仕事の準備を怠らないのは・・・大人として当然ですよね? 78
今回少し長いですm(__)m
第一章 七四話
グラブフットの肩に手を置いて呟く....
「ムーヴ!」
次の瞬間には....僕とグラブフットは絶対なる光を纏う者の眼前、15mの所に転移していた。相手からすれば突然眼前に現れた筈だが....内心は分からないが見た目には“毛ほどの動揺”も見せない....
「グラブフット、か....まずは息災で何よりだが....貴様ギドルガモンに手を出したらしいな? 何をしているのか分かっているのだろうな?」
「ああ、久しいなフェルディナン。お前たちがどう思ってるかはしらんが....まだまだ呆けちゃいないぜ!」
「ふんっ、減らず口は変わっておらんな....だが今はお前に付き合ってはおれん。“ギドルガモンを討ち取った”というのは本当か?」
....グラブフットの返答を聞いて一つ鼻を鳴らした絶対なる光を纏う者は、怒りもせず重ねて問い質してくる。なる程この男を良く知ってる様だな。
「討ち取ったかって? そりゃあ俺がここに居る事を見れば分かるだろうよ。それに....どうせお前たちのこった、セルディック4世が持ち直した事や、グローブリーズの帝宮での一件くらいとっくに知ってるんだろ?」
「....幾つかの告悔は聞き及んでいるが....信じられんな? お前の力が超越者級達の中でも抜けているのは良く知っている。それこそ、あの頃から、今なお“成長を続けて”いるならば“ヴィクトール師”を超えているかもしれんな....だが? それでも“三首の神獣”を仕留めきれる程とは....どうしても思えん」
「ああ、そうだな。だがな....俺は自分で仕留めたなんて一言も言っちゃいないぜ?」
グラブフットが言い放った一言は彼の視線を自然とこちらに向けた。実際は兜がこちらに向いただけで目が見えてる訳でもないのだが....
「もしや....その若造が“やった”とでも? お前の“世迷い言”は今に始まった事ではないが....今回はまた格別だな?」
「おお!! 珍しく察しが良いじゃないか! 神の言葉以外ろくに耳を傾けないお前にしちゃ珍しいな?」
グラブフットが楽しそうに言い放った言葉を聞きながら、僕自身は心の中で溜め息をつきそうになっていた。グラブフットの軽口癖は良く知ってるが....面倒な事には変わりない。
{ミネルヴァ....彼等に付き合ってたら幾ら時間があっても足りない。大聖堂に仕込んだアレと住民達との魔力回路の状況は?}
{問題ありません。今回は相手の到着時刻の予想が容易でしたのでかなりスムーズに起動準備が出来ました。コアの魔法構文の再構築も完了しております}
{ありがとう、後は僕のプレゼン次第だな....}
訝しげにこちらを眺めていたフェルディナンに向かって、今度はこちらから話しかける。
「一応ご挨拶するのが筋でしょうね....はじめましてクレオール枢機卿。僕は今回のアルバ地方の争乱において少しこの地に関わる事になったカナタ・コウサカと申します。以後お見知りおき下されば幸いです」
「ふん! 貴様の事は配下から聞き及んでおる。なんでもモノクルをした面妖な魔法使いが、そこな城壁を“一瞬のうちに作り上げた”とな、だが....そんな石塊を積み上げた程度で我らを阻む事が出来る等と思ってはおるまいな?」
「ほう? ガスパール君はキチンと状況を伝えてくれた様ですね。まぁ、僕もこの城壁を頼りに籠城戦をするつもりなどありませんが....僕がしたいのは双方に利益のある提案です」
うん? 僕の言葉を聞いたフェルディナンが肩を震わせている。言い分が不遜過ぎて怒らせでもしたかな? とも思ったが、さにあらず....
「ククッ、提案だと? この状況で面白い事を言うな? 我らがその気になればその程度の城壁など何の頼りにもならんぞ! それにな....現在アルバ地方にはろくに戦力がおらん事位分かっている。精々一般人と少々腕がたつ程度の冒険者達が合わせて800前後というところだろう? 貴様やグラブフット程度の魔法使いが幾人か居ようが我が神聖騎士団の精鋭2000の相手など務まるか!」
「ふう....何か勘違いしておられる様ですね.....僕は今回....直接手を出すつもり等ありませんよ?」
「なんだと?」
「ああー....横から口を挟んで悪りぃがなフェルディナン、つまりコイツはこう言ってるんだよ、“僕が手出しすると一人でお前ら2000人位皆殺しにするのは簡単だ”ってな? だがよ? それじゃぁこれからするつもりの提案に“お前らが乗る利益がない”だろうってな....」
ああ....言ってしまった。そんなカドの立つ言い方しなくてもいいだろうに....流石に今度は笑って済ませてはくれそうに無い。その証拠に彼の周囲に渦巻く魔力が凄まじい勢いで吹き上がっている。
「なる程....ではお主はこう言いたい訳だな....“アルバ地方にはグラム神聖国と対等なテーブルに着くだけの力”が有ると?」
おーおー、怒ってるなぁ....全く、もう少し楽をさせてくれないだろうか....だが仕方ないか....今更謝っても許してはくれないだろうし....
「まあ概ねその通りですね。ですが....言葉だけでは信用しては頂けないでしょうね」
「ふん! 是非もない! 力はな、使わねば誰もそれが力だとは認めん。言葉を証明したいなら....まずは力を見せよ!」
「全く....なんでこう脳筋ばっかりなんでしょうね....できれば話し合いだけで事を納めたかったのですが....」
{ミネルヴァ、仕方ない起動するぞ。ヴィルヘルムさんへ繋いでくれ}
{了解! 通信を開始します。並行してコアの起動に入ります!}
〔ヴィルヘルムさん! カナタです。聞こえてますか?〕
〔ああ! 聞こえているぞ! やるのか?〕
〔ええ始めます! マルグリット様にコアに手を触れる様に伝えて下さい〕
〔....おう、了解した。こちらは任せろ〕
ヴィルヘルムへの通信を終えると同時に....結界内の領民達から魔力を収束し、固有魔法を発動する。
「エクスチェンジ!」
同時に....陣を敷く神聖騎士団を円形に取り囲む形で、ありったけの武装をしたグランヴィアの民と冒険者達が二人一組で等間隔に現れる。
彼等のうちの一人の肩にはドローンオウルが、まるで静かに出番を待っている様にひっそりと留まっている。フェルディナンも突然現れた領民達に最初こそ驚いていたが....
「何かと思えば....その程度の人数で我々を囲ってどうするつもりだ?」
「....彼等はグランヴィアを、ひいてはアルバ地方を守る為に不利を承知で矢面に立ってくれた真の勇者です。簡単に倒せる等とは努々思わない事です」
「ふん! 如何に士気が高かろうと....出来る事には限度が有るだろう!」
ふ
うん、確かにフェルディナンの言う通りだ、このままならば....だが。
{ミネルヴァ!}
{了解!・核起動魔法構文展開・多重魔力回路並列連結完了・形質標本確定・仮想行動様式構築・全設定完了!}
「最後にもう一度だけ伺いましょう? 話し合いをするつもりはありませんか?」
「そういうのは有利な方が聞くもんだぞ」
「.....致し方ありません。」
{ミネルヴァ
{了解! 連動型神獣核再起動}
『多重召喚! 紫炎有翼竜!!!』
スキルを行使した瞬間....400匹のドローンオウル全てが...口許に紫炎をくゆらせる....全長7mの火竜に変わっていた....
毎度の不定期更新で申し訳ありません。いつも読んで頂いている皆様ありがとうございます。
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アジャはなろう基準で、まだまだ底辺の近くをウロウロしている駆け出しですが、期待していただいている皆様に後悔させない様、これからも精進していく所存です。
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