(。>д<)\(・ω・`)ヨシヨシ
カエルとすがすがしい別れをした後、私はサーキットへと舞い戻った。
今日の荷物は少なめ。
もうじき作業、終わるな。
いやあ、今まで本当にお世話になりました!
重たいカートを駐車場に停め、事務所に行き、タイムカードを切る。
駐車場に行くと、いつもの様に杉浦君がいた。
イケメンがいなくなってからさ、いつも帰りに10分くらい、話してから帰ってたんだよね。
ま、それも、今日で終わり、なんだけどさ。
「おい。」
あれ、なんか機嫌、めっちゃ悪いぞ…。
さっきまでロッカールームで集まるゲームの話でウケてたのに。
「やよい。お前俺に言わないといけないことがあるんじゃねーの。」
「え、何もないけど。」
うん?集まるやつのコンプリ、まだだって言ってたはずだし…。
「やめるんだってな。お前。ここ!!!」
ゲゲ!!誰だ!!口滑らせたやつ!!!
「しかも!!お前!!結婚するってマジなのかよ!!」
ゲゲゲゲゲゲゲ!!!
カエルはもうここにはいないはずなのに!
カエルさながらの擬声語が私の頭ン中で響き渡ってるんですけれどもっ!!
さて、どうする。
なんていう?
うーん、まあ最後だし、全部、ぶっちゃけるか!!
「うん。親がね、相手見つけてきたの。」
「お前!!そんな見ず知らずの相手と結婚とかマジなのかよ?!バカか!!」
ヤベー!!この子、めっちゃキレてる!!
どうやって落ち着かせたらよろしいかね。
…最後だし。
きちんと、杉浦君と、向き合うか。
「大丈夫だって!だってさ、私まだ、恋を知らないもん。だから、親が見つけてきた人に、恋をすればいいんだよ!」
もうタイムリミット、なんだよ。
私、恋を知ることができなかった。
「私、親とかけをしてたんだ。私が、恋をできたら、してもいいよって言われててさ。できなかったら、家を継ぎなさいって。」
「大丈夫だよ。私、やっていける、自信あるもん。ここのみんなみたいに、仲良くやっていけるって、信じてる。誰だって、いいところあるよね。私、これから親が選んだ人のいいところいっぱい見つけて、いっぱい認めて、私もいいところいっぱい見つけてもらって、認めてもらって。そうやって、信頼関係を築いて、生きていくの。」
ケンカ友達も、たぶん賄ってくれるはず。
支え合って、一緒に生きていってくれるはずの、人。
これから毎日、感情のやり取りを、してくれる人。
「俺と恋をしろって言ってんだろうが!!!」
「無理だよー!だって親の命令だもん。私、親に逆らうなんてできないもん。仲、いいし。」
そう。
ずっと一緒に暮らしてきて。
ずっと私を見守ってきて。
ずっと私とともに、生きてきた両親。
祖父母。弟。…大切な、家族。
家族の望むことを、かなえてあげるのが、私の幸せ。
「ちょ…お前、マジで何言ってんの?お前の人生だろうが!!お前が、選べよ!!!」
「だから、親の探してきた人、選んだんじゃん。」
「あのね。あんたが私のこと好きって言ってくれたの、私、知ってる。」
毎日、ゴリゴリ私に押し付けてきた、まっすぐな、気持ち。
こたえられなかった、私。
「あんたはさ。恋を知ることが、できたんだよ。私は、知ることができなかった、それだけなんだよ。」
「あんたは恋をして、実らなかった。それだけの、事なんだって。」
「こんなの…こんなの認められるか!!俺が!!俺がお前を連れ去ってやる!!行くぞ!!ついて来いよ!!」
両手を、ぎゅうっと、つかまれた。
ああ、男の子だね、とっても、強い力。
「ね。大人に、なりなよ。無理なことを、無理やり通すのって、子供だと、思わない?」
「どっかのだれかみたいにさ。イケメンイケメンって言い張って、追いかけまわしてみたり。バカみたいな言い合いしてみたり。それって、とても、幼い事なんだよ。」
「大人って、落ち着きが、必要なんじゃないのかな。私、もう25歳なんだ。もうじき、26になるんだ。わがまま言っていい年じゃ、ないんだ。」
「いろんなことを考えて、みんなが幸せになる道を選ばないといけない、年なんだよ。」
「みんな?!お前はどうなんだよ!!お前が、お前が!!一番幸せにならなくてどうすんだよ!!」
ボロボロ泣いてる。
ああ、美少年が、泣いてるなあ…。
めっちゃ泣いてる。
誰だよ!泣かせたの…私か。
仕方がない。
いつも、弟が大泣きしてた時にやってたやつ。やってあげようね、最後だし。
私は、感情を隠すことなくド派手に泣いている杉浦君を、ぎゅっと抱きしめた。
一瞬、びくっと反応して、そのあとそっと、私を抱きしめ返して、くる。
しばらく、お互いの熱を、分けあっていたけれど。
そろそろ私は、ここを去らなければ、いけないんだよね。
「抱きしめあったって、ちゃんと言ってよ?間違っても、『俺あいつ抱いてやったんだぜ』とか言わないでよ?!」
「いわねえよっ!俺はこれでも硬派なんだよ!!惚れた女の恥になるような事、するわけにはいかねーんだよ!!」
ああ、もう泣き止んでる。
男だ、ねえ…。
「なれよ?!俺振って、絶対に幸せになれよ?!」
私の両手をぎゅうっと握りしめて、まっすぐ私を見て、力強い言葉をくれる。
「大丈夫だよ。私、これから絶対に幸せになるよ?約束する。」
「今まで、ありがとね。毎日、楽しかったよ。ケンカ、楽しかったよ。・・・バイバイ。」
私は愛車に乗り込み、ばたんと、車のドアを閉めた。
もう、この駐車場に来ることは、ない。
立ち尽くす美少年を、少しだけ見つめて、私はエンジンをかけて、二年半通ったこの物流倉庫を、去った。
少し、夕焼けが、まぶしいな。
最後の帰り道、私の目に夕焼けの色がいつも以上に突き刺さる。
こんなにも目に残る夕焼けは、初めてかもしれない。
なんだか目が、熱くなってきちゃった。
あれ。
なんだ、これ。
目から、一粒。二粒。
こぼれたのは。
ああ、これは。
もらい、涙、だな。
美少年の大泣きなんか見ちゃったからね。
仕方ないね。
うん、私らしく、ない。
明日から、私の恋が、始まる。
落ちないといけない、一生の、恋が始まる。
私は、テンションを上げて。
恋に落ちて。
愛に変えて。
家族を、育んで、ゆくの。
大丈夫。
職場で築き上げた、みんなが仲良しな関係。
私には、実績があるじゃん?
私にはできる。
私だったら、できる!!
幸せな家族を、築くことが、できる。
自信に満ちた私は、守り神のカエルがいなくなったマイカーを走らせ、実家へと、向かった。
「はじめまして!」
私の目の前に、優しそうな、人がいる。
「私と、恋をしてくれるって、聞いたんですけど!」
にっこり笑って、私の話を聞いてくれてる。
「私、とっておきの呪文知ってるんですよ!」
にっこり笑って、私の話を聞いている。
「絶対、私のこと、好きになる、呪文。」
にっこり笑って。
「唱えてもいい?」
いいよって、言ってくれた!!
「ウンダラホメカメ、ドヒャーン」
にっこり…ううん、めっちゃ、笑ってる!!
「ふふ、どお?私のこと、好きになった?」
たぶん、なったと思うって、大笑い、してる!
…よかった。
今から、私の恋が、始まる。
どこかで、ケンカップルの話が、書かれている、やもしれませぬ(意味深




