【ロイヤーの失敗⑤】
ドミニク達が捕まってから3日が経った。
薄暗い部屋、鉄格子の檻。そんな部屋の中に、ひとりの男が上半身裸で鎖に繋がれている。その男はロイヤーだった。
「おらぁ! さっさと吐きやがれぇ!」
「ぐうっ!」
バシィンと鞭のようなもので、ロイヤーの胸が叩かれる。鞭で打たれた箇所は、赤く腫れ上がっていた。打たれた箇所は数カ所どころではなく、ロイヤーの体は全身が赤くなっている。
「だ、だから……僕はもう知らないって……」
「あぁ!? 聞こえねえよ!」
「ぐぁっ!」
再びロイヤーは鞭で叩かれる。鞭を打っているのは、太っていて中年の男だった。彼はこの拷問部屋を任された看守のであり、現在ロイヤー、ゾック、ドミニクの3人を拷問していた。
「お前みたいな怪しい奴はな、嘘ついてるに決まってんだ! なぁそうなんだろう!?」
「ち、違う……僕は知らない……」
「嘘言うんじゃねえよぉ!」
「があっ! ……あ」
「おっと、気絶しちまったか。いけねえいけねえ」
ロイヤーはあまりの痛みにその場で気絶した。しかし看守はやめるどころか、バケツに水を組み入れてくると、それをロイヤーの頭にぶっかけた。
するとロイヤーの意識は無理やり現実に戻される。
「おはよう」
「た、だすけて……誰か助けてくれ……」
「だったら早く言えってんだ! 秘宝を盗んだ奴らはどんな奴らなんだぁ!?」
「知らない、知らないんだ……金髪の人間の男で、ダンジョンで初めて会ったんだ!」
「それはもう聞いたよ!」
「がぁっ!」
ロイヤーの絶叫がこだまする。男は、そんな彼の表情を見て、満足気に笑みを浮かべた。
「これだから拷問はやめられねぇ……」
「お、俺よりっ……あのドミニクってやつの方が情報を知ってる筈だ! 聞くならそっちに……!」
ロイヤーが必死の形相でそう訴えかけると、看守はニコリと笑ってこう言った。
「んなこたぁ、知ってるよぉ。あの男にはもう散々聞いたさぁ。歯も爪もねえし、骨も折れてもう体は使いもんにならねぇ」
「ひっ、ひぃ……!」
「ロイヤー、お前は情報を持ってねえ。それは知ってんだ。なのに、なんで俺がお前にこんなに拷問するかわかるかぁ? おら、答えてみろ」
「わっ……わかりません!」
「ちょっとは考えろよぉ!」
「がぁっ! ご、ごめんなさい……!」
痛みで完全に調教されたロイヤーに、もはや抗う術は残っていなかった。
「へへ、俺はよ、お前みたいなガキが恐怖に怯えてる姿を見るのが大好きなんだ! なぁロイヤー、お前……もう痛いのは嫌か?」
「い、嫌ですっ! もう痛いのは嫌だ……!」
「じゃあよ……やることぁ、わかってんだろ? へへへ……」
男は、おもむろに腰のベルトに手をかけて、ズボンを脱ぎ始めた。
ロイヤーは、それを見て絶句したのだった。
♦︎
ロイヤー達が捕まってから5日が経った。
ロイヤーが凄惨な扱いを受ける一方で、ゾックも拷問を受けていた。しかし、彼は拷問を受けるうちに相手の好みを理解し、それを利用する事で看守の男の警戒心を少しづつ解いていった。
「よぉ、元気にしてるか。ゾック」
「あ、こんにちは! モーセさん」
ゾックは満面の笑みでそう言った。
ロイヤーを拷問していた太った男は、名をモーセと言い、ゾックは彼をそう呼んでいた。
「今日もいい挨拶だな」
「もちろん。モーセさんと話すのはとても楽しいですから!」
「へへ、そうか? ロイヤーの野郎ももう少しお前みたいに純情になりゃあな」
「今日も『ご奉仕』しますか?」
「ああ、今日はいい。もうロイヤーで楽しんできたからな」
「そうですか、残念です……」
ゾックは心底残念そうな顔をする。それを見て、モーセは嬉しそうに笑みを浮かべるのだった。
「そういうな。また今度可愛がってやるからよぉ」
「本当ですか? 約束ですよ!」
(ふざけやがって変態野郎が。いつか必ずぶち殺してやるからな)
ゾックは言葉に出しているのと裏腹に、心ではモーセに対して激しい憎悪を抱いていた。そしていつかくるであろうチャンスを伺っているのだった。




