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【幼馴染】


 王は、レイチェル達が死んだのを確認すると、すぐさま側近達に指示をして、情報をあたりへと拡散させていった。


 すなわち、王都を襲撃し王族の暗殺を企てた者達は討ち取ったと。そして、街にいるゾンビ達も動かなくなったことを証拠に、ミセタ国への襲撃は、何者かに仕組まれたものだったと主張したのだ。


 実際に、ミセタ国でもゾンビ達の動きが止まったために、この噂は信憑性が高く、すぐに広まった。

 そのため、ミセタ国は国民の混乱も考えて進軍を停止。戦争は避けられた。


 後日、ミセタ国のニヒル隊に所属していたレイチェル・レンズレイドがアイデン国の秘宝を奪おうとしたこと、そして一連の国民の失踪事件に関与していたとし、軍を通した国による侵略としてミセタ国王に対して損害賠償を請求した。


 しかし、これに対してミセタ国王はミセタ国民も妖狐やゾンビにより被害を受けていること、そして何よりレイチェルなどという人物、並びにニヒル隊などという軍隊は存在しないとして断固拒否した。

 結局、痛み分けといった形でこの騒動は終わりを告げたのだった。


「フリード・ニルバーナよ。貴公は我が命の恩人。この国の英雄だ。望むならそれを広めることもできよう」


 あれから10日たって、俺は王様に再び呼ばれた。もちろんこの前の件でお礼という形だ。

 まぁ俺一回王様達見殺しにしたんだけど、それは無かったことにされてるようだ。どうやらあれも作戦のうちだと思われたらしい。

 それにしても英雄か。俺はそんな柄じゃないんだけどな。


「いえ、私はあまり目立とうとは思ってないので」

「ふ、そういうと思ったわ。だが冒険者のランクは否が応でも上がるぞ。どうやらAランクになるらしいな」

「そ、そうなんですか」


 おいおいマジかよ。いきなり最高ランクまで上がるのか。


「そうだ。そして1つ提案がある。どうだ、我が娘リールラの専属騎士になってはくれぬか? 悪い話ではあるまい。貴公なら私も安心して娘を預けられる」


 瞬間、あたりがざわついた。

 それもそのはずだ。専属騎士とは、騎士団員達が目指す最高の位。騎士団長でもなれるかわからないものだ。それに、専属騎士は王族とそのまま結婚することもある。

 それを一冒険者に過ぎない俺に任せるとは……。

 ふと王の隣にいるリールラに目を向けると、少し頬を赤らめていたがにこりと笑った。どうやら話は通してあるらしい。


「お、恐れながら……まだ答えは出せません。私も少し動揺していて」

「よい。じっくりと考えてくれ。3日後、返事を聞こう。その時に、貴公には私から話したいこともある」

「話したいこと、ですか」

「うむ。まぁその時の楽しみにとっておけ。では下がっていいぞ」

  「はい」


 俺は周りから多くの視線を集めながら、その場を去った。

 くそ、結局どんどん目立ってるじゃないか。それにしても話したいことってなんだろうか。

 俺はそのまま家へと帰った。


「お帰りーフリード。どうだった?」


 リズが出迎えてくれた。


「なんか、Aランクになるらしい」

「え、凄いじゃん! やったね」

「う、うん。あと、なんかリールラ姫の専属騎士にならないかって」

「は?」


 瞬間、リズの背後からどす黒いオーラが見えた気がした。


「専属騎士って確か……お姫様にずっとついて守る役職のことだよね」

「た、確か、そうだな」

「ダメに決まってるじゃん。あんたは私と一生いるんだから。てか、なんでフリードはリールラ姫様と仲よさそうなの?」


 リズは詰め寄ってくると、上目遣いで睨みながらそう言ってきた。


「い、言ってなかったっけ? 前に一度、お姫様を警護したんだよ。その時に仲良くなってさ」

「あぁ、なるほど。あのヴィーナスって女騎士ともそれで仲が良くなったんだっけ。けど今は忙しそうで会えないもんね、いい傾向だわ」

「おいおい、いい傾向って……」


 ヴィーナス、というかアイデン騎士団は今かなり忙しくなっている。というのも、この前の一件で団長だったロベルトがいなくなり、更にロベルトにより何人かの団員が殺害されていたためだ。


「フリード。何か勘違いしてない? あなたの髪の毛から精液に至るまで全てのものは私が摂取する義務があるのよ? 私も今日までよく我慢した方だわ。一段落したし、いやらしい事いっぱいしましょう」


 いつのまにか生やした尻尾で俺の服を捲り上げて乳首のあたりをいじってくるリズ。

 まずい、こんな昼間からスイッチが入っている。


「ま、まぁ落ち着けよリズ。俺たちにはまだやる事があるだろ? それが終わってからだ」

「何よやる事って」

「ならもう行くか。ついてきてくれ」


 俺はリズを連れて、外へと出た。まぁ元々リズを連れてくために一回家に帰ってきたからな。

 そのまま少し歩いて、人が少ない街の外れの方まで行くと、そこにはロイヤーとゾックの姿があった。


「フリード、リズも連れてきたのか」


 ゾックが俺に向かってそういった。


「まぁな」

「ねぇフリード、なんで2人がここに?」

「最期の別れだ。挨拶くらいはしておいたほうがいいだろ」

「最期って……死刑とか?」


 リズはロイヤーたちの方を見る。するとゾックが答えた。


「俺たちゃ国外追放さ。元は死刑だったが、レイチェルを倒した事で減刑されたらしい」

「そうだったの……ならもう悪いことしちゃ駄目よ」

「もう俺も懲りたさ。ケツが痛くなるような思いはしたくねえ」


 ゾックはお尻を抑えながら苦笑いでそう言った。ロイヤーも何やら落ち込んでいる。

 何かあったのか?


「お前らこれからどうすんだ?」


 俺はそう訊いた。


「ふん、さぁな。ただ、僕は今まで周りの意見と評価で生きてきた。今度は自分の目で見て生きるとするさ」

「そうね、ちゃんと人の事は『見た』方がいいわよ。じゃないと――」


 リズはそう言いながら、ツノと尻尾を生やした。


「――こうやって騙されるわよ?」

「えっ、えええぇ!?? リ、リズそれ、なんだそれっ!」

「ツ、ツノ!? じゃあリズは亜人!? 僕は亜人に告白してたのか!?」


 腰を抜かしたかのようなロイヤーたちの反応にリズはケラケラと笑う。


「いい反応ね」

「なんて事だ。僕はもう何も信じられない……」

「最初から信じてねーだろ」


 ゾックの鋭いツッコミがロイヤーに入ったな。


「あ、そうだ。ロイヤー」

「なんだフリード」

「ちょっと後ろ向け」

「あ?」

「いいから」

「……向いたぞ――って痛えぇ!?」


 後ろを向いたロイヤーの背中に、思い切り蹴りをぶちかましてやった。防具もきてないしかなりでかい痣でもできるかな。


「て、てめぇ何すんだ!」

「これでお前が俺の背中に打った『ファイア』はチャラにしてやるよ」


 俺は自分の背中を指しながらそう言った。


「ぐ、くそっ。お前復讐なんて興味ないとか言ってた癖に」

「それはそれ。これはこれだ。俺からの餞別だと思え」

「くっくっく。流石フリード、よかったなロイヤー」


 ゾックは笑いながらそう言った。


「……ちっ、ムカつく野郎だぜ。まぁこれで話す事はもうない。僕は行く、せいぜいリズとイチャイチャしてやがれ」

「あらロイヤー。イチャイチャじゃなくてヌチャヌチャよ」

「お、おいリズ。お前何言ってんだ」

「ヌチャ……!?」


 リズの言葉にロイヤーは顔を真っ赤にした。


「て、てめえらいったい普段何してんだ!? 卑猥だぞ! なぁゾック!」

「ヌチャヌチャ……う、羨ましい……」

「くそ。もういい! 勝手にしやがれ! おら行くぞゾック! じゃあなフリード! てめえらとは二度と会わねえ!」

「おいおい、俺はたまには会いてえよ。じゃあなフリード、リズ! 機会があったらまた会おうぜ」

「ええ、元気でね」

「ああ、またな」


 俺たちは、まるでまた明日会うような雰囲気で、そう……昔みたいにまた明日遊べるような雰囲気のまま、そう言った。そしてロイヤー達はそのままどこかへと去っていった。


「さて、俺たちも帰るか」

「そうね! 続きをしましょう!」

「やっぱ覚えてるのか」

「当たり前でしょ。もう焦らささせないわ」

「ちっ、覚悟を決めるか……」


 俺たちは家へと戻った。ご丁寧にリズは腕を組んで家までエスコートしてくれた。

 家に着くなり彼女は俺を俺の部屋へと押し込んで、部屋の鍵を締めるとすぐにツノと翼と尻尾を露わにした。

 リズは俺をベッドへと押し倒すと、舌なめずりをする。


「お、おいリズ」

「も、ももう我慢できないわ。ふへへ」


 リズは俺の服を強引に脱がせてきた。

 こいつもう理性が働いてないな。


「すんすん。はぁはぁ、フリードの匂い。夢にまで見た……そして、これがっ!」


 リズはあっという間に俺の衣服を全て剥ぎ取ると、最後の砦だった俺のパンツをずり下ろした。

 なんだこれ、めちゃくちゃ恥ずかしいぞ! 雰囲気もへったくれもねぇ!


「ふ、ふふ……フリードの、可愛い」

「お、おい……ジロジロ見るなよ」

「あぁ、もう我慢できない! いただきま――あれっ……? あれあれ? 嘘……」

「ど、どうした」


 リズがピタッと止まってしまった。俺の股間を凝視しながら。

 なんだこのシュールな状況は。


「嘘……でしょ。フリード、もしかして……あなた、私以外の女と……やった?」

「うぇ? あ、ああ……前に一度だけ」

「どこの!! 誰と!!」

「え、えぇ……? クエスト中に出会った人と、成り行きで……」

「ありえない! ありえないわ!! あんた何してんのよ! なんで見ず知らずの女に中古にされてんのよ!」

「ち、中古て……」


 こいつは俺にまたがりながら何言ってんだ?


「私の……私のフリードが汚されちゃった……うぅ」

「リ、リズ……お前泣いてんのか?」


 リズはポロポロと泣き始めていた。


「うっさい! あぁもう! ならいいわよ、もう決めた! あんたがいったい誰のものなのかって事を……私が、教えてあげるわ」

「うっ……」


 リズの尻尾が、まるで蛇のように俺のソレに巻きつかれて動き始めた。

 同時に、リズからかつて感じたことのない魔力が発せられている。


「上書きよ、上書きするの。私が全てを上書きする……」

「ちょ……リズ……なんだその魔力。お、おいっ」

「上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き上書き」

「うああああああああああああああああああああああああああああああ」


 ♦︎


 同時刻。フリードたちが育ったハマラ村では、村長夫妻が異変を感じ取っていた。


「あなた、これは!」


 村長の妻は、夫に向かって不安げな視線を向ける。


「ああ、リズのやつ。『力』を解放してる! フリードと接触したんだ」

「ああ、なんてこと……ということは、フリード君は童貞じゃなかったのね!」

「ああ、嫉妬に狂ったリズは、フリードをしばらく離さないだろうな……フリードが童貞じゃなかったばかりに……」


 村長は、眉をしかめてそう言った。


「フリード……腹上死は情けないぞ」


 村長は、ボソリとそう言ったのだった。


 ♦︎


 あれから……いったいどれだけの時間が経ったのだろう。とりあえず8時間くらいは経った気がする。何回かリンとかが様子を見にきてたけど、リズが追い払っていた。どうやら俺と行為中だということを伝えてるらしい。恥ずかしいんだが。

 もはや俺の身体からは何も出ない。


「リ、リズ……も、勘弁」

「あらフリード。もうへばったの? 私はまだまだ出来るけど」


 リズは、ニコリと笑って俺を見る。肌のツヤが増していた。化け物かよサキュバス。

 部屋の中はサキュバスの独特の匂いが混じって頭がクラクラする。


「も、無理……」

「そう、じゃあ『愛してる』って言ってくれたらいーよ」

「あ、愛してるよ」

「んー、もう一回。大きな声で」

「愛してる!」

「やーん、私もよ!」

「お、おい!」


 リズは再び俺を抱きしめると、俺に口づけをしてまた行為を始めた。困ったことに、いくら俺が元気が無くなっても、サキュバスの唾液を摂取すると復活してしまうのだ。

 その後また散々弄ばれた後、ようやくリズも満足したらしく、行為が終わった。

 辺りも暗くなり、部屋の明かりも消している中で、リズは布団の中で俺に囁いてくる。


「もう、その女とのこと、忘れた?」

「あ、ああ」

「本当?」

「本当だよ」


 実際、もはやアシッドさんとの触れ合いがあまり思い出せなくなっていた。リズがそれほどに強烈だったのだ。


「よかった……フリードは、誰にも渡さないわ……」

「そ、そうですか」

「これが、『幼馴染』の勝利ね……くく、くくく……はーはっはっは!」


 リズのその高笑いは、ツノや翼も相まって悪魔が笑っているかのようだった。


 俺の幼馴染たち……なんでまともなやついないの……?



というわけで二章はこれにて終了です。

途中凄い休んだりして申し訳ないです…

ここまででもし【面白かった】【続きが読みたい】【二章お疲れ】等々思って下さいましたら下にある評価ボタンを押していただけたら幸いです。では、また!

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最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
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