間ならそうなのかも知れないが...
「そんなに驚く様な事ですか? そもそも僕は、あなた方と争う予定など全く無かったのですよ? 予定外のトラブルが去ってくれるならそれで御の字です」
確かにここでこの男を殺しておいた方が後々面倒がないかも知れない。だが...
「だいたい本当に無力化出来るのが“攻撃魔法”だけだと思っているのですか? その気になればあなたから“全ての魔法”を奪い取って“墜落死”させる事くらい容易い事です。ただ、それをしないのは...いえ、それはあなたには関係のない事です」
男が僕のセリフを聞いてすっと目を閉じて天を仰ぐ...即座に激昂するかと思ったが...
「ふう...今回は引くより他なさそうだな...」
「へぇ...少々意外ですね...こんなにあっさりと引いていただけるとは...」
「フン! 勘違いするなよ? 今の時点でこれ以上貴様とやり合っても仕方無いだけだ。“核”は暫く預けておくとしよう。それに...いやそれは貴様には関係ない...か」
....どうやら向こうにも都合があるようだ。ほんの少し考えている間に男の足元のスパークが少し激しくなる。と、こちらを警戒したまま少しずつ男は遠ざかっていった。
「カナタ・コーサカよ、また近いうちに会うのを楽しみにしているぞ!!」
....男は“テンプレ”な捨て台詞を残して、夕日の方向へ少しずつ遠ざかる...やがてその姿は、辛うじて残る落陽の中に溶けて消えていった...
{ふう...とりあえず追い返せたか...危ない所だったなミネルヴァ}
{主殿! 確かにこちらの魔力はもう枯渇寸前でしたが...倶利伽羅龍王の召喚に成功した時点で、“ヤツの魔法を完全に封じる事”は可能だったはず?...何故ヤツを逃がしてやったのです?}
{そいつは...難しい質問だな。まあ理由はふたつある。第一に... ヤツはまだ完全に追い詰められてはいなかった。最後の移動魔法を見ただろ? 仮にだけど、あの魔法で全開でつっこんでこられたら? 高速の肉弾戦を仕掛けられたら今の僕達で対処出来たか怪しいな。そして第二にだが...コレはもう勘としか言いようがないんだが...ここでヤツを殺すと...この次元の運行に支障が出る気がするんだ}
{...なんと?! ヤツはいったい...}
{まぁ、こっちの理由はただの勘だからね。裏付けになるソースは何もないんだが...今までも出来るだけ死人を出さない様にして来たのは知っているだろう? もし“この次元の運行に携わる重要人物”を、間違いで殺してしまったら...それこそ目も当てられない! そんな恩知らずな事をしたら、それこそ神様に顔向け出来ないよ。}
{了解! 主殿!...ならば仕方ありません!...地上に降りて倶利伽羅龍王の召喚を解かれますか?}
{そうだな...下のヤツも大概な感じだったけど...まぁグラブフットさんにカズミや....えっとヴィクトールさんとガスパール君も居るんだ....余程の事が無い限りは問題無いだろう...}
西の...ここから見れば丁度トライセン王国の方角に沈もうとする夕日の最後を見ながらそう呟いた時...おかしな事に気づいた....日没寸前にしては周囲が明るい....いや明る過ぎる! これは...?
{主殿! グラブフット様に従いていたミニミネルヴァから通信です!}
『カナタ! 聞こえるか? 今どこに居る?!』
「グラブフットさん、僕は今そちらの上空に居ます。これから降下して合流する予定です」
『!?何故そんな所に...いやそれよりも...マズい事態だ...恐らくだが...六翼の神鳥がグランヴィアへ顕現するかも知れん!!』
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