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ガーディンの邸宅⑨
私はいつもの様に自分の部屋を掃除していました。
しっかりと清掃を行わないといけないのに、今日の朝に見た少女の表情を思い出して手が止まってしまいます。
(あの子...、本当に何かを盗みに入ったのかな? 本当に盗みに入ったのなら私の横で眠っている筈ないよね?)
盗賊にしては明らかにおかしい行動の数々に私は頭を抱えていました。
(それにあの涙...、あれはまるで何かを失った人の目だった...、失った? 盗みに入った人が失う物なんてないよね?)
考えれば考えるほど今日出会った少女の行動にはおかしな点が多く挙げられてしまう...。
それに...。
『姉ちゃんも早く!!』
というあの少女の言葉には何故かぐっときた。
初対面の少女が放つ言葉にしては明らかにおかしいし、私の心に深く突き刺さったのがより違和感を引き立てる。
(あの少女は一体誰だったんだろう...)
そればっかりを考えてしまいなかなか掃除が進まないのでした。




