305:夏コミ初日①
お待たせしました!
夏バテやら、梅雨時期のメンタルダウンが重なって非常に体調が不安定で仕事に行くので精一杯でした⋯⋯
夏、東京ビッグサイト。
そこで行われる夏と冬に行われるオタクの祭典の一つ⋯⋯夏コミ。
今年もとうとうその日がやって来た。
年に2回のこの大きなイベントを心待ちにしている人はかなり多く、今回も沢山の人が暑くて熱いこの地へ足を運んでいる。
そんな中僕は朝早くに起きて、薫さん、由良さんの二人と一緒にホテルを出て、現地で裕翔と合流することに。
朝早くと言っても、始発ラッシュよりは遅い出発の僕達は、それなりに人の多い国際展示場駅の近くで裕翔を待っていた。
「おー、ようやく見つけた!待たせてすまん!」
「裕翔、おはよう!無事に合流出来て良かった!」
「人が想像以上に多くて焦ったわ⋯⋯ってもしかしてそこにいるのってゆるママさん達⋯⋯ですか?」
「はい、そうですよ」
「君が優希くんが言ってた裕翔くんだね!」
合流した裕翔が薫さん達を見て口調を変える。その様子が普段と違ってちょっと面白く感じちゃう。
「裕翔が敬語使うの違和感凄いよ?」
「⋯⋯い、いや、普段優希がお世話になってるからな」
「なんで親目線なのさ」
裕翔の発言に思わずツッコミを入れたその様子を見ていた薫さんが、少し変な顔をしていた。
「ゆ、優希くんの口調が砕けてる⋯⋯」
「えっ」
薫さん、驚くのそこ!?
「お姉ちゃん、なんか⋯⋯こう⋯⋯良いね⋯⋯」
「うん⋯⋯年相応って感じで⋯⋯めっちゃいい⋯⋯」
「薫さん!?」
二人ともなんか変な感じになっている。あ、暑いからだよ⋯⋯ね?そうだよね?
「⋯⋯優希、大変だな」
「何が!?!?」
裕翔が何やら温かい目で僕を見てくるんだけど何でなのかな!?
「俺にはわかってるよ」
「だから何が!?!?」
「っと、いけないいけない、一応挨拶だけでも。
優希の友人の佐々木裕翔です。
今日はユートって名前で動くつもりなのでよろしくお願いします」
「あっ、わざわざありがとう。
私が遊佐薫、ゆるママってよく言われてます」
「私が遊佐由良!適当にゆらって呼んでくれたら大丈夫だよ!」
「じゃあ、ゆるママさんはゆるママさんで、ゆらさんはゆらさんって呼ばせてもらいます」
「じゃあ私もユート君って呼ばせてもらうね」
「了解です」
裕翔が自己紹介している所を見るのってなんだか新鮮。なんて一瞬考えていたけれど、やっぱり裕翔が敬語使ってるのがなんかシュールで笑えてしまう。ごめんね裕翔。
「優希、流石に笑いすぎだろ!!」
「わ、笑ってない⋯⋯よ?」
「顔が笑ってるんだよ!!ニヤニヤしてるぞ!」
「だって仕方ないじゃん!」
「くそぉ⋯⋯」
裕翔はどこか納得していなさそうな表情をしているけれど、それを無視して移動を始める。
「それじゃ優希くん、頑張ってね!
スペースは近いから何かあったら頼ってくれて大丈夫だからね!すぐにお姉ちゃんが向かうよ!」
「えっ、私!?」
「だって優希くんが困ってたらお姉ちゃんは絶対向かうでしょ?」
「う、うん⋯⋯否定出来ないけど」
「って事で、何かあったら遠慮しなくて良いからね!」
由良さんはそんなアピールをしながら更衣室へ向かって行った。
薫さんは少し苦笑いで僕に手を振りながら、一緒に歩いていった。
「それじゃ僕らも行こっか」
「そうだな⋯⋯」
♢
「これ、裕翔の衣装だよ」
更衣室へ優希と向かった俺は、中に入ると今日着る予定のコスプレの衣装を渡される。
前の文化祭でやったみたいな女装のコスプレではなく、シュバルツのコスプレだから抵抗感も無いのがありがたいな。
少し着るのに手間取ってしまったが、なんとか良い感じに着られた。でも、地毛だと違和感凄いけどどうすれば良いんだろうか。ウィッグとかも優希なら用意してそうだが⋯⋯
「⋯⋯んしょっと」
そんなことを考えていると、隣から優希の声が聞こえてくる。同じ男だし着替えてるところなんざ見てもなんとも思わないはず⋯⋯なんだが、優希の可愛さみたいなのが強化されすぎて見てはいけないような気分にさせられる。
しかも心なしか、良い匂いがしてきたような気までしてきた。
⋯⋯これは一瞬の気の迷い。そうに違いない。
「んー、こんな感じかな!
裕翔、どこか変なところある?」
着替えが終わった優希が俺に確認を求めてくる。
そしてそこでようやく優希をまともに見るが、今日の格好は地雷系女子って感じなのか?そういえば今回のASMRはヤンデレをテーマにしてるって言ってたしそっち系の再現なのだろうか?
「いや、その⋯⋯似合ってるぞ」
「そう?良かったー、僕って昔からだけど、そんなに自分に自信とか無いから⋯⋯でも、裕翔がそう言うなら良い感じなのかな?」
信頼が厚いのは良い事ではあるが、優希の格好が俺を惑わせてくる。
俺の趣味が塗り替えられたらどうしてくれるんだ。
そう考えていると、今から化粧室へ行ってメイクをするとの事で、化粧室の中で俺は優希にウィッグを渡された。
正直全く分からないから優希にお任せして髪型なんかもセットしてもらうと、見た目は完全にシュバルツさんぽくなってきた。
「おぉ、メイクやウィッグでここまで変わるんだな」
「でしょ!びっくりするよね!」
「だなー」
そんな他愛もない話で盛り上がりつつ、優希のスペースへ向かう。
「あっ、ちゃんと届いてる!」
「今回何作ってたんだっけか」
「えっとね⋯⋯」
優希がダンボールを開けると、その中から飛び出して来たのは、アクリルキーホルダー。
「これだよ!」
「おぉ、相変わらず可愛いな」
思わず素でそう言ってしまった。
「可愛い⋯⋯う、うん。ありがとう」
「あっ、いやこれは⋯⋯」
「わ、わかってるよ!」
いかんいかん、思わず言ってしまったが、優希に可愛いは禁句だったな。
「でも、なんか裕翔にそれ言われるとむずむずすると言うか⋯⋯アクキーの事なのに僕が言われてるみたいというか⋯⋯」
優希はもじもじとしながらそう言うが、女装しながらだから、なんか俺も変な気持ちになってくる。
こいつは俺の性癖をどうしたいんだ????




