偽りの賞賛
「見事な腕前だ...、あのグレイブをああも簡単に打ち倒すとはな...」
王様は私の戦いぶりに賞賛を与えはしたのだが....。
「しかし、これで分かった、ケロナとか言ったな? 貴殿は今後この【城塞都市クレイトン】には近づかないで欲しい」
その言葉にグレイブが声を荒げた。
「ちょっと待てください!! ケロナの実力を見たでしょう!? こいつは間違いなく騎士団に入隊させるべき存在です!」
「たしかに...、グレイブの言う事にも一理ある...、しかし...」
口ごもる王様の言いたいことが私にはよく分かっていた。
『人間は自分と違いすぎる者を恐れるのだ』
以前にもこんな事があった気がする...。
いつだろうか?。
そうだ...、私がスラナ村に流れ着いて生活を始めた時だ。
あの時の私は村娘の魔力量がどのくらいなのか分からずに井戸の水を1日でいっぱいにした事があった。
そこは海から少し離れた場所にあったので海水は入らないのだが、その分管理がめんどくさい場所にあったのを今でも覚えている。
しかし、その水は村の皆の生活用水としてとても貴重である為、毎日汲みに行かなくてはならない。
だけど、ある日そんな大切な水が干上がってしまいそうだとトミーおじさんから聞いた私はおじさんの前で水魔法を使いあっという間に井戸の水を溢れさせた。
純度の高い水で不純物が殆ど入っていない様に相当驚いたおじさん。
でも、その時の一瞬だけトミーおじさんの目が今の騎士達と同じ鋭くもどこか不安に満ちた顔になっていたのだ。
それを思い出したからこそ、私は今こんな気持ちになっているのだろう...。
「災厄を打ち払った分の報酬はたっぷりと出そう...、だから金輪際我が国とそなたは一切の交友を断つと誓ってくれないか?」
私はその問いにこう答える。
「私に褒賞を出す金があるなら自分の町の復興に役立てて欲しい...、この町には短いけれど色んな思い出を作った場所でもあるから...」
私はそれだけ呟くと王に背を向けてサラにこう言った。
「サラ、行くよっ」
私の言葉を聞いて歩き出すサラ。
そんな私たちを呼び止めようとするグレイブの声がずっと聞こえてきたのですが、あの足では追いかけて来れないでしょう。
私達は身支度を済ませるためにもう一度だけギルドに寄り、最後に馬車の手配を行うのでした。




