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盗賊

「お客さん!! しっかり捕まっていてください!!」


 馬車の引き手がそう叫んだのも束の間、矢の放たれる空気の音が外から聞こえてくるのでした。


「待て待て待てぇ〜い!! その中に貴族【ガーディン】が乗っている事は知っているんだ!!、そいつさえ渡せば他の乗組員の命までは取らんぞ!!」


 私たち以外には貴族のおっさんしか乗っていないのでこの人が盗賊の狙う【ガーディン】という人なのでしょう。


「ひぃぃぃ!! あいつらまだ根に持っているのか!?」


 何やら盗賊との因縁がありそうですが私には関係ありません。


「ねぇ、悪いけど馬車から降りてくれない? 貴方1人降りてくれればそれ以外の全員が助かるんだから」


「な...何を言うか!!」


 反論しようと私の方に視線を向けてきたので、迷わず冷たい視線を送ります。


「うっ...」


 私と顔を合わせただけで固まってしまっているので対した大人ではないのでしょう。


 私は呆れながらも彼に問いました。


「いくら出す?」


「はっ?」


「あの盗賊共を追い払って欲しいと言うのならいくら出すって聞いてるの!!」


 私は声を荒げながらも彼に救いの道を指し示しているのだ。


 なぜなら、ここで貴族に恩を売っておくと後で見返りがあるかもしれないと思ったからです。


 報酬が美味しいのであれば盗賊共を追い払ってあげても問題ないし、報酬を支払わないと言うのであれば、このまま彼のケツを蹴って盗賊に渡してしまってもいいのだ。


 私が1番気にしているのは、この流れ矢がサラに当たってしまうとその原因である目の前の男を私自身が殺してしまいかねない事である。


「私の気が変わらないうちの答えなさい、()()()()()()


 私の圧に気圧されたのかガーディンは跪いてこう答えた。


「10万ゴールドだそう!! それに我が邸宅で1ヶ月の間寄宿しても良いとメイドに伝えよう!!」


 報酬が10万ゴールド+1ヶ月ただ宿ならば割と悪くないだろう。


「...わかった」


 バタンと馬車の後ろ扉を開く私に貴族は驚く。


「おっ...おい、まさかあんた1人で戦うつもりか?」


「そうだけど...、何か問題ある?」


 私はそれだけ呟くと勢いよく馬車から飛び降りるのでした。

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