黒い水②
「な...なんだったんだ今のは...、辺りは晴天だってぇのに...まるで俺たちの周りだけ巨大な嵐が発生しているみたいだった...」
そう呟く盗賊の1人の前に私は顔を出します。
「く...くるなっ!! 化け物!!」
酷く怯えた表情を晒しながらも、私に折れた剣を向けてくる彼の敬意を評しましょう。
『凄い凄い! 私の魔法を受けて生きてたんだねっ! だったらもう一回チャンスをあげる!』
私はそう言いながら彼に拍手を捧げ、回復魔法をかけてあげました。
『【回復魔法・水】』
私の蒼い水に包まれた彼の体は傷が完治していきます。
「な...なんで...」
驚く彼に私は微笑みながらこう答えました。
『じゃあゲームの説明をするね、私はここから動かないからあなたは全力で逃げて、無事に私から逃げ切れたら見逃してあげるから、ルールはわかったかな? じゃあ良くよ? ゲームスタート!!』
私の言葉の意味をようやく理解したのか彼は「うわあああああ!!!!」と情けない声を上げました。
それを愉悦の笑みで眺めながら、パチっと指を鳴らす私を見て勢いよく駆け出す彼でしたが...。
『う〜ん...、貴方はどうやって殺してあげようかな...、あっそうだ!!』
パチンと指を叩き二つの四角い【砂鉄水】を作り出しました。
『硬度を最高にして...、左右からドンっ!!』
ビチャ...。
「ぎゃぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっぁあっ!!!!!!」
耳をつんざくような高い絶叫と共に私の手の中に広がるのは生命の消える冷たさだった...。
『あっはっはっ!! ぺっちゃんこ!! せっかく生き抜くチャンスをあげたのに1発目から死んじゃったら意味ないよね!!』
ゲラゲラと笑う私はまだ生きている生命の灯火に瞳を向けました。
『まだ生きているのがいるね...』
死体の山の中からそいつの首根っこを掴み上げて回復させてあげます。
『さっきのゲームは見てたよね? じゃあゲームスタート!!』
「ひぃぃぃ!!!」
私は楽しくなってまた新しい遊び方を試そうとしていましたが...。
『んっ!? あれっ!?』
明らかに体の動きが鈍くなってきました。
『...ケロナ? 体の所有権をちょっぴりくれるって言ったのはキミだよね? 今お楽しみ中だから邪魔しないでくれないかな?』
そう呟く私でしたがどうやら時間のようです。
『チッ! でも知らないよ? ここであいつを逃した事で面倒な事になってもね...』
それだけ私が吐き終わると意識が彼女に切り替わるのでした。




