316:赤海月
本日は四話更新となります。
こちらは三話目です。
『サタっ!』
ヴィリジアニラの叫ぶ声と共に俺は動き出す。
と同時に観察と考察も進める。
思えば、俺と言う独自空間に居る本体とリアルスペースで活動させる人形を持った宇宙怪獣が居るのだから、同様の事が出来る宇宙怪獣が居ることは何もおかしな事ではない。
そして、そんな芸当が出来る宇宙怪獣であるならば、これまた俺と同じように市井に混じって活動していてもおかしくはないのだ。
だから、フナカがそうである事は……言われてみれば当然としか言いようがない。
なるほど確かにこれは慢心だ。
「ははっ、はははははっ! あはははHAHAHAHAHAHAHAHA!!」
肝心のフナカ本体は……サイズについては、俺の本体よりも一回り大きい程度、つまりは並の戦艦よりも大きいサイズという事になる。
容姿としては……全体を見れば、血のように真っ赤で巨大な傘の部分から大小無数の触手が生えている。
その傘の縁と中心には人間の眼球に似た目玉が何万と並んでいて、周囲を睥睨している。
生えている触手は、特に太くて長いものが二本、それより短いが普通の宇宙船なら難なく絡め取れそうな触手が無数、それと……本体の大きさと比較すると糸のような細さの触手が前二つの数倍はあるようだ。
おかげで、全体の容姿としては間違いなく海月であるのに、まるで存在しない水面から赤い何かが立ち上がったかのようにも見える。
「分かってる。パワードスーツの俺で対処をするのは無理だ」
「すみませんがお願いします。私の方でも可能な限りの支援はさせてもらいますので」
と、そこまで見たところで、一先ずの対処完了。
パワードスーツの俺をエーテルスペースへと引っ込めた上で、『シェイクボーダー』と俺本体をリアルスペースへと転移。
フナカからそれなりに離れた場所に出現させる。
もちろん、ヴィリジアニラたちは既に『シェイクボーダー』の船内へと移動済みである。
「帝国軍の攻撃は……」
「HAHAHAHAHAHA! HoRoBiRo! 滅BiTeSiMaE! 不和No種Ni満TiTe崩Re去Re!!」
「効いていないようですね。全てフナカに触れる前に分解しています」
そうして俺たちが移動したところで、フナカへと攻撃可能な位置に居た帝国軍の戦艦たちが次々に攻撃を仕掛けていく。
だが効いていない。
命中して効果が無かったのではなく、命中する前に分解されてしまっている。
それどころか反撃で触手が振られれば、それだけで明らかに接触しない位置に居たはずの戦艦がシールドごと真っ二つにされ、破壊されている。
どうやらフナカOSを自身の周囲に張り巡らせ、必要に応じて伸ばすことで、攻防一体の力にしているようだ。
「サタは事象破綻砲の準備を。ただ、ゼロ距離で撃ち込む必要性があるとは思います」
「それはそうだろうな」
フナカの目の幾つかは俺たちの方へと向けられている。
距離にして光の速さで数分ほどあるはずなのだが、正確にこちらの位置を把握している。
もしかしなくても、フナカも俺たちと同じように超光速の知覚技術を使っているという事だろう。
となれば、この位置から事象破綻砲を撃ち込んでも回避されるだけだろう。
いや、回避されるだけならまだマシで、下手をすれば事象破綻砲で発生したエネルギーを吸い上げて回復する可能性すらあり得るな。
「……。少し弄った事象破綻砲を撃ち込む」
「それでお願いします。私の方もサタンの金環を起動して、フナカ以外に影響が出ないようにします」
だから俺はこの場で即席の改良を事象破綻砲へと加えていく。
より確実にフナカを倒せるように。
ヴィリジアニラも『サタンの金環』を起動して、俺の事象破綻砲による攻撃の余波が周囲へと及ばないように調整していく。
「HAHAHAHAHAHAHA! 落TiRo! 崩ReRo! 奴No尖兵Wo皆殺SiNiSuRu事Ga、生Ki残Ru道Da!!」
ただ、遠距離でゆっくりとチャージをしている暇はなさそうだ。
フナカが暴れ、周囲の船を次々に落としているだけでなく、血のように真っ赤な光球を出して、それに触れたものが分解消滅していっている。
そして、その光球の数は徐々に増えていっている。
このままでは、シルトリリチ星系全体が消滅し、それからフナカは姿を隠す事だろう。
「やるしかない、なっ!」
「来TaKa!!」
俺はフナカの頭上に転移する。
そして、事象破綻砲の準備を四本の腕で進めつつ、残る四本の腕でフナカの傘を殴りつける。
効果は薄い。
当然ながら対フナカ用のmodは展開しているのだけれども、それでもやはり、体格の差があって、威力が足りない。
それどころか自動反撃で腕の表面が溶けるし、フナカの無数の触手が俺の事を絡み取ろうと伸びてくる。
だが逆に言えば……その程度でしかなかった。
「サタ。私の指示通りに」
「分かった」
ヴィリジアニラの指示が届く。
その指示に従って体を動かせば、まるでフナカの側から避けたかのように触手の隙間を体をすり抜けていく。
「青緑No巫女Ka!!」
「ヴィー!」
「安心してください、サタ。この程度は当たりません」
「ウチの腕の見せ所っすね」
俺の攻撃の回避がヴィリジアニラの指示によるものだと気づいたフナカは、直ぐに『シェイクボーダー』に向かって攻撃を放つ。
だが当たらない。
全ての攻撃をジョハリス操る『シェイクボーダー』は難なくすり抜けていく。
「支援を。当たらずとも相手の処理能力を少しでも奪えれば、それで構いません。それでサタ様もヴィー様も助かります」
メモクシが艦隊やシルトリリチ星系側の生き残りに何かをしているのか、フナカへと攻撃が飛んで行く。
効果は薄くても、その対処の為にフナカの反撃が鈍る。
「サタ。私の準備は終わりました」
「そうか。こっちももう大丈夫だ。距離も無いしな」
「!?」
そうしている間に俺とヴィリジアニラの準備が完了し、準備をしていた四本の腕がフナカの傘の中心に添えられ……。
「「事象破綻砲・500・エラーセピア。発射!!」」
「!?」
事象破綻砲はフナカの体の中心を貫くように放たれた。
06/16誤字訂正




