表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/90

【おてんば】


 俺はヴィーナスさんと向かい合わせに座った。


「いやーびっくりしちったよ。あんなとこでフリードちゃんと会うなんてねー、マジ笑ったわー」

「いやいや、笑い事じゃないですよ。下手したら俺も捕まってましたよ」

「つーか普通捕まるよねー。でも今回の試練に関しては元から言われてたんよー、どっかに情報が漏れてる可能性がある的なね」

「えっ、そうなんですか。俺なんて試練の事なんて1つも知らなかったですけど」


 リールラ姫に説明されて初めて知った情報だ。


「うん。ま、結局確証がなかったからいつもと変わんない警備体制だったけどね。今更言っても仕方ないかー」

「それってもしかして、内部にスパイがいる可能性があるって事ですか?」

「あくまでも可能性だけどね。あり得るっしょ。そのレイチェルってやつがどこから情報を手に入れたのかって話だよねー」

「確かに……」

「ま、辛気臭い話はこれくらいにして、フリードちゃん、また亜人の子増えたね。羊人ワーシープの」

「ああ、ノンの事ですか」


 そういえばヴィーナスさんと会った時はノンはまだいなかったのか。


「ノンちゃんっていうんだ。よく亜人の子ばっかり仲間に増やすねぇ。奴隷?」

「い、いや……奴隷ではないです」

「ああ、そうなんだ。まっ、いっか。てかフリードちゃんルクスの玉ってなんで重要だか知ってる?」

「話急に変わりましたね。秘宝ですか、さぁ? 伝統あるものなんじゃないですか?」

「いや、絶対それだけじゃないっしょ。ここまで焦って捜索するわけだし。実はあの秘宝については、騎士団の中では騎士団長しか知らないんだよねー」

「騎士団長?」


 そういえばヴィーナスさん以外の騎士団員を知らないけどどんな人がいるんだろう。


「うん。ロベルト団長って言うんだけど、たぶんあの人しか知らないはず。今、団長は東の国に行ってるからいないけどね」

「でもその人が情報を知ってるなら、さっきのスパイはその団長って可能性もあるんじゃ?」

「んー、それはあんま考えられないかなー。団長ってなんか熱血だし馬鹿っぽいし……そういう裏の計算とかできなさそうだし」


 凄い言われようだな団長。部下との距離感そんな感じでいいのか団長よ。


「ますます謎が深まりますねぇ……」


 俺がそう言うと、会議室の扉が突然開いた。


「フリードー、まだー? お腹すいたのだー!」

「テンネ。ご、ごめんごめん。じゃあヴィーナスさん、俺はこれで。また会いましょう」

「おっけー」


 お腹のすかした猫娘が出てきたので、ヴィーナスさんに別れを告げて俺たちは部屋から出た。

 その後、ご飯を食べて適当に時間を潰し昼を過ぎたので、再び俺たちは城に戻った。すると既に騎士団員達が城の門に馬車を連れて待っていた。


「来たか小僧」


 レバノンさんが俺を見てそう言った。


「はい、俺が最後っぽいですね」

「ああ、準備はできた。既に最初の組は出発しておる。次はお前たちが行けい」

「はい。そういえば……リールラ姫はいらっしゃらないんですね」

「リールラ様は、いたら「私もいく」などと駄々をこねそうなのでな、城内で待機していただいた」


 レバノンさんは、疲れた顔でそう言った。この人も相当苦労してそうだな。


「では、レバノン様。ブルマー隊、行って参ります」

「うむ、成功を祈る」


 ヴィーナスさんがそう言って、俺たちは馬車へ乗り込み、馬を運転する御者ぎょしゃが馬を走らせ始めた。この御者は俺たちをミセタ国付近まで連れて行ってくれた後は、あたりの街で待機しておくらしい。


「どれくらいで着くんですか?」

「まっ、だいたい2時間くらいっしょ。気楽にいこーよーフリードちゃん」

「にゃんかお前どっかで見たことあるようにゃ……」


 俺の質問に答えてくれたヴィーナスさんに対して、テンネが首を傾げていた。


「前に一度会ってんじゃん、ゴブリン討伐でさ。うちは覚えてんよ、テンネちゃん。それにリンちゃん」

「あぁ! 弓矢爆発させた人なのだ」

「あはは、何その覚え方、うける」


 テンネの謎の覚え方に、ヴィーナスさんは手を叩いて笑っていた。


「私はよく覚えてる。Bランクの冒険者。それと見かけによらず、周りを分析してる」

「リンちゃんそれうちのこと褒めてんの?」

「褒めてる」

「まじかー嬉しい」


 そんな他愛ない話をしながら馬車は進んで行き、2時間ほど経った後ミセタ国付近の草原に下ろしてくれた。御者の人は、近くの町で待機するために俺たちの荷物を下ろすと去っていった。


「ふー、さて……いよいよか」

「そだね。てかフリードちゃん、この荷物何? でかくね?」


 ヴィーナスさんが俺にそう言ったのは、縦横2メートルはありそうな大きな木の箱だった。


「いやそれ俺のじゃないですよ。ヴィーナスさんのじゃないんですか?」

「いやうちの大きい荷物はこれだよ」


 そう言ってヴィーナスさんは馬車につながれていた俺たちの荷物を入れていたものとは別の荷車を指差した。そこにはお酒や雑貨のようなものが入っている。今回の任務に使うらしい。


「え? じゃあ。テンネ達のでもないし……他の人のが紛れ込んだのかな」


 そう思っていると、木の箱がガタガタと揺れ始め、そして箱の蓋が勝手に開いた。突如勢いよく蓋が開き、驚いて思わず声を上げてしまった俺たちだが、中から出てきたものを見て更に驚愕する。


「いやー、やっと出れたわ! 窮屈なのよ、あそこは! ていうか長いわよ!」


 カールした長い金髪をはためかせ、そう言いながら出てきたのは、おてんば姫だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼▼▼【新連載始めました!】▼▼▼
最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
おつかい頼まれたので冒険してたら、いつのまにか無双ハーレムしてました〜最強民族の【はじめてのおつかい】〜 >
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ